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○■サンカと説教強盗〔増補版〕■2017年01月15日 14:18

大正15年から昭和4年にかけて60件を超える窃盗・強盗事件を起こして帝都を騒がせた、サンカ出身とも言われる説教強盗。その逮捕までの経緯を推理する前半部分は面白い。


礫川 全次 (著)
単行本: 255ページ
出版社: 批評社; 増補版 (1994/12)

■商品の説明
内容紹介
昭和初期、帝都西北部の新興住宅地をねらう強盗が跋扈した。説教強盗妻木松吉。その兇悪な手口から捜査当局は説教サンカ説を流す。後のサンカ小説家三角寛らも関わった事件の真相を追う。
内容(「BOOK」データベースより)
昭和初期、東京に「説教強盗」が現れた。その名は妻木松吉。その兇悪な手口から、警察は犯人サンカ説を流した。捜査当局に対抗し犯人を追う、後のサンカ小説家、新聞記者三角寛。大戦を前にして物情騒然たる帝都の、富裕な新興住宅地西北地区にねらいを定めた一世説教強盗の、謎に包まれた出自と捕まるまでの犯行経路を追う。

内容(「MARC」データベースより)
大正末期から昭和初期に「帝都」を震憾させた説教強盗。事件の背後に見え隠れするサンカ。事件の全貌を克明に調べ上げ、実像と虚像が同居し、現像までが交錯するサンカと説教強盗の真相に肉迫する。
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
礫川/全次
1949年生まれ、在野史家。フィールドは、近現代史、犯罪・特殊民俗学。歴史民俗学研究会代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
はじめに 3
第一章 説教強盗とは 13
泣く子も黙る説教強盗 14
前代未聞六五件の強盗 17
用意周到な犯行計画 24
強要・暴行・説教 25
どんな犬でもひとにらみ 30
意表をついた逃走経路 31

第二章 説教強盗事件の地理 35
事件の地理的背景 36
旧東京から大東京へ 37
関東大震災の影響 40
城西・城北への人口移動 42
説教強盗の出没範囲 44
西巣鴨町字向原 47
説教強盗の地理感覚 52

第三章 翻弄された捜査陣 53
小沼米店における失態 54
高田署前における失態 56
旧態依然の捜査体制 58
魔の時代、昭和初年 60
捜査体制の一新 62
小沼米店の指紋をめぐって 63
鮮明な四指の指紋 65

第四章 説教強盗捕縛さる 67
前科一犯妻木松吉 68
不自然な経緯 71
捜査当局の秘密 73
左官「屋久米吉」 75
空前の大ニュース 76

第五章 新聞記者三角寛の挑戦 83
超人的な取材活動 84
新聞と警察 86
十二月三〇日記事 88
三角寛、犯人をキャッチ 91
追いつめられた捜査当局 93

第六章 説教強盗「山窩」説 99
俗説の発生源 100
黒装束五人組 103
特殊な侵入盗 105
薄弱な根拠 107
不幸な生い立ち 108
義父と松吉 111

第七章 「山窩」の虚像と実像 113
近代「山窩」像について 114
警察用語としての「山窩」 116
特殊な侵入盗と忍者 117
凶悪犯グループと忍者 119
サンカ集団と忍者 122
忍者・山窩・警察 123
虚像としての「山窩」 125

第八章 「サンカ」とは何か 127
サンカの定義 128
サンカをめぐる難問 130
サンカの語源 131
サンカの源流 134
サンカと下層生活者 136
組織性と犯罪性 140

第九章 サンカの漂泊性と被差別性 145
宮本常一のサンカ観 146
サンカと山中の住民 148
サンカの被差別性 150
番非人とサンカ 152
番非人とサンカの共通性 156

第十章 三角サンカ学の意味 159
新聞記者から小説家へ 160
山窩小説の意味 162
サンカ学研究の動機 164
三角サンカ学の特徴 165
最後のサンカ集団 167
説教・口説き・物乞い 169

補章 サンカ再論 173
資料編①~⑧ 189
あとがき 254

■「はじめに」
  サンカとは何か。
  ある時は古代からの伝承を伝える一群の人々であり、ある時は山野を疾駆する超人的パワーの持ち主である。またある時は警察を出し抜く特殊な犯罪集団である。
  しかし、結局の所、これらサンカ像は、現実に押しつぶされた現代人がサンカに仮託した「虚像」に過ぎないのではないか。
  人々は自らの渇望に基づいて、勝手なサンカ像を創り出しているに過ぎないのではないか。サンカが既に過去の存在であることを十分知りながら。
  従来のサンカ論にあきたらなかった私は、三角寛がサンカと関わることになった説教強盗事件について詳しく調べなおしてみようと思いたった。この事件がなければ、三角のサンカ小説もなかっただろうし、サンカの存在が広く知られることもなかっただろうからである。
  ところが、この説教強盗事件というのは実に妙な事件であり、調べれば調べるほど不可解な点が出てきた(謀略事件としか思えない一面がある)。しかも、犯人がサンカ出身というのも単なる「ウワサ」に過ぎず、確たる証拠は何もなかったのである。
  本書は、サンカ論を目指したものではあったが、この不可解な事件にややページを割きすぎたかもしれない。しかし、この事件を詳しく追ってみたことによって、従来のサンカ像とは違う「現実的」なサンカ像が見えてきた気がする。もっとも本書で示し得たサンカ像はまだ極めて未成熟なものであり、今後さらに「現実」に追っていかなくてはならないと感じている者である。
  読賢の御批判を期待したい。
〔付記〕本増補版は、初版に補章及び資料編を加えたものである。初版にあった誤字等は訂正し、数か所で表現を改めたが、内容の改訂はおこなわなかった。「まえがき」、「あとがき」も元のままである。右付記する(一九九四・八・二七)。

■Amazonの商品ページ
サンカと説教強盗―闇と漂泊の民俗史

■書評
大正15年から昭和4年にかけて60件を超える窃盗・強盗事件を起こして帝都を騒がせた、サンカ出身とも言われる説教強盗。その逮捕までの経緯を推理する前半部分は面白い。

△■混浴宣言■2016年11月21日 20:51

混浴を存続させてきたのは女性たちだった?


