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■その手を見せて■2018年09月01日 20:11

職人、職人の妻、農家の嫁、薬売り、工場経営者の妻、漁村の女…として、働く北陸の女たち



井上雪 (著)
単行本: 238ページ
出版社: 冬樹社 (1985/10)

商品の説明


内容(「はじめに」より)


 おんなの手は、ほっそりと、やさしい。しなやかで、白い。でも、私がこれから訪ねる人たちの手は、そうした通念にはほど遠い、たくましさに満ちた手である。
 ここに登場するおんなたちは、みな、北国に暮らす。炉をかこみ、仕事場に座りこみ、土間に立ちつくす。里に、山に、町に、海に、北国の風土と一体になって、黙々と休むことなく手を動かしつづけ、何かを生み出してきた人たちである。
 ふかく皺が刻まれた手、節くれだった指の手、タコのできた手、大きく分厚い手、強い手、ちみつな手、赤らんだ手……。大切に、しかし酷使して歳月を重ねてきたその手には、指輪もマニュキアも縁がない。それは、確かな暮らしを語る手である。
 縫い、振り、漉き、織る、その手を見せて、と願った私に、おんなたちのさまざまな手は、何を物語ってくれるだろうか。

著者略歴

井上雪(いのうえ・ゆき)
一九三一年金沢に生まれる。金沢女専(現・金沢女子短期大学)文科に学び、北陸に暮らす女性の立場から、ノンフィクション、随筆、句集などに幅広く筆をふるう。主な著書に「おととの海」(冬樹社)、「廓のおんな」 (朝日新聞社・第十二回大宅壮一ノンフィクション賞候補作)、「北陸に生きる女」「北陸の古寺」(北国出版社)、句集「素顔」「白絣」(牧羊社)等がある。(本書に掲載の略歴です)

目次


はじめに 9
里につくる 10
・福岡の菅笠 12
・志雄町の五三郎飴 27
・志賀町のころ柿 34
・若狭の和紙 44
・黒部のすいか 54
・小浜の鳳足硯 66
山につくる 76
・勝山の羽二重 78
・五箇山のとうふ 88
・大門のそうめん 98
・白山麓の出づくリ 108
・能登のアテ山 120
・大野の朝市 130
町につくる 138
・井波の木彫 140
・金沢の津田流水引 150
・武生のうちわ 160
・七尾の和ろうそく 172
・富山の薬売り 180
・山中の漆器 188
海につくる 196
・能登の網工 198
・氷見の細工かまぼこ 210
・若狭の真珠 220
・氷見の干イワシ 228

おわりに 236

「おわりに」より

 本書にたずさわっていた二年半は、私にとって実にしあわせな日々だった。人間の手が生み出す無限の力は、何によってもたらされているのかと考えるほど、驚きの連続だったからだ。気力、意志、健康、それらに支えられたおんなたちの生きるたくましさに、絶えず私は教えられ、勇気づけられた。
 彼女たちはまた、ほとんど例外なく、静かなたたずまいとやわらかな表情で私を迎えてくれた。祖々代々受け継いだ手づくりの技が、彼女たちの挙措を美しいものにしていた。本の題名が『その手を見せて』に決まった今、私はつくづくと自分の手をながめてみる。この手で私は、半生、何をしてきたのか……。

書評

職人、職人の妻、農家の嫁、薬売り、工場経営者の妻、漁村の女…として、働く北陸の女たち