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◎■西洋紀聞 (教育社新書─原本現代訳〈61〉)■2015年09月20日 08:21

1708年、イエズス会士シドッチを尋問し、将軍閲覧用に著された『采覧異言』とともに著された書。列強による侵略の様相を現実的に感じる世界情勢の記録と、東洋の知性によるキリスト教批判がすばらしい。


新井 白石 (著)
大岡 勝義, 飯盛 宏 (翻訳)
発行所: 教育社
1980年10月25日発行
271ページ

■商品の説明
内容
本書は、西洋紀聞の翻訳に加えて、新井白石、西洋紀聞、および当 時の国際情勢についての解説が付されており、『西洋紀聞』は将軍 に献上されて閲覧を受けることを意識して書かれた『采覧異言』と は異なり、一般の目に触れたのはやっと明治十五年であったことな どがわかります。

著者について
新井 白石(あらい はくせき)
江戸時代中期の旗本・政治家・学者。一介の無役の旗本でありながら六代将軍・徳川家宣の侍講として御側御用人・間部詮房とともに幕政を実質的に主導し、正徳の治と呼ばれる一時代をもたらす一翼を担った。家宣の死後も幼君の七代将軍・徳川家継を間部とともに守り立てたが、政権の蚊帳の外におかれた譜代大名と次第に軋轢を生じ、家継が夭折して八代将軍に徳川吉宗が就くと失脚、晩年は著述活動に勤しんだ。
学問は朱子学、歴史学、地理学、言語学、文学と多岐に亘る。また詩人で多くの漢詩が伝わる。白石は号で、諱は君美(きみよし、有職読みで きんみ)(WikiPediaより)

大岡 勝義(おおおかかつよし)
1916年、東京都生まれ。
1942年、早稲田大学文学部中退。
現在、森村学園中等部教授。 (本書のカバーそでより)

飯盛 宏(いさがいひろし)
1926年、東京都生まれ。
1952年、東北大学文学部史学科卒業。
現在、森村学園高等部教諭。
神奈川県衛生短期大学講師。
(本書のカバーそでより)

■「はじめに」
  『西洋紀聞』は、宝永五年(一七〇八)十一月の切支丹禁令をあえて冒して日本に潜入し、布教を企てた宣教師ヨハン=シドッチを、時の最高権威者新井白石がみずからすすんで尋問し、その結果成立した世界事情紹介とキリスト教批判の書物である。
  本文わずか百ページにも満たない小冊ながら、死を覚悟して布教を志した熱血のシドッチと、鎖国下の閉ざされた日本にあってなお、広い視野と公正な立場で物事を判断しえた理性の人白石の、こん身の力をふりしぼった質疑応答は、おのおのの立場から真実を貫こうとする両者の対決の結果にほかならぬ。 しかも二人の対面はわずか四度にすぎなかった。 白石は記している、シドッチはまこと「博聞強記、彼方多学の人と聞こえて……」と。 しかしわれわれは言う、白石もまた博聞強記多学の人に外ならないと。 『西洋紀聞』を江戸時代、否全時代を通じ最高最大の書物の一つとするゆえんである。
  この巨峰にいどむのにわれわれの力はあまりに小さい。 知る限り現代語全訳はまだ無いようである。 なるべく原文に忠実に、その文の高い格調をできるだけ損わないよう努めたつもりであるが、白石の文章は含蓄深く、古典よりの引用や簡潔な省略も多いため、文脈をたどるのにしばしば困難を感じたことであった。
  したがって先輩諸氏の御業績を多く参照させていただいた。 ことに白石学の泰斗であられる松村明・宮崎道生両先生の御著書に負うところ絶大である。 あつく学恩を謝するものである。 また増渕勝一・小林高四郎両先生からはたえずご激励をいただき、またご教示いただいたことも少なくなかった。 教育者出版部の小飼一彦氏にもたいへんお世話になった。 あわせて謝意を表したい。 このようなささやかな作品でも多くの方のご恩を受けて、はじめて誕生しえたことを思い感謝の念でいっぱいである。
  なお、本文上・中巻とその注、参考資料として収めた"「長崎注進羅馬人事」宝永五年下巻"の訳文は大岡が、解説と下巻の訳文・注は飯盛が分担した。
      大岡 勝義
      飯盛 宏

■目次(本文から拾って小項目を追加しました)
はじめに 3
『西洋紀聞』の世界 7
  一 新井白石の生涯 9
  二 新井白石の人物像 24
  三 『西洋紀聞』について 29
  四 宗教改革と絶対主義国家の征服 40
    凡例 49
上巻 51
  シドッチの来航/白石に尋問の命下る/通訳との打ち合わせ/   白州のシドッチ/尋問の開始/シドッチの真情/白石の説得/   尋問の再開/ヨーロッパ諸事情の聞き取り/教義の尋問/   シドッチの学識/シドッチの人柄/拘禁の処置/シドッチ洗礼を行う/   シドッチ入牢/来航の真意/シドッチの牢死/『西洋紀聞』成る/   付録〔シドッチの来日したときの有様が記されている〕 82     異人船の出没/異風人の上陸/異人、長崎につく/     長崎奉行所での調べ/シドッチ江戸に着く/シドッチの食事と所持品
中巻 91
  五大州とは/世界地図について   ヨーロッパ諸国     教皇の都イタリア・ローマ/シチリアは噴煙の島/     ポルトガルのアジア進出/ゴア・マカオとの交渉/ポルトガルの王位復権/     キリスト教の渡来について/強大国スペイン/カステイリヤ/     フランス/大国ドイツ/その他の諸国/海戦に巧みなオランダ/     悪名高いイギリス/その他の北欧諸国/ヨーロッパにおける為政者の選び方/     君長の位号/ヨーロッパの民俗/ヨーロッパの言語   アフリカ諸国     軍事力強大なトルコ/その他アフリカ各地   アジア諸国     良馬の国ペルシア/アジアの大国モンゴル/織物の地ベンガラ/     色織柄のインデヤ・ゴア・マカオ/シャカ入滅の地セイロン/     金札の礼シャム/オランダの進出マラッカ/赤道直下のスマトラ/     温暖なジャワ/香料と黄金の島々ボルナオ・マカッサル/     銀山と日本人の町ルソン島/新大陸オーストラリア/日本への路/     新イスパニア(メキシコ)/新フランス(カナダ)   ソイデ=アメリカ諸国(南アメリカ)     未開の地ブラジルとサン=ヴィンセント島/     付 長人国パタゴニア/付 スペイン王位継承戦争起こる/     イスパニヤ継承戦争終わる
下巻 151   ヨハン=シドッチの来航理由/ヒイタサントールムとデキショナアリヨム/   携行品・衣服など/シナ・シャムの事情/フランシスコ=ザビエルとキリシタン大名/   ザビエルの遺体など/利瑪竇のこと/ヨーロッパの軍事事情/火器の始め/   イスパニアの領土形成/シドッチが日本布教を志した理由/日本人と中国人の性格の相違/   シドッチが選ばれた理由/直接江戸に来ることを望んだ理由/キリスト教の概要/   キリスト教の公認/キリスト教僧職の段階/世界の宗教/白石のキリスト教批判 注 211 「長崎注進羅馬人事」宝永五年下巻 247 参考文献 269
■書評
るびりん書林 別館