八岩 まどか (著)
単行本: 254ページ
出版社: 小学館 (2001/11)

■商品の説明
内容紹介
八岩まどか氏は、日本と世界の温泉をつぶさに回って執筆を続け、混浴の文化をこよなく愛する女性温泉ジャーナリスト。もともと混浴が普通だった日本の温泉には100年以上にわたって、野蛮な風俗として退けられてきた歴史がある。ついに平成5年には「混浴をさせてはならない」と法律で明文化され、混浴禁止の波がひなびた混浴の温泉地にも押し寄せてきた。しかし、その一方で、若い人たちを中心にインターネットなどを通じて交流を深め、新しい意識で混浴を楽しむケースも増えている。めまぐるしい今の時代、束の間の非日常を体験できる混浴温泉は、ますます大きな意味を持ってきている。過去の歴史で、混浴禁止の令をうち破ってきたのは、いつも女性だった。今回は八岩氏が、新しいアプローチで混浴を解放する。

出版社からのコメント
混浴の歴史、文化から新しい混浴の潮流、そして海外の混浴事情まで。女性温泉ジャーナリストが混浴の全貌に迫り、その素晴らしさを描く。平成5年に人知れず禁止令が出た混浴温泉を蘇らせることはできるか?

内容(「BOOK」データベースより)
消えつつある混浴は、日本人のふれあいの原点。女性混浴愛好家が、湯気の向こうにご案内。

内容(「MARC」データベースより)
その昔、銭湯も温泉も混浴だった。歴史のなかで幾度となく禁止されても、混浴を望んだのはいつも女たちだった…。消えつつある混浴は日本人のふれあいの原点。女性混浴愛好家が、湯気の向こうの「裸のつきあい」にご案内。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
八岩/まどか
1955年生まれ。温泉の歴史、文化、民俗に興味を覚えて執筆活動を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
混浴宣言 8
第一章 現代混浴事情 11
混浴温泉女二人旅/水着は緊張を押しつける/挑発する女、見られる男/大自然の混浴体験はクセになる

第二章 混浴はなぜ禁止なのか 39
自然のままに混浴していた温泉/突然の銭湯混浴禁止令/男女七歳にして湯を同じうせず/新しい風はいつも女性から吹いてくる/身分によって湯を分ける

第三章 聖なる湯と性なる湯 73
艶めかしい湯女たち/女にとっての色ごと/女たちの祭り

第四章 文明開化が混浴を変えた 103
日本人には羞恥心がない/裸体が見えてはならない/ノスタルジーとしての混浴/戦争のなかで

第五章 混浴が楽しくなくなった理由 147
どうしても混浴は禁止だ/上司との混浴はイヤ/浴室がプライベート空間になった

第六章 混浴の再発見 171
裸の解放感/若い女性たちが混浴に目覚めた/癒されたい

第七章 ドイツ混浴事情 195
温泉は社交場/雪のなかで泳ぐのがドイツ流?/水着を脱ぎ捨てて/露骨な視線はマナー違反/温泉は裸の舞台/温泉は劇場だ/お国柄も見えて/まなざしの交換

第八章 新しい混浴の波 229
混浴は非日常体験/心を遊ばせる

あとがき 246
混浴温泉リスト 248
参考文献 254

■書評
混浴を存続させてきたのは女性たちだった?

◎■家庭でできる自然療法■2016年10月10日 22:00

「もっと早く知りたかった」という声の多い、自然療法のバイブル的ロングセラー


東城百合子 (著)
出版社: あなたと健康社 (1978/1/1)

■商品の説明
平成22年に第920版出版という驚異的な増版を重ねる本書は、著者が若い頃に擢患した結核を玄米菜食と、自然の手当て法によって克服した休験を元に編み出されました。

著者について
東城百合子
大正14年岩手県に生れる。
昭和17年、当時日本の栄養学の草分けだった佐伯矩博士に師事、栄養士となる。
昭和24年重症の肺結核となり、玄米自然食によって白らの病気を克服する。以来自然食を主とした健康運動に力をそそぎ終戦後の混乱のさめやらぬ沖縄にわたり、沖縄全島に健康改革の灯をともし、沖縄の健康運動に力をそそぐ。
世界的な大豆博士といわれ、当時国際栄養研究所所長、国連保健機構理事、W・H・ミラー博士に師事。いよいよ健康改革運動に情熱をもつ。
昭和39年沖縄より帰京、東京に居をすえて、出版活動、自然食料理教室、栄養教室、講演活動と自分を育てるために啓蒙運動に力をそそぐ。
昭和48年5月、月刊誌「あなたと健康」を出版し、以来出版活動を中心に運動を進め今日に至る。
(http://www.binchoutan.com/toujou.html?gclid=CLHz0dym0M8CFReUvQodqrgPsgより)

■目次(大項目)
はじめに 1
一、自然が教える栄養学 13
二、治療のための自然食と自然療法 27
(1)病人のための食養生の実際 28
(2)家庭でできる手当て法 70
(3)健康づくりと体操 134
三、家庭でできる自然療法 147
四、自然良能力のすばらしさと体験談 371
索引 430

■「はじめに」より
健康に生きたいのは、誰もの願いですが、願いのようでなく、心のように成るのも、自然の成行き。自然のいのちを大切に、身近な日々の食物、植物、薬草などをはじめ、海の幸、山の幸で早めに無理なく、生命力を高めることそこ大事な事と私は自分の体験を通して思うのです。健康に生きたいのは、誰もの願いですが、願いのようでなく、心のように成るのも、自然の成行き。自然のいのちを大切に、身近な日々の食物、植物、薬草などをはじめ、海の幸、山の幸で早めに無理なく、生命力を高めることそこ大事な事と私は自分の体験を通して思うのです。

■書評
「もっと早く知りたかった」という声の多い、自然療法のバイブル的ロングセラー

○■オオカミはなぜ消えたか―日本人と獣の話■2016年09月16日 21:02

『間引きと水子』の著者である民俗学者が探る日本人と獣の関係


千葉 徳爾 (著)
単行本: 279ページ
出版社: 新人物往来社 (1995/04)

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
人と獣たちは、狐のように信仰の対象となったり、熊や猪のように獲物とされながらも永く共存してきた。オオカミが日本から消えたことを通して、現代人の生活を考える。

著者について
千葉 徳爾(ちば とくじ)
千葉県生まれ、東京高等師範学校を卒業し、愛知大学、筑波大学、明治大学の教授や、日本民族学会代表理事を歴任。日本地理学会名誉会員であった。柳田國男門下生であった。
人と動物の交渉史、山村文化などを研究し、「狩猟伝承研究」五巻にまとめた。2001年11月に、冠不全のため85歳で死去した。

