独自の視点で本を選んで紹介しています。

aroha.asablo.jp/内をGoogle.comで検索します


「Amazon.co.jpアソシエイト」

○■赤紙と徴兵――105歳 最後の兵事係の証言から■2017年03月02日 20:45

村役場で兵事係を務め、敗戦後命令に背いて資料を保管していた105歳老人の体験を中心に、国が戦争を行うとは国民にとってどのような体験なのかを伝える



吉田 敏浩 (著)
単行本: 318ページ
出版社: 彩流社 (2011/8/1)

■商品の説明
内容紹介
兵事書類について沈黙を通しながら、独り戦没者名簿を綴った元兵事係、西邑仁平さんの戦後は、死者たちとともにあった―全国でも大変めずらしい貴重な資料を読み解き、現在への教訓を大宅賞作家が伝える。渾身の力作。

村人に毎日のように赤紙(召集令状)を届けつづけた兵事係、西邑仁平さん(105歳で亡くなった、滋賀県大郷村〈現・長浜市〉)は、敗戦時、軍から24時間以内の焼却命令が出ていたのに背き、命がけで大量の兵事書類を残した。「 焼却命令には合点がいきませんでした。村からは多くの戦没者が出ています。これを処分してしまったら、戦争に征かれた人の労苦や功績が無になってしまう、遺族の方にも申し訳ない、と思ったんです」 警察や進駐軍による家宅捜索への不安の毎日。妻にさえ打ち明けることができなかった。100歳を超え、ようやく公開に踏み切った。赤紙は軍が綿密な計画のもとで発行し、人々を戦地に赴かせていた。兵事係は、その赤紙を配るだけでなく、戦死公報の伝達や戦死者の葬儀なども担っていた。

内容(「BOOK」データベースより)
命がけで残した兵事書類について沈黙を通し、独り戦没者名簿を綴った元兵事係の戦後は、死者たちとともにあった―。なぜ、国家は戦争ができたのか、なぜ、かくも精密な徴兵制度が稼働したのか、戦争遂行は上からの力だけではなかった。村の日常から戦場への道のりを追った力作。

著者について
1957年生まれ。1985~88年にビルマ(ミャンマー)北部のカチン人など諸民族の村々を訪ね、少数民族の自治権を求める戦い、山の森と共に生きる人々の生活・文化などを取材した。その記録『森の回廊』(NHK出版)で、第27回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。近年は現代日本社会における生と死の有り様、戦争のできる国に変わるおそれのある日本の現状を取材している。著書に『宇宙樹の森』、『北ビルマ、いのちの根をたずねて』、『生と死をめぐる旅へ』、『ルポ 戦争協力拒否』、『反空爆の思想』、『密約』など。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
吉田/敏浩
1957年、大分県臼杵市生まれ。ジャーナリスト。アジアプレス所属。ビルマ北部のカチン人など少数民族の自治権を求める戦いと生活と文化を長期取材した記録、『森の回廊』(NHK出版)で’96年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
第一章 密かに残した兵事書類 3
焼却命令に背いて/徴兵適齢期とは/戦争を知るための証として/徴兵検査への道/「皇国民タルノ自覚」/徹底した選別/所在不明者を捜せ/徴兵忌避と失踪/巨大な鉄の箍(たが)/現役兵、入営す

第二章 ある現役兵の戦場体験 33
昭和十七年の現役兵に告ぐ/出征の日/中国大陸の戦地で/現地で食糧を奪いながら/住民を捕まえて「苦力」に/命だけあったらいいと

第三章 赤紙を配る、赤紙が来る 49
兵隊に取られる/召集と動員/召集の仕組み/真夜中に来る赤紙/動員の克明な記録/赤紙を配る使者/上海事変での召集/「召集令状受領証」に残された文字/ある少尉の自刃/捕虜になった身を自ら責めて/美化された軍人の自決/一枚の赤紙が運命を左右した

第四章 出征した兄弟たちの戦記 87
来るべきものが来た/「事変備忘録」の言葉/大曠野の行軍/「南京大虐殺はありました」/戦争そして帰還/弟たちの出征/フィリピン戦線へ/上陸作戦中に戦死す/生と死の狭間/バタアン半島の死闘/マラリアに倒れて

第五章 誰をどのように召集したのか 121
「赤紙が来たんかねー」/出征する兄を見送って/兄が戦地から帰って来た日/「村内巡視心得書」/赤紙が届いた家に目を光らせる/秘密だった召集の仕組み/在郷軍人の個人情報を収集/「在郷軍人所在不明者」の捜索/「在郷軍人身上申告票」/在郷軍人の職業・特有技能を把握/兵士の「身材」/各兵種に必要な特有技能/動員のための膨大な準備/戦時召集猶予者/国家総動員体制

第六章 兵事係と銃後 171
国防献金/銃後の護り/非常時の協力一致/出動部隊の歓送/地域ぐるみの行事/武運長久祈願祭/「満蒙ハ我ガ国防ノ生命線」/国民の戦争支持の熱意/戦地と銃後を結ぶ慰問袋/軍事援護事業/銃後奉公会と挙国一致/派遣軍人の家庭状況調査/傍聴というスパイ対策/「スパイは汽車に井戸端に」/戦没者の村葬と戦死の現実/慰霊祭と靖国神社合祀/草の根の戦争支持

第七章 海軍志願兵 223
「海軍は君等を待っている」/志願兵募集に力を注ぐ/志願者数の割当/いかに志願兵を増やすか/割当員数を確保せよ/つくられた海軍志願兵/海軍と志願兵への憧れ/志願兵合格の日/時世の歌を書いて/軍艦「長良」乗組員に/太平洋上の戦闘/「お母さーん、お母さーん」という声が/「巡洋艦長良交戦記録」/偽りの「大本営発表」/生き延びたことへの引け目/戦死した同級生たち

第八章 死者たちとともに 265
戦死の告知/「また仁平さんが来はった!」/兄弟それぞれの道/次々と赤紙が/「国民兵役編入者職業健康程度調査」/兵力の膨張/戦死の知らせ/赤紙配達の青年も戦場へ/戦地からの手紙/故郷と家族への思い/兄の戦死を信じられない/村の戦没者名簿

あとがきに代えて―白骨街道と赤紙 303
主要参考資料 314

■「あとがきに代えて」の途中の部分から
  なぜ、かくも多くの日本の男たちが、家族と共にいる生活の場から引き離されて、広大なアジア・太平洋の異国の戦場にまで赴かねばならなかったのだろうか。
  元々、個人的には何の対立関係もなかったはずの他国の男たちと、なぜ敵同士になって殺し合わなければならなかったのだろう。
  なぜ、戦闘や飢えや病で命を落とさなければならなかったのか。どうして、「白骨街道」のような惨状になてしまったのか。
  私はビルマで、何度も考えされられた。

■書評
村役場で兵事係を務め、敗戦後命令に背いて資料を保管していた105歳老人の体験を中心に、国が戦争を行うとは国民にとってどのような体験なのかを伝える