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○■顔の本―顔はさまざまなことを語ろうとしている■2016年09月30日 19:14

間取りの工夫が顔を作る


香原 志勢 (著)
単行本: 221ページ
出版社: 講談社 (1985/03)

■内容(「BOOK」データベースより)
動物の顔をひきつぐものとしての人間の顔、その機能と表情のもつ意味、人種間の相違、そしていい顔であることの条件などをわかりやすく解く。人類学の碩学による類書のない格好の読物。

著者について
香原志勢(こうはら・ゆきなり)
一九二八年、東京に生まれる。一九五一年、東京大学理学部卒業。信州大学助教授を経て現在、立教大学教授。専門は人類学で多岐にわたっており、表情、海女、混血児など人類の適応の問題を扱う一方、人体と文化の関係について研究を進めている。著書に『人類生物学入門』『人間という名の動物』『人体に秘められた動物』『手のうごきと脳のはたらき』『老いを考える』他多数。

■目次
一 なぜ顔が気になるのか 8
王様とお面/寓話にみる顔の問題点/顔か心か、心か顔か/美男美女はむしろ不幸

二 顔のたどった道 21
ミノムシの顔/顔とはなにか/脊椎動物ことはじめ/水から陸へ/両生類と爬虫類/鳥類―人間のあこがれ/哺乳類―人間と心の通うもの/霊長類―人間に似すぎたもの/動物ばなれした顔

三 顔の部品―目・鼻・口など 50
顔と頭のちがい/目―見る器官/黒目と白目/まつ毛と涙/さまざまな鼻/人間の鼻はなぜ高い/鼻にまつわるもの/下あご/赤い唇・ひげのある唇/刃物としての歯/咬合と歯ならび/耳/額/顔毛と頭髪と皮膚

四 表情のしくみを探る 95
仏像と心と姿/口を開ける筋肉・閉じる筋肉/動物の表情筋/目と口のまわりの表情筋/表情筋と心の動き/顔面神経と三叉神経/左右非対称な表情/表情と顔のしわ/顔の表情と全身の身ぶり/外向性、内向性/かわらざるものとしての表情

五 見られるものとしての顔 123
コンフィギュレーションとしての顔/福笑い/頭骨における間どりの問題/顔の中の主役/もう一人の主役/顔舞台にあらわれるその他の役者たち/顔における性差と年齢差/顔を生かすくびの動き/見られる顔への反省

六 顔と心 150
顔に投射される心の動き/心の動きと顔の筋肉と自律神経/顔かたちと心/テレビによる顔の観察/人相学批判と性格学/表情と人間の行動

七 日本人の顔と表情 167
仏像の顔/体表―肌・目・髪の毛/モンゴロイドの寒冷適応/歯槽性突顎/そのほかの顔のかたち/表情の人種差/日本人と周辺の人びとの顔の特徴

八 顔を装う 189
眼鏡・義歯などの実用品/いれずみ・文身瘢痕などの奇習/歯の美容/頭髪・ひげの美容/化粧/仮面―他者の顔へ変わること/形成外科と顔/顔の否定と展開

九 顔に託すもの―美・人柄 208
いい顔をした人/顔の美醜/人柄をあらわす顔/人間の顔のアイデンティティ

あとがき 221

■「あとがき」の中間部分から
  顔を考えるにあたって、人びとは対照的に内なるものを考える。それは、ふつう心を意味する。本書では、人間の顔は動物の顔をひきつぐものとして、まずは目・鼻・口などの外面的な臓器や骨・筋肉・皮膚などに目をむけ、よい顔である条件として、これらのものの堅実なあり方に力点をおき、その後に、ようやく顔のあらわす心に触れることにした。それだけに、いくらいい顔をつくろうとして笑顔をつくろっても、また、化粧に専念しても、それは半ば空しい努力にすぎない。顔面内蔵やその他身体諸器官の調和のとれた発達が加わらなくてはならない。(221ページ)

■書評
間取りの工夫が顔を作る