■目次
第一章 日本人と野獣たち 7
近代日本の絶滅哺乳類/白色鳥獣出現の意義/人獣交渉史としての肉食の問題/記述の方針

第二章 日本人の野獣観 20
「美女と野獣」譚の一例/人獣交渉の一こま/異類婚姻譚の恐怖/山中異界観の形成/近世本草書にみる羚羊/『和界三才図会』の典拠/倒叙法と生態理論/野獣とは何か/野獣の分類/猫の国に行った人の話/近世日本の人狼交渉/ニホンオオカミノ斜陽化と滅亡/狂犬病と山犬・里犬/鹿の捕獲法とその目的/猪鹿数の減少と理由/狐・狸と日本人の思考/狸の生態と新興との間/多面的な人獣交渉

第三章 東日本のけものたち―その生態的環境― 74
野獣の種類別か人間の時代別か/『原始謾筆風土年表』が語る近世の下北/野獣増減の自然条件/熊と人間の交渉形態/北海道開拓と羆/アザラシとトド/羚羊狩から月の輪熊へ/マタギの巻物は飾物なのか/熊胆ブームのあだ花

第四章 西日本のけものたち―歴史的視点から― 111
西日本の熊と人との交渉/恐れながらも熊を捕る理由/熊への畏敬/西日本の山地は猪熊の世界/和紙生産地の鹿の被害/東西にみる猿の禁忌/野獣を殺して浄土に送る者/生類を憐れむというのはどういうことか/西日本の諏訪の文の普及/千匹塚という鳥獣供養法/供養儀礼を弘めたのは者は誰だろう

第五章 日本人にとってキツネとは何か 146
蝦夷の狐と本土の狐/狡猾は美徳ではなかったか/稲荷社信仰の御利益/大狐侍と家の繁栄/憑物もちの迷信/飯綱狐というものの話

第六章 日本オオカミはどこへ 166
北海道の狼たち―群集生活の悲劇/狼群の捕獲から滅亡へ/近世の日記にみる狼の盛衰/狼の被害者数とその分布/金沢近郊の野獣害記録/狼はどうだったのか/狼狩猟隊の日仏比較/金沢近郊の狼捕獲状況/狼犬混血のもう一つの結果?

第七章 鹿・猪・豚 195
日本列島の猪・鹿分布/祖母・傾山系の起伏と動物環境/もしも日本列島に人が住まなかったら/野獣捕獲頭数からみた神宮宮城林/猪・鹿捕獲と棲息量/伊勢地方の野獣捕獲量の近況/近世日本列島の狩猟圧/近世の大名狩猟とその目的/狩場の設定と農民生活/大名狩の伝統と目的/富士の巻狩が意味したもの/富士の巻狩の成果とは何か/猪から豚へ―南西諸島の人獣交渉史/ぶたは日本語である/ぶたという言葉の語源/南西諸島の野猪と人/猟犬とそのありかた

第八章 人とけものとの交わり 256
人とけものの間柄/人獣交渉史から見えてくるもの/人間と野獣とはなぜ同じ生きものか/狩猟者の用いる内蔵呼称/野獣と人との生命の類似性/臓器に名前をつける理由/終わりにあたって

あとがき

■「あとがき」の終わりの部分
  それにしても、ローマ人たちがコロセウムの中で人と野獣、人と人とが殺戮しあう場面を一つのエンターテインメントとして眺めていた心理は、われわれ園芸的農耕に早々と逃避(と彼等はいうにちがいない)して、死と対決闘争する人生を味わおうとしなかった社会に生きる者には、到底理解しがたいという気がする。これは野獣の上に奴隷を、奴隷の上に市民をという階級づけを久しく当然とみなして来た社会制度と不可分なものであろう。だが、それらを論証するには、やはりもう少し時間をかけて資料を集めなくてはなるまい。早まって誤解してはならないと思う。だからやはり、初めの計画のように、この書物に述べるのはこれだけにして、あとは別稿にまつことにしよう。それがなんとなく不満ではあるが結論となった次第である。
  したがって、いつか欧亜各地の人獣交渉の姿が、より詳しく知られたならば、もう一冊東西両洋の人と野獣とのかかわりかたを、著者の視点から考察して、気づいたことを書いてみたいものだと念願している。ただし、それまでの余命があるならば、という条件づきの話だが。
  最後に多大の配慮をいただいた新人物往来社編集部の酒井直行氏に厚く御礼申上げる。
一九九四年の大晦日を明日に控えて

■書評
『間引きと水子』の著者である民俗学者が探る日本人と獣の関係

○■間引きと水子――子育てのフォークロア――■2016年09月02日 21:27

「間引き」という文化現象を検証しなおす

■書評
るびりん書林 別館


千葉 徳爾 (著), 大津 忠男 (著)
-: 256ページ
出版社: 農山漁村文化協会 (1983/07)

■商品の紹介
内容
「間引き」は一つの文化現象であって単なる嬰児殺害ではなかった。文化というものはその背景となる社会が生み出したものであり、そのにないては人である。
そのような文化を持つ前代日本人の文化行動の基礎となる本質的な構造と思考の方式とが、どの点では変りどの部分では古いものを保っているのか。また、そのような社会・文化の諸要素の組合わせと、それらの変動、つまり文化的構造の推移のしかたと、それが表面的社会現象としてはどのような形となるのか、などを考察してみたいというのが著者らの目的である。

著者に付いて
千葉徳爾(ちば とくじ)
1916年千葉県生れ。1939年東京高等師範学校文科4部卒。東京教育大、信州大、愛知大、筑波大を経て現在、明治大学教授。
『狩猟伝承研究』正統後篇(法大出版局)
『風土論』(朝倉書店)
『地域と伝承』(大明堂)
『切腹の話』(講談社)

大津忠男(おおつ ただお)
1956年福島県生れ。1979年筑波大学人文学類卒。
現在、茨城県立茨城東高校教諭。
(本書の発行時に掲載されていたデータです)

■目次
まえがき
第一部 間引きは常習ではなかった
序章 日本人の生命観
1 死者・墓・霊魂 14
・死者―墓のない人 14
・墓とは何か 16
・遺体処理にみる生命観のちがい 18
・差別される子どもの墓 20
・仏にしてはならぬ魂 24
・民衆の霊魂観 25
2 間引きと子どもの霊魂 27
・間引きという言葉 27
・子殺しは中世にもあった 29
・間引きの地方呼称 31
・生命観の地域的変化 35

第2章 通説「間引き論」批判
1 著者らの問題意識 39
2 間引きに対する通説と疑問 41
・間引き「通説」のいつくか 41
・「通説」への疑問と研究方法の批判 46
3 間引き資料としての絵馬の問題 65
・柳田国男の見たもの 65
・木版絵と地獄図の間引き 71
・間引き絵馬奉納の意味 76
・絵馬分布のかたよりが示すもの 78

