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○■森田療法(講談社現代新書)■2016年04月30日 13:56

不安や葛藤を「あるがまま」に受け入れ、すこやかな自己実現を目指す



岩井 寛 (著)
新書: 204ページ
出版社: 講談社 (1986/8/19)


■商品の説明
内容紹介

「あるがまま」を受け入れる――。
がんに冒された筆者が死の直前まで語り綴ることで生まれた 不朽のロングセラー。

90年前に日本で創始された心理療法の論理と実践法を
わかりやすく解説。

たとえば、苦手な上司と面接しなければならないとき、
自分の構想をよりよく披瀝しようと考える一方で、
あの上司は苦手だからなんとかその場を繕って
逃げていしまいたいという考えも浮かぶ。

誰にでもある「逃避欲求」を「あるがまま」にして、
「自己実現欲求」を止揚していこうとするところに、
西欧の精神療法とは異なった森田療法の特殊性がある。
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学校での人間関係、会社での問題の対処の仕方、
家族・社会とのかかわり、不安と劣等感、ノイローゼ、対人恐
怖……。
本書は、現実的な生活のなかで起こってくる
さまざまな心理的事象に対処するために
、 森田正馬が編みだした独自の理論と実践例をわかりやすく紹介し、
心の健康を保つためのヒントを提供、非常に役立つ内容となっている。
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【おもな内容】
はじめに――「森田療法」とは何か
1 森田療法の基礎理論
2 神経質(症)のメカニズム
3 神経質(症)の諸症状
4 神経質(症)の治し方
5 日常に生かす森田療法
おわりに――生と死を見つめて

内容(「BOOK」データベースより)
他人の視線に怯える対人恐怖症。強迫観念や不安発作、不眠など、心身の不快や適応困難に悩む人は多い。こころに潜む不安や葛藤を“異物”として排除するのではなく、「あるがまま」に受け入れ、「目的本位」の行動をとることによって、すこやかな自己実現をめざす森田療法は、神経症からの解放のみならず、日常人のメンタル・ヘルスの実践法として、有益なヒントを提供する。

著者について
岩井 寛(いわい ひろし)
一九三一年、東京生まれ。上智大学卒業後、早稲田大学文学部大学院で美学を学び、さらに東京慈恵会医科大学を卒業。専攻は、精神病理学。医学博士。一九八六年五月、ガンのため逝去。『立場の狂いと世代の病』(春秋社)など著書多数。


■目次
「最後の自由」――追悼・岩井寛先生――松岡正剛 3

はじめに――「森田療法」とは何か 9

1 森田療法の基礎理論 17
・1―「生の欲望」と人間 18
・2―人間心理の発達過程 22
・3―「生の欲望」の二面性 37

2 神経質(症)のメカニズム 51
・1―神経質(症)者の性格 52
・2―「ヒポコンドリー性基調」とは何か 64
・3―「精神交互作用」について 72
・4―「とらわれ」の心理 77
・5―「はからい」の心理 85

3 神経質(症)の諸症状 91
・1―神経質(症)とは何か 92
・2―神経質(症)の類型 96
・(1)強迫観念(強迫神経症) 97
・(2)不安神経症(発作性神経症) 105
・(3)普通神経症 114

4 神経質(症)の治し方 121
・1―入院療法と外来療法 122
・2―「精神交互作用」を打破する 130
・3―「とらわれ」と「はからい」からの脱却 138
・4―「あるがまま」と「目的本位」 145
・5―自己実現と自己陶冶 163

5 日常に生かす森田療法 169
・1―成就した「あうがまま」体験 170
・2―私にとっての森田療法 179
・3―「あるがまま」の本質 185

おわりに――生と死を見つめて 191


■松岡正剛氏による「「最後の自由」―追悼・岩井寛先生」より冒頭部分

まず、最終章「おわりに」から読まれたい。本書の特殊な成立の事情が述べられている。これは全身をガンに冒されて逝った岩井寛先生の最後の著書、生の最後の報告書なのだ。著書とはいっても、目が見えず、最後は手もほとんど動かなかったから、口で書いた著書、いや文字どおりの一語一語の吐露である。そして本書のゲラ(校正刷り)が出る前に、一九八六年五月二十二日の午前三時八分、先生はかつてヒマラヤで見た憧憬の蒼天(そうてん)に帰っていった。

本書の特色は森田療法の今日的意義を縦横に論じているところにある。読んでいただければわかるように、ここには「あるがまま」とは何か、という問いが随所にちりばめられている。自己の不安と実現欲求をみつめることが、多くの神経症からの解放をもたらすであろうという示唆の書になっている。先生は本書の内容を前提にして、さらに広範なホリスティック・セラピー・システムの構想をまとめつつあった。

もともと森田療法は、心の不安を内なる異物として除去しようとせずに、そこに日常とのおおらかな連続性を容認するところにはじまっている。よく知られるフロイディズムとは、そのよって立つところがかなり異なっている。先生の考え方は、森田療法のすべてに一致を見ているわけではないが、「あるがまま」の気持ちこそが不安の異常な増幅を解消しうるという主張こそは積極的にとりいれている。そこに本書が、病める現代人にたいするラディカルな提案になっているゆえんもあろう。そしてこの提案こそ、実に岩井先生がその生涯に課してきた自分自身への療法であるかもしれなかった。私はそのことを、死の前の数ヵ月間の貴重な伴走体験から知らされた。


■書評
別館