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○■世界システム論講義―ヨーロッパと近代世界■2017年03月19日 14:21

世界を有機体的なシステムととらえ、国や大陸の枠組みを超えた理解を可能とする点で必読書とも言える本だが、金融の圧倒的な影響力や、世界システムを支える制度の構築に触れない点に不満



川北 稔 (著)
文庫: 262ページ
出版社: 筑摩書房 (2016/1/7)

■商品の説明
内容紹介
近代の世界史を有機的な展開過程として捉える見方、それが〈世界システム論〉に他ならない。第一人者が豊富なトピックと共にこの理論を解説する。

内容(「BOOK」データベースより)
“近代世界を一つの巨大な生き物のように考え、近代の世界史をそうした有機体の展開過程としてとらえる見方”、それが「世界システム論」にほかならない。この見方によって、現代世界がどのような構造をもって成立したかが浮き彫りとなる。すなわち、大航海時代から始まるヨーロッパの中核性、南北問題、ヘゲモニー国家の変遷など、近代のさまざまな特徴は、世界システム内の相互影響を分析することで、はじめてその実相を露わにするのだ。同時にそれは、歴史を「国」単位で見ることからわれわれを解放する。第一人者が豊富なトピックとともに説く、知的興趣あふれる講義。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
川北/稔
1940年大阪市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退。文学博士。大阪大学名誉教授。専門は、イギリス近世・近代史、世界システム論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
まえがき 003

第1章 世界システムという考え方 019
はじめに 020
1 「先進国」と「後進国」という表現は何を意味するか 021
2 世界システム論の立場 025
3 「近代世界システム」の展開 028

第2章 アジアにあこがれたヨーロッパ人
―大航海時代へ 031
1 近代以前の世界 032
2 封建制度のもとでの発展 033
3 危機の到来 035
4 国家機構とインターステイト・システム 037
5 なぜ「ヨーロッパ」世界システムになったのか 040

第3章 キリスト教徒と香料を求めて 045
1 「キリスト教徒と香料」――ポルトガルの目的 046
2 香料諸島をめざして 049
3 アジア内広域貿易圏への「寄生」 050
4 東アジアのポルトガル人 056
5 世界システムのなかのポルトガル 057

第4章 スペイン帝国の成立と世界システムの確立 061
1 スペイン帝国の形成 062
2 エンコミエンダと先住民 063
3 メキシコとペルーの征服と「開発」 066
4 ブラジルの砂糖 068
5 世界帝国への野望と挫折 069
6 世界システムのなかのスペイン 072

第5章 「十七世紀の危機」 073
1 「危機」は存在したか 074
2 世界システムの「ヘゲモニー国家」 079
3 「ヘゲモニー国家」オランダ 080
4 「螺旋形の成長」――造船とバルト海貿易 082
5 「ヘゲモニー国家」のイデオロギー、リベラリズム 085

第6章 環大西洋経済圏の成立 087
1 イギリスにおける「危機」 088
2 三つの「危機」脱出法 092
3 「イギリス商業革命」 093
4 商人文化の成立 097
5 「イギリス商業革命」の意味 098

第7章 ヨーロッパの生活革命 101
1 イギリス風ライフスタイルの成立 102
2 コーヒー・ハウスと近代文化 107
3 情報センターとしてのコーヒー・ハウス 108
4 文学・政治とコーヒー・ハウス 111
5 輸入代替としての産業革命 112

第8章 砂糖王とタバコ貴族 115
1 アメリカ東海岸の過去と現在 116
2 「無用な」植民地 118
3 「砂糖王」と「タバコ貴族」 121
4 再輸出の可能性 125
5 脱イギリス化と独立運動 127
6 三つの地域 129

第9章 奴隷貿易の展開 131
1 ウィリアムズ・テーゼ 132
2 大西洋奴隷貿易 134
3 ヨーロッパの工業化と奴隷貿易 136
4 アフリカ・カリブ海にとっての奴隷貿易の意味
――低開発化への道 141

第10章 だれがアメリカをつくったのか 145
1 社会問題の処理場としての植民地 146
2 自由移民と年季奉公人 147
3 貧民説から中流説へ 148
4 貧民社会の縮図 150
5 近世イギリス社会における「サーヴァント」 154
6 天然の刑務所 156
7 孤児も植民地へ 158

第11章 「二重革命」の時代 161
1 なぜイギリスは最初の工業国家となったのか? 162
2 フランス革命の意味 168
3 なぜフランス革命なのか 170
4 大西洋革命論 172

第12章 奴隷解放と産業革命 175
1 産業革命期の「食革命」 176
2 「イギリス風朝食」の成立 178
3 「朝食を無税に」――過保護のイギリス産砂糖と穀物 183
4 奴隷解放以後 186

第13章 ポテト飢饉と「移民の世紀」 189
1 ポテトとポテト飢饉 190
2 「移民の世紀」 196
3 周辺労働力の再編成 198
4 「世界の吹き溜まり」の成立 201

第14章 パクス・ブリタニカの表裏
――帝国の誇示と儀礼 203
1 「パクス・ブリタニカ」の象徴としての水晶宮 204
2 科学技術の祭典としてのロンドン万国博 208
3 インド帝国式典(一八七七年) 213

第15章 ヘゲモニー国家の変遷
――世界大戦への道 221
1 「世界の工場」から「世界の銀行」へ
――イギリスのヘゲモニーの衰退 223
2 新しいヘゲモニー国家を目指して――ドイツ・アメリカ 228
3 帝国主義と反システム運動 230

結びにかけて――近代世界システムとは何であったのか 235
1 アメリカのヘゲモニーの盛衰 235
2 世界システムの変質 238

ちくま学芸文庫版へのあとがき 243
参考文献 247
索引 262

■「まえがき」の終りの部分より
(ヨーロッパ中心史観も、古代アジアの諸帝国の価値観を復活しているかのように言われるアジア主義も否定しながら)
  したがって、われわれのとるべき道は一つしかない。少なくとも十六世紀以降の世界は、ヨーロッパと非ヨーロッパ世界が一体となって、相互に複雑に影響し合いながら展開してきた、とみることがそれである。それこそ、ここでいう、「(近代)世界システム」論の立場なのである。(2000年10月1日)

■書評
世界を有機体的なシステムととらえ、国や大陸の枠組みを超えた理解を可能とする点で必読書とも言える本だが、金融の圧倒的な影響力や、世界システムを支える制度の構築に触れない点に不満