第3章 江戸期の人口停滞の原因
1 間引きがなくても人口が停滞する根拠 81
・問題の手がかり――凶荒の影 81
・越前国「宗門改人別帳」の研究 83
・会津山村にみる貧農の結婚難 89
・昭和初期でも五割に近かった乳幼児の死亡率 91
2 寺院過去帳による分析――事実に即しての考察 94
・津軽金木町の過去帳の研究 94
・飛騨地方における過去帳の研究 96
3 結論――間引きは常習ではなかった 107

第二部 間引きをめぐる先人の心意――民俗学の方法
第4章 民俗学における間引きの見方
1 民俗資料による間引き・子おろしの考察 112
・民俗資料を使う意義 112
・資料『日本産育習俗資料集成』 について 114
・間引きをめぐる伝承 118
・子おろしをめぐる伝承 125
・子おろしの原因――密通 129
・間引きと子おろしの地域的差異が示すもの 131
2 間引きの底流にあるもの――津軽の民俗調査から 135

第5章 子どもの葬法からみた先人の心意
1 子どもの葬法に関心がもたれなかった不思議 143
2 著者らが選んだ調査地の概要 150
3 成人の葬法にみる死と霊魂についての考え 151
4 子どもの葬法の特徴 162
5 子どもの霊魂はどこへ 168
・ジゾッコとタモトオトシという言葉 169
・サイノカワラについて 172
6 生れかわる子どもの魂 178
・平田篤胤『勝五郎再生紀聞』 178
・輪廻思想とのかかわり 180

第三部 子育てのフォークロア――現代への架橋
第6章 子育てからみた常民の心意
1 子どもの無事を祈る民俗のかずかず 186
2 通過儀礼と庶民の心意 190
・通過儀礼研究の意義 190
・胎児の段階 192
・幼児の段階 197
・地域の特性はみられるか――調査から 203

第7章 かつて子どもは地域全体で育てられた
1 子どもの成長と地域社会の承認と支持①――脇川の調査から 209
2 子どもの成長と地域社会の承認と支持②――玉取の調査から 215
3 着衣の変化からみた社会的承認 222

終章 現代の子育てをめぐって
1 荒廃する現代の子育て――水子供養のはやる背景 235
2 叱り方にみる親と子の真実の絆 238
・「お前は拾った子だから……」といわれても 238
・孤独な群衆としての子どもの出現 241
3 郷党教育の後退と精神的間引きの増大 243
4 今、親たちに望むもの 248

参考文献 253
あとがき 255

○■カムイ伝講義■2016年08月04日 19:17

江戸時代の架空の村と、非人、エタ、農民らの暮らしを通じて、現代社会を見る。

■書評
るびりん書林 別館

田中 優子 (著)
単行本: 339ページ
出版社: 小学館 (2008/10)

■商品の説明
内容紹介
白土三平の名作漫画『カムイ伝』を通して、江戸の社会構造を新視点で読み解く。現代の階層社会の問題が見えると同時に、エコロジカルな未来もみえる。 --このテキストは、文庫版に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)
コミック界の巨星・白土三平のライフワークが江戸学の新視点を得て、新たな輝きを放つ!「いまの日本はカムイの時代とちっとも変わっていない」競争原理主義が生み出した新たな格差・差別構造を前に立ちすくむ日本人へ―。江戸時代研究の第一人者が放つ、カムイ伝新解釈。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
田中/優子
法政大学社会学部教授。1952年横浜市生まれ。遊女、被差別民など、歴史の表舞台に登場しない民衆にも着目して江戸時代を立体的に研究。『江戸百夢』で芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞を受賞。明快な語り口と艶っぽい和服姿はテレビのコメンテーターとしても人気。2003年より法政大学社会学部で「江戸ゼミ」を主宰。2006年4月より、同ゼミと学科基礎科目の授業で『カムイ伝全集』を参考書に使う授業を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
はじめに 『カムイ伝』から発掘できる、さまざまなテーマ 11
第一章 『カムイ伝』の空間と時間 21
第二章 夙谷の住人たち 31
穢多の存在理由/穢多の実像/河原の豊かさ/日本の村の多様性/かわた村の成立/弾左衛門支配/武士のなりわいとしての乞胸/黄表紙に見える非人/身分制度の形骸化/組織内格差/社会の中での非人・穢多

第三章 綿花を育てる人々 67
百姓――多様な能力を持つ人々/綿作とはどういう仕事か/綿花栽培のはじまり/いく人もの正助/木綿には二種類あった?/インド的技術改良と嶋(ストライプ)/綿花栽培の崩壊

第四章 肥やす、そして循環する 93
正助たちの下肥/肥料とは何か/さまざまな肥料/下肥システム/肥料の情報化と商品化/動物系肥料/干鰯・干魚/カスとクズこそ価値がある

第五章 蚕やしない 117
マユの専売/産業の現場/蚕から布まで/絹の国産化/生糸一揆

第六章 一揆の歴史と伝統 141
一揆の歴史/戦いとしての一揆/百姓一揆のルール/一揆の音と形/一揆の原因/郡上一揆/一揆の性質/特産物をめぐって/さまざまな一揆

第七章 海に生きる人々 169
迫力!『カムイ伝』の漁シーン/納屋集落/深川の漁師たち/生きるための漁・楽しむための漁/商業の介在/江戸時代の漁と漁師/イワシ漁の展開

第八章 山に生きる人々 197
袋堰/日本の森林/治山治水思想と「山川掟」/山の管理と放置/マタギ/サンカ/宝の山――『カムイ伝』に見られる鉱山/なぜ鉱山は必要だったか/平和な鉱山町/山と山丈

第九章 『カムイ伝』の子どもたち 241
子どもというテーマ/子どもたちの縄張り/子どもとは何か?/たくさんの親/組織としての子ども組・若者組・娘組/生きる力とは何か

第十章 『カムイ伝』の女たち 257
武士の親子/ナナとサエサ/村の女たち/娘組・嫁組(カカア組)・婆仲間/恋愛と結婚/女性の存在感

第十一章 『カムイ伝』が描く命 271
不知火の才蔵/生きようとする体/殺すことにも生かすことにも使える技術/島原・天草の乱/二つの外科医術/薬師と本草/死/命/生態系/『カムイ伝』について

第十二章 武士とは何か 309
武士の生活/武士は必要だったか?

