独自の視点で本を選んで紹介しています。

aroha.asablo.jp/内をGoogle.comで検索します


「Amazon.co.jpアソシエイト」

○■アボリジナル―オーストラリアに生きた先住民族の知恵■2015年06月25日 10:18

伝統的な狩猟採集社会のあり様を伝える記録集


ジェフリー・ブレイニー (著), 越智 道雄 (翻訳), 高野 真知子 (翻訳)
単行本: 292ページ
出版社: サイマル出版会 (1984/12)

■商品の説明
名著『距離の暴虐』の著者が、大自然と共に生きたアボリジナル、今日の「原住民」の先祖たちの知恵と生活を感動的に描く!

ジェフリー・ブレイニー
オーストラリア辞典(大阪大学)

■目次
オーストラリア原住民の知恵―まえがき
1部―侵入者たち
1 湖上の火
・1 マンゴー湖畔の人びと 4
・2 氷河時代の世界地図 7
・3 火を噴く山々 11
2 発見者たち
・1 海を越える冒険 16
・2 なぜ海峡を渡るのか 23
・3 新天地の生活 27
・4 生活共同体 32
・5 移住の終焉 34
3 タスマニア人の謎
・1 三つの目隠し 38
・2 起源論争 41
・3 特異方向への進化 49
・4 偏見と盲信 53

2部―火と海
1 巨大獣の死
・1 絶滅の原因 59
・2 ディンゴ 66
・3 共犯者 72
2 燃える大陸
・1 たいまつを持ち歩く狩人 75
・2 火がつくった草原 86
・3 入れかわった"住人" 92
3 盛りあがる海
・1 水没した"橋" 96
・2 切断された文化 101
4 誕生と死
・1 飢餓 107
・2 堕胎と間引き 109
・3 戦争と殺戮 120
・4 人口増加の歯止め 128
・5 人口と食糧生産 131
・6 人口推移の真相 136

3部―狩猟民族の君臨する大陸
1 狩人たち
・1 狩人たちの道具と腕前 142
・2 狩人たちの知識と才能 147
・3 海の幸 150
・4 川魚をとる技術 157
・5 漁師たちの舟 160
・6 鳥を捕る生活 163
・7 鳥と昆虫 170
2 未墾の原野からの収穫
・1 野菜と果物 175
・2 乾燥地帯の植物 180
・3 女の仕事と労働時間 181
・4 食生活への誤解 187
3 医術、薬品、飲み物、化粧品
・1 薬用食物と外科手術 191
・2 酒、タバコ、麻薬、毒薬 194
・3 砂漠で水を得る術 199
・4 絵の具と化粧品 203
4 果てしない旅の論理
・1 アボリジナルの季節感覚 207
・2 飢えと寒さの苦しみ 211
・3 保存と貯蔵の知恵 216
・4 食物のタブー 220
・5 巡礼の旅 225
5 交易ルートと儀式
・1 余剰産物と物々交換 230
・2 贈与と返礼 234
・3 交易とアボリジナルの生活 240
6 アボリジナルの豊かさ
・1 白人探検家の飢餓体験 244
・2 豊かな大地の恵み 249
・3 ヨーロッパ人の幻想と思い込み 252
7 破滅への道
・1 狩猟採集民族の試練 258
・2 前進をやめた農耕・牧畜経済 263
・3 外界の震動 270
・4 開始された侵略 276
・5 植民地化への荒波 281

ブレイニーさんのこと―訳者あとがき 285

■「オーストラリア原住民の知恵―まえがき」の冒頭部分
  バビロンやアテネが繁栄を誇った時代よりもはるか昔、オーストラリア原住民アボリジナルたちは、じつにたいしたことをなしとげていた。
  彼らは海を渡って人の住める大陸(、、、、、、、)を発見するという、世界史上なんびともやっていないことをやりとげたのだ。
海岸に沿って大陸を進み、また内陸に踏み込んでいく勇敢な探検者が彼らのなかから続々と出現してきた。 彼らはさしずめ褐色の肌をしたコロンブスたち、ミッチェル少佐[一七九二~一八五五。オーストラリアの探検家。サー・トーマス・リヴィングストン・ミッチェル]たち、いやリヴィングストン博士たちだったといえばよかろうか。
  オーストラリアを自分たちの土地としたアボリジナルたちはさらに、長い年月をかけてさまざまの食用植物を見出し、貴重な鉱山を見つけて採掘し、新しい医術や薬、道具を作る技術、そしてピンは化粧用の泥絵の具、キリは砂漠地帯の隠れたたまり水にいたる、 じつにさまざまな資源を発見したのだ。 彼らは、厳しい、だが同時に慈愛に満ちたこの地の環境にあわせて生きることに成功した。 そしてこの時期、オーストラリアのあちこちの広大な地域では、一七八八年の白人入植以来よりずっと多くの人びとが暮らしていけたのだった。
  ある意味では当時のアボリジナルの生活水準は、アジア人のそれより今日のヨーロッパ人の水準にむしろ近かったといえる。 人口の増加は緩慢だったし、物質的な面の生活水準が比較的高かったからだ。
  十七世紀に、もしひとりのアボリジナルが珍しい生きものとして生け捕りにされ、オランダ船かなにかでヨーロッパに連れ去られたとする。 スコットランドからコーカサス地方までずっとさらしものにされながら引きまわされているあいだに、いかにヨーロッパの庶民が苦しい生活をしているかを目のあたりにして、 彼はなるほどこれが第三世界というものか、なんと貧しく苦しい生活かとひとりつぶやいたかもしれない。

■一言
ヨーロッパ発の産業社会が崩壊させた「豊かな社会」という要素は『逝きし世の面影』と共通

■書評
るびりん書林 別館