おわりに いまもカムイはどこかに潜んでいる 325

あとがき 330
追記 受験生にとっての「カムイ伝講義」 332
図版索引 334
引用・参考文献 338

?■日本起源の謎を解く―天照大神は卑弥呼ではない■2016年07月30日 08:31

念写の発見者とされる福来博士を慕う著者が古事記、日本書記を前提としつつ、真実は日本起源の地、飛騨に伝わるとする説を展開。各種神代文字の研究、言語論、平和論などにも及ぶ。一般書店にない福来書店発行の本。

■書評
るびりん書林 別館


山本 健造 (著)
単行本: 336ページ
出版社: 福来出版; (1991/7初版、1992/1三版)

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
本書では計量推定学方式により算定した天照大神は西暦前27年前後、神武天皇は西暦33年前後の実在の人物であることを証明し、西暦239年頃のヒミコより、天照大神は約266年前の人物であることを科学的に証明する。九州の女王ヒミコも近畿の神武天皇も、津軽半島に逃げた長髄彦も、ヤマトの語を大切にした。従って、九州ヤマタイ国論と近畿ヤマト国論の水掛け論争の終止符を打つのが本書である。

内容(「MARC」データベースより)
神武天皇から九代開化天皇までを神話上の架空の人物とする説や、朝鮮半島からの移民が近畿地方を制圧した皇室の祖だとする説に対して、言語学、血液学、考古学、地学などを駆使し、総合的見地から批判。日本の起源の真相を分析する。

著者について
山本健造
大正元年十一月生まれ。少年時代から神秘現象を研究し、十六歳にして超能力を得る。以来多くの難病者を救う。十八歳の時、神通力の奥にひそむ六次元弁証法のインスピレーションを得る。小学校卒業後、逆境の中で中学講義録や哲学講座を独学し、四十二歳で日大文学部(哲学専攻)を通信で卒業、小中学校教員の免許状を十一枚取得、高校倫理社会の教師を最後に三十八年間の教員生活を退く。
六十一歳で高野山大学聴講生、六十二歳で高野山大学院教科修士課程入学、六十四歳で文学修士の学位を受く。問題少年矯正治療等の長年の教育上の功績により昭和五十八年三月、学術研究、財団法人として許可される。昭和六十二年アメリカの学会に招待され、研究発表した。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次(大項目とトピックのみ抜粋)
日本史学界の巨星 樋口清之博士の本書へのご意見
序文
一 卑弥呼は誰か諸説紛々 35
二 邪馬臺国(ヤマトコク)は飛騨より大和と九州、津軽を結ぶ 39
・津軽にヤマト城/津田左右吉の詭弁/神武は実在/神武より九代天皇の否定根拠なし/飛騨の伝承/出雲の「国譲り」は政略結婚のもつれ/天孫降臨は飛騨政権の山下り/天安川原は飛騨にあり/九州の邪馬臺国(ヤマトコク)/前一世紀頃の日本/一~二世紀頃の日本/三世紀、卑弥呼君臨/ヤマト国は九州にも近畿にも/神武九代は実在/安本美典氏を讃う/長男相続は儒教思想/天皇の平均在位年数/平均在位年数と天照大神(ヒルメムチ)の推定/卑弥呼は天照大神の子孫/五王は大和朝廷/神武の古墳は墳丘程度

三 近畿、津軽、九州に邪馬臺国(ヤマトコク)あり 75
・津軽のヤマト城/神武以前近畿にヤマト国/邪馬台国は間違い/昔は八母音/ヤマトの語源/奴、倭から大和、邪馬臺へ/乗鞍麓の名家の口伝/飛騨宮村の国づくり/位山の皇祖岩/飛騨政権の拡大/多紀理姫の嫁入り/多紀理姫の蒸発と若彦の反逆/稗田阿禮は飛騨の人/天孫降臨と椿大神社/コノハナサクヤヒメとウガヤフキアエズノミコトの誕生/豊前市舟継ぎ岩/神武の帰還と東西のヤマト国/金鵄勲章のいわれ/長髄彦の子孫/原始的な大嘗祭/世界唯一のエンペラーである天皇/東京裁判の虚偽と「南京大虐殺」/隣国の反日教育

四 飛騨に伝わる口碑では長髄彦は東北へ 100
・調査の旅/日本書記より口碑が本当/長髄彦兄弟の子孫が健在/『東日流外三郡誌』は反逆思想/不戦の古代日本人/長髄彦の子孫は元寇で国を守る

五 『古事記』『日本書記』より飛騨の口碑の方が正しかった理由 111
・ニニギノミコトの子孫が皇統を継ぐ定め/『日本書記』での長髄彦/理由

六 長髄彦の気持ちに叛いた『東日流外三郡誌』の誤り 115
・長髄彦の祖先はオオヤマズミノミコト/長髄彦の武士道精神を讃う

七 捏造された『外三郡誌』の反逆精神 121
・長髄彦は妹を仇敵の妻にしない/田村麻呂の真心を蹂躙/天皇位まで奪う

八 荒覇吐精神と理想 130
・「アラハバキ」の語源/正当防衛精神

九 日本の偽史を攘う―神代文字は本当にあったのか?― 134
・日本古代文字の実在性/平田篤胤による偽作/平田復古神道の波及

十 平田復古神道は明治維新を助け早めた 143
・山口不二子、松尾多勢子の念写/松尾多勢子の明治維新への功績
十一 神代文字諸文献を科学するに当りて 154
・天日(あびる)文字の組立て/外国の文字と神代文字/神代文字文献の非現実性/古代の絵文字

十二 竹内文献のあらまし 164
・『竹内文献』の出所/受難/竹内巨麿の出自/世界人類は日本に発生説

十三 神代文字は文献にどんなものがあるか 168
・あらまし

十四 『上つ記(うえつふみ)』とは何か
・出所/添えた文字が問題/夫婦の房事の頻度など現実的な内容/神道開きの野心や中国思想がない/天孫降臨説がない/書かれた年代

十五 『秀真文書(ほつまつたえ)』のあらまし
・独創的な組み合わせ文字/還暦は日本起源/天照大神は男神/非現実性/高天原は飛騨を思わせる石器/飛騨の文化と土器の交易

十六 日本語母音論争では神代文字の存否は俄かに結論は出しにくい 189
・八母音説では神代文字を否定/母音論だけでは真偽判定困難/日本古代に絵文字は存在/稗田阿禮は絵文字を使用/国体の尊厳を冒す偽書

十七 神代文字はなくとも古代の絵文字はあった 196
・日本古代文字の実在を証明するサンカ文字

十八 組み合わせ文字の流行の時代 201
・惟足(おもたる)文字/種子(たねこ)文字/筑紫(つくし)文字/アイヌ文字/節ハカセの文字/上津文字/対馬文字/斎部(いむべ)文字/アナイチ数字/モリツネ文字の数字/出雲文字/阿波文字/天日(あびる)文字/天日草書体

十九 『九鬼(くかみ)文書』と九鬼家の迷惑 212
・九鬼家の歴史/文字/内容

二十 日本古代社会は公平、仁愛で貫かれていた 218
・古代社会は公平であり、平等ではない/封建制ではなく徳治

二十一 唯物平等主義は階級闘争と惨殺を産む 221
・社会主義は平等と公平を混同/空想的社会主義の失敗/科学的共産主義の失敗/共産制が生む無数の惨殺死体/唯物平等主義の陰惨性

二十二 共産国を自滅させた労働価値論 226
・唯物平等の価値観の誤り/基礎研究の遅れ/自国の歴史を罵る国は滅ぶ

二十三 諸科学者の独断的偽史を攘う 231
・生物進化の法則

二十四 日本列島誕生と世界第一の暖流と台風 237
・日本列島の誕生/氷河時代も進化が続く/純日本人が日本で進化/世界各地に人類は発生

二十五 旧石器時代に大陸に出て行った日本文化 243
・日本産の黒曜石が大陸奥地の地下に/移入だけではない

二十六 原日本人の存在についての確証 248
・原日本人に白血病ウイルスはない/アイヌと宮古島住民の遺伝子/母系遺伝

二十七 人類発生と言語について 254

二十八 言語を心理学より分析する 256
・従来の言語学の手法を否定/安本計量比較言語学から見た日本人のルーツ/北方民族起源説/瞑想民族と征服民族の言語比較/原日本語は諸国語を融合統一

二十九 言語より日本人のルーツを探る 262
・ 心理学的に分析/朝鮮人が王になったか/大陸人が王になったか/独特の古代文化を伝える皇室/アイヌ語と南方語順/アイヌ語と原日本語

三十 日本海両岸の風俗共通性 275
・結婚の風習/分家や血盟の契り/葬式儀礼/心理的共通性

三十一 地球寒冷化と民族の移動を証明する石器 279
・天孫降臨を裏付ける気候変動/合掌造りの大家族制/証拠となる御物石/集団移動の科学的考察/飛騨政権と天孫降臨

三十二 何故伊勢神宮は伊勢に遷ったか 288
・灯籠のユダヤ教紋章の謎/天照大神を伊勢に遷した意味/大和民族の古里高天原

三十三 偽史を攘って「本当の平和運動」を起こそう 297
・亡国平和運動/第二のクウェートにならぬために/大東亜戦争の原因/太平洋戦争の原因/原爆投下とソ連参戦の非人道性(原爆碑の愚かさ/トルーマンの非道/東京裁判の洗脳)/美しい魂の記憶(愛国と義理と友情の親子/出征の思い出/武山海兵団/シドニーの四郡神)/先祖を罵倒する教育/南京大虐殺のでっちあげ/侵略しない・させない大和魂

三十四 世界永久平和論を提唱する 320
・国防が独立を保つ/日本国憲法の改正を/カントの世界永久平和論/第二次大戦後の国際道徳の成立/世界世論/世界永久平和論綱領

あとがき 334
参考文献 337
財団法人飛騨福来心理学研究所案内 341
・福来博士と念写/研究所の内容/所長紹介/理事長紹介

■「序文」の終わり部分
  戦後の我が国の史学界は天照大神(ヒルメムチ)や神武天皇から九代開化天皇までを架空として否定し、十代崇神(スジン)天皇や、十六代仁徳天皇は朝鮮や支那あたりから来た覇者でないかとか、神攻皇后もいないのではないか等と「ただそう思う」という理由で否定する人がいます。
  これらの問題をただそう思うというのでは学問的でないので科学的に徹底的に追求してみました。
  右の外、神代文字の歴史書を科学的に追求し、その方面からも日本の起源を考察しました。
  言語の方では、狩猟征服民族と草食瞑想民族に別けて、心理学的に分析して日本民族の起源を探ってみました。
  最近の研究より約一万年前に日本の黒曜石で作った石器がシベリヤのバイカル湖に進出している事から、今までの渡来一点張りの考え方に反省を促したり、血液学の統計により、日本民族の中心が飛騨にある事を証明したり、新学説を一杯書きました。
  それから、今後の日本が世界的視野の下に独立を全うし、平和を実現してゆくにはどうしたらよいか、カントの永久平和論を踏まえて世界永久平和連合国憲法の骨組みを添えました。
(平成三年五月二十八日)

○■奈良時代の貴族と農民―農村を中心として―■2016年06月18日 16:48

正倉院所蔵荘園絵画を史料として奈良時代の農村生活を探る


著者:彌永貞三(いやなが ていぞう)
出版社: 至文堂
昭和31年3月15日発行
204ページ

■商品の紹介
内容
正倉院所蔵の荘園絵画の調査に従事することを契機として、絵図を史料として村落生活を研究し、近江の国覇流村・水沼村の考察を中心として奈良時代の中央政治に大きく影響を受ける地方農民の暮らしを推測。

著者について
弥永貞三(いやなが ていぞう)
彌永 貞三(いやなが ていぞう、1915年(大正4年)7月12日 - 1983年(昭和58年)12月30日)は、日本の歴史学者。東京大学史料編纂所所長。従四位勲三等瑞宝章。東京出身。
東京大学史料編纂所在職中は大日本古文書の東大寺東南院文書の編纂に従事した。ほか、東京大学百年史編集委員、文化財保護審議会専門委員、平城宮跡発掘調査指導委員などを歴任した。

■目次
序説 1
一 班田制 4
二 条里制 17
三 聚落と耕地(其の一)―近江国水沼村・覇流村― 36
四 聚落と耕地(其の二)―越前国足羽郡道守村― 125
五 農村の生活 175
むすび 201

図版目次
水沼村絵図(史料編纂所蔵複製本) 巻頭一
覇流村絵図(史料編纂所蔵複製本) 巻頭二
越前国坂井郡東大寺荘園並ニ口分田関係位置図 16
滋賀県愛智郡の条里制遺構 18
条里遺構の分布図 19
平流村略図 39
石寺附近より荒神山(覇流岡)を望む 40・41
稲里村公会堂所蔵平流村絵図 42
荒神山より曾根沼を望む 48
水沼村略図 50
大門池の水門 103
弘福寺領平流荘の推定位置図 123
道守村の荘域推定図 126
折込地図 124~125
表A図 近江国平流村復原図
  B図 近江国水沼村復原図
裏C図 越前国道守村耕地分布図
  D図 越前国道守村耕地分所有関係図

■「むすび」より
農民たちの生活は、中央貴族たちの生活と決して無関係ではなかった。中央政界に於ける変動が彼等の生活に敏感に伝わって来たことは、道守村の例で見て来たところである。のみならず、奈良の都で営まれた華やかな天平文化を築き上げた経済的基礎は、農民等の調庸物であり、それよりも大きなのは、農民等が提供した賦役労働であった。
  貴族等も亦農村に対して大きな関心を持った。班田制から三世一身法、墾田私有法に移行する土地制度の変化、更には雑徭の半減と公出挙制の成立など、対農民政策に於ける重要な転機が、常に中央政界の変動と随伴していることは何よりもこれを物語っている。
  奈良時代を通じて、墾田は大いに開発され、国家経済は大いに発展した。しかし乍ら農民等の生活はこれがために向上したとは考えられない。農民などの一部は地方豪族乃至有力な農民として成長して行ったが、多くのものはその隷属下に入ることによってかろうじて生活をつづけて行ったと考えられる。かような有力農民の数は、奈良時代の経過するにしたがって増加して行ったようである。そしてこれらの 治田主が次の荘園時代を造り上げる主柱となったのである。

■書評
るびりん書林別館

◎■織田信長 最後の茶会■2016年06月10日 22:10

貨幣、資源、交易、暦、宗教――国際政治の黒幕が信長の命を奪ったのかもしれない


小島 毅 (著)
211 ページ
出版社: 光文社 (2009/7/20)

■商品の説明
内容紹介
暗殺前日、信長は何を言ったのか? 「本能寺の変」後、寺から消えたものは? そして、この同じ年に起きた、世界史上の大事件とは? 東アジアの視点で描く、新たな信長像!
内容(「BOOK」データベースより)
本書は、本能寺の変について「東アジア」という視点から考察を加えていく。私の本業は東アジアの思想文化についての研究である。したがって、室町時代の政治史に関しては門外漢であり、単なる「愛好家」にすぎない。だが、信長の「変」前日の行動をめぐる従来の研究・叙述のほとんどが、視野を日本国内に限定していることに対して長いこと違和感を懐き続けてきた。十六世紀後半の世界情勢のなかに「天正十年六月一日」を置いて眺めてみると、同時に存在していたさまざまな動きが見えてくる。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
小島/毅
1962年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、東京大学人文社会系研究科准教授。専攻は、儒教史、東アジアの王権理論。文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成」(2005~2009年度)の領域代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

目次
プロローグ――本能寺の変とその前日 3

第一章 信長はどう描かれてきたか――天皇との関わり 19
(1)司馬遼太郎 20/「司馬」以前は「勤王家」イメージ
(2)頼山陽『日本外史』 25/天皇に尽くした「勤王家」
(3)田中義成『織田時代史』 30/政治的手段としての勤王ぶり/頼山陽と田中義成の史観のねじれ (4)徳富蘇峰『近世日本国民史』 35/安土桃山時代の画期的な意義/経世的勤王家/勤王を実践するための幕府再興/一種の信長待望論/平泉澄の『物語日本史』
(5)ふたたび司馬遼太郎 44/欠けている「天皇」

第二章 本能人の変の黒幕候補たち 49
(1)正親町天皇 50/三職推任問題/譲位問題の解釈/「即位」もままならない/信長と正親町天皇の関係/百二十年も続いた「慣例」/百三十年ぶりの生前譲位復活
(2)近衛前久 62/将軍足利義晴の名の一字を拝領/足利家・織田家・豊臣家・徳川家を渡り歩く/前久が守ろうとしたもの
(3)徳川家康 70/家康の特殊性/家康の不安/変の前日、茶会を三つ掛け持ち/話がうますぎる「神君伊賀越え」
(4)沢彦宗恩 78/大徳寺と妙心寺/「心頭滅却すれば火もまた涼し」/信長のブレーン/二度目の陰謀?/「本能寺の変」を国際関係のなかで考える

第三章 永楽銭、石見銀山、倭寇――東アジアの経済交流 91
(1)永楽銭 92/信長の旗印/東国限定の通貨/江戸時代に生まれた思い込み/信長ひとりが「変人」/信長の財政基盤は、尾張と伊勢を結ぶ海路商圏/環伊勢海政権/明の皇帝の旗のもとに戦った信長
(2)東アジアの国際情勢 106/日本国王――良懐(懐良親王)から足利義満へ/「勘合貿易」に対する違和感/つかの間の安定体制にあった明
(3)南蛮文化 115/大航海時代と信長/種子島への鉄砲伝来/信長の果たした役割
(4)倭寇の時代 120/石見銀山/「日本出身の海賊」はむしろ少数派/義満と同じ役割を演じた秀吉
(5)大内氏と毛利氏 127/京に並ぶとも劣らぬ文化都市・山口/毛利氏を頼って足利義昭/京都中心の偏った歴史認識/最後の勘合貿易船/寧波の乱/博多との対立/天正十年六月一日をめぐる状況

第四章 安土城、名物茶道具――信長と唐物 145
(1)唐様安土城 146/信長の中国趣味/天皇行幸を重視していた信長/安土城に見える信長の中国志向/天主のなかに描かれた障壁画/「謙」の徳
(2)名物茶道具 159/撰銭問題/金や銀が通貨とみなされるようになった時期/本能寺に運び込まれた三十八種の「唐物」/薬や油を入れる容器にすぎなかった「九十九茄子」/「東山御物」を下賜し、権威を保つ/『君台観左右帳記』――由緒正しい最高級唐物のリスト/「贋作」と言えるか?/「牧渓のくわい」/茶の湯御政道/上野一国と信濃の一部に相当する「殊光小茄子」

第五章 東アジアの暦と太陽暦、太陰暦 180
(1)東アジアの暦について 180/旧暦=東アジアの暦/無視できない「月の力」/イスラーム圏で使われ続ける「太陰暦」/「一日」はなぜ「ついたち」か/東アジアの暦における、月の番号の決め方/二十四節気の名称/十二個の「中」が「月」を決める/閏月は十九年に七回の割合で設定される
(2)京歴と三島歴 193/新年を迎える月が一月異なる/公家たちにとってゆゆしき事態
(3)ローマでの改暦事業 196/ユリウス暦/グレゴリウス暦への改暦/世紀の変わり目なのに三百六十五日しか無い年/ローマ教会の暦の導入はありえたか?

第六章 明暦と日本 207
(1)「壬二月廿九日」 208/対馬宗氏と島井宗室/閏二月の書状/「閏三月」ではありえない理由/「閏二月」は存在した/そもそも誤記ではない可能性も
(2)明暦の拡がり 221/正朔を奉ず/宣明暦と様々な地方暦/確実に伝わっていた明暦の情報/日本だけが特殊

第七章 宗教と信長王権 229
比叡山の焼き討ち/東大寺焼き討ちとの相似/一向宗との戦争/安土宗論/五山文学/和学の壁/「国風文化(和学)」と「五山文化」/信長は「無信仰」だったか/自らの誕生日を祝わせた信長/誕生祝いは中国伝来か/「日本国王」である証/正月元日を誕生日として祝わせた秀吉

エピローグ――そして太陽暦が採択された 253
あとがき 256
参考文献 258

■「プロローグ」から
本書は、この疑問(引用注:本能寺の前日になぜ敢えて京都で盛大な茶会を開いたのか)について「東アジア」という視点から考察を加えていく。私の本業は東アジアの思想文化についての研究である。したがって、室町時代の政治史に関しては門外漢であり、単なる「愛好家」にすぎない。だが、信長のこの日の行動をめぐる従来の研究・叙述のほとんどが、視野を日本国内に限定していることに対して長いこと違和感を懐き続けてきた。十六世紀後半の世界情勢のなかに「天正十年六月一日」を置いて眺めてみると、同時に存在していたさまざまな動きが見えてくる。
とりわけ、天下人となった織田信長が、自身をどのように位置づけようとしていたかという関心から光を照らしたとき、京都で茶会を開催しようとしたことわきわめて重大な意味をもってくる。私自身が研究対象としている「東アジアにおける王権のありかた」という点からこの日のできごとを再考してみるというのが、本書の趣旨なのである。

■書評
るびりん書林 別館

◎■看取り士――幸せな旅立ちを約束します■2016年06月04日 10:50

暮らしの中の死の文化を取り戻す


柴田 久美子 (著)
単行本(ソフトカバー): 208ページ
出版社: コスモトゥーワン (2013/5/8)

商品の説明
内容紹介
「看取り士」とは、文字通り旅立つ人を看取る人のことです。
住み慣れた自宅や本人の希望する場所で自然な最期を迎えたい人に、24時間より添い、旅立ちを支援します。
幸せに死ぬためにはどうしたらいいのか・・・
生きる意味、死の意味に気づいていただければ幸いです。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
柴田/久美子
島根県出雲市生まれ。日本マクドナルド(株)勤務を経てスパゲティー店を自営。平成5年より福岡の特別養護老人ホームの寮母を振り出しに、平成14年に病院のない600人の離島にて、看取りの家「なごみの里」を設立。本人の望む自然死で抱きしめて看取る実践を重ねる。平成22年に活動の拠点を本土に移し、現在は鳥取県米子市で在宅支援活動中。新たな終末期介護のモデルを作ろうとしている。また、全国各地に「死の文化」を伝えるために死を語る講演活動を行っている。現時は一般社団法人なごみの里代表理事、介護支援専門員、吉備国際大学短期大学部非常勤講師、神戸看護専門学校非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
まえがき 3
第1章 看取りの瞬間
●看取りの瞬間に親子になれた、千代さん 17
●心と心が重なる旅立ちの時……マサさんとの12年の歳月 24
●ただ共感することの尊さを教えてくれた武雄さん 36
●私の腕の中で逝った和子さん 47
●私の中に生き続ける父 52

第2章 お金では買えない最期の贅沢……看取り士
●しあわせな死とは 59
●看取りの場面は奇跡の連続 61
●抱きしめて送るつもりが抱きしめられていた 63
●愛や喜び、すべてを受け渡す看取りの現場 66
●看取り士の立ち位置 67
●看取る人がしあわせになるための四つのポイント 69
①家族で肌の触れ合いを 69
②傾聴、反復、沈黙 70
③大丈夫と声をかける 72
④旅立つ人と呼吸を共有する 73
◆コラム:痛いと言われたらさする……ガン末期の方 75
●旅立つ人がしあわせになるための三つのポイント 77
①死を受容する 77
②お迎えは必ず来る 80
③旅立つ人は最期の状態を自分でプロデュースする 81
●看取り士の具体的な仕事 83
・余命宣言を受けてから始まる看取り士の仕事 83
・どこで死にたいのか 84
・重要な医師との連携 85
・身体を拭き、好きな服を着せてあげる 86

第3章 病院で死ぬしかない日本の制度
●病院で死ぬしかない現実 89
●家族が壁になる 92
・延命治療と家族のエゴという問題 92
・死んだらどうしようという不安 94
●延命治療をするとどうなるか 95
・胃ろうをしない選択、する選択 97
●私たちは子供たちに地獄を見せているのではないか!? 101
●病院で死ぬしかない制度に医療関係者も矛盾を感じている 103
●特別養護老人ホーム(特養)で実現すべき尊厳ある死 107
・「看取り加算」という制度ゆえに、自宅で死ぬことが難しくなっている 107
・施設に入り、最期は病院へ 108
・介護を受けている人の悲しみを受け止めたい 110
◆コラム:介護の現場 113

第4章 平穏に死ぬための準備をしよう
●60歳になったら必ず死の準備をする 121
・人は一人では死ねない 121
・家族で話し合う 123
●看取りとは、ひと昔前に行われていたことを取り戻すこと 126
●死は第二の誕生 128
◆コラム:魂と魂を重ねる時間 130
●死の恐怖を取り除く内観とは 132
●光を感じた瞬間 134
●母の死 136
◆コラム:死後も大切なこと……初七日・四十九日 140
●「1億総ヘルパー」時代に突入 142
●しあわせに旅立つための「エンゼルチーム」 145
●帰りましょう、帰りましょう……エンゼルチームの活動から 148

資料編 柴田さん頑張れ!!
……医師との対談と医師からの応援コメント
●医師が一番知らない平穏死
――長尾和宏医師に聞く 154
●融合医療を目指して
――日本心身医学会専門医 内科医師 岩田千佳 192

あとがき 202
※巻末資料:看取り士とエンゼルの仕組みをご利用いただくために

「まえがき」より
  抱きしめて送り、私のこの腕の中で最期の呼吸を終えたその人々が私にその身体を使って教えてくれたこと、その尊い体験を私は一人のものとはせず、一人でも多くの方に伝えたい。
  この本には『看取り士』というタイトルがついていますが、言い換えれば、旅立つ人の本当の気持ちを伝える本であるとも言えるでしょう。
  しあわせに死ぬためにはどうすればいいのか、本書を通して一人でも多くの人が「看取り士」という存在を知り、生きる意味や死の意味に気づいていただければ幸いです。

■書評
るびりん書林 別館