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■★かくれた次元■2019年01月20日 21:39

アメリカの自文化中心主義の弊害を解消しようとする中で書かれ、プロセラミックス(近接対人空間学)を提唱している本だが、動物としての人間の在り方を含め、興味深い着想に富んでいる



エドワード・T・ホール (著), 日高 敏隆 (翻訳), 佐藤 信行 (翻訳)
単行本: 304ページ 出版社: みすず書房 (1970/10/31)

商品の説明


内容(「BOOK」データベースより)


今日の世界では、われわれは、多くの情報源からのデータに圧倒され、さまざまの文化に接触し、世界中いたるところで人びとにインヴォルヴされてゆく。それとともに、世界全体とのかかわりが失われているという意識もしだいに強くなっている。

本書は、人間の生存やコミュニケーション・建築・都市計画といった今日的課項とふかく結びついている“空間"利用の視点から人間と文化のかくれた構造を捉え、大量のしかも急速に変化する情報を、ひとつの統合へと導く指標を提供するものである。

ホールは、二つのアプローチを試みる。一つは生物学的な面からである。視覚・聴覚・嗅覚・筋覚・温覚の空間に対する鋭敏な反応。混みあいのストレスから自殺的行為や共食いといった異常な行動にかられるシカやネズミの例をあげ、空間が生物にとっていかに重要な意味をもつかを示す。人間と他の動物との裂け目は、人びとの考えているほど大きくはない。われわれは、人間の人間たるところがその動物的本性に根ざしていることを忘れがちである。

もう一つは文化へのアプローチである。英米人・フランス人・ドイツ人・アラブ人・日本人などの、私的・公的な空間への知覚に関して多くの興味ぶかい観察を示し、体験の構造がそれぞれの文化にふかく型どられ、微妙に異なる意味をもつことを示す。それはまた疎外や誤解の源でもあるのだ。

このユニークな把握は、人間に人間を紹介しなおす大きな助けとなり、急速に自然にとってかわり新しい文化的次元を創り出しつつあるわれわれに、新鮮な刺激と示唆をあたえてやまない。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)


エドワード・T・ホール
エドワード・T・ホール(Edward Twitchell Hall, Jr.、1914年5月16日 - 2009年7月20日)は、アメリカ合衆国の文化人類学者。日本では「E・T・ホール」と表記されることも多い。

目次(大項目の抜粋)


第一章 コミュニケーションとしての文化 3
第二章 動物における距離の調節 13
第三章 動物における混みあいと社会行動 37
第四章 空間の知覚――遠距離受容器 目・耳・鼻 63
第五章 空間の知覚――近距離受容器 皮膚と筋肉 76
第六章 視覚的空間 95
第七章 知覚への手掛りとしての美術 111
第八章 空間のことば 130
第九章 空間の人類学――組織化のモデル 145
第十章 人間における距離 160
第十一章 通文化的関連におけるプロクセミックス
    ――ドイツ人・イギリス人・フランス人 192
第十二章 通文化的関連におけるプロクセミックス
    ――日本とアラブ圏 206
第十三章 都市と文化 228
第十四章 プロクセミックスと人間の未来 249
付録 遠近法の十三のヴァラエティーに関するジェームズ・ギブスンの論文の摘要 261

「日本版への序」の終わりの部分

このような本は、生活を検討し、あらゆる人々がめいめい自分の織物を織りだしてゆく、生活の美しくも、すばらしい、そして多様な形を見出してゆく一つの途を示すものなのです。私は人類の運命に多大の関心をもっています。というのは、人間はあまりにしばしば表面しか見ておらず、自分自身について知ることがあまりにすくないからです。私が何か得るとすれば、それは人々が自分自身について何を知り得るかということであり、この本が日本語に訳されることをたいへんうれしく思っている次第です。

書評

アメリカの自文化中心主義の弊害を解消しようとする中で書かれ、プロセラミックス(近接対人空間学)を提唱している本だが、動物としての人間の在り方を含め、興味深い着想に富んでいる

△■ジャングルの子―幻のファユ族と育った日々■2017年10月12日 09:23

美しい著者が、復讐の応酬で絶滅寸前になっていた幻の民族をキリスト教者の愛が救うというストーリーを基調にしながら、ファユ族と育った日々こそ本物だったと語る変な本

ザビーネ キューグラー (著), Sabine Kuegler (原著), 松永 美穂 (翻訳), 河野 桃子 (翻訳)
単行本: 389ページ
出版社: 早川書房 (2006/05)

商品の説明


内容(「BOOK」データベースより)


インドネシアの西パプアに広かる世界有数の熱帯雨林。その緑深い奥地に石器時代以来変わらない「忘れ去られた民族」がいた…。1978年に発見されたこのファユ族の研究に乗り出したのは、言語学者であり宣教師であったキューグラー夫妻。そして、ジャングルへ移住した夫妻につれられ、新しい環境に目を輝かせていたのが、5歳になる次女、ザビーネである。やんちゃで生き物が大好きなザビーネにとって、ジャングルは冒険のかたまりだった。ファユ族の子どもたちにまじって遊びまわり、暖かい家族に守られ、ザビーネは満ち足りた少女時代を過ごす。しかし17歳になってスイスの寄宿学校に入ると一転、西洋世界に馴染めず、苦しむ日々が続く。自分の居場所はどこにあるのか?自分はドイツ人なのか、ファユ族なのか?幸せな少女時代の記憶とジャングルへの激しい郷愁を抱えたままザビーネは追い詰められていく。しかし、彼女には絶対に消えない希望があった―二つの文化の間で揺れ動く一人の女性が、自らの場所を見出していくまでを描いた、喪失と再生の物語。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)


キューグラー,ザビーネ
1972年ネパール生まれ。5歳のとき、言語学者で宣教師だったドイツ人の両親・姉・弟とともに西パプアのジャングルで生活を始める。17歳のときにスイスの寄宿学校へ入学。大学で経済を専攻したのち、ホテルとマーケットリサーチの分野で働く。現在は4人の子供とともにドイツ、ハンブルク近郊に住み、独自のメディア会社を経営している

松永/美穂
東京大学助手、フェリス女学院大学助教授を経て、早稲田大学教授

河野/桃子
早稲田大学大学院文学研究科修了。専攻はドイツ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

目次


プロローグ 7

第一部
わたしの物語 11
失われた谷 18
最初の出会い 28
ファユ族 47
今までとは違う生活 56
すべてが始まった場所 63
インドネシア、西パプア(イリアンジャヤ) 68
ファユ族の発見 74
石器時代への招待 91

第二部
ジャングルの一日 101
夜の訪問者 107
初めての戦争 121
生き物コレクション・その一 127
弓と矢 139
ジャングルの季節 145
死のスパイラル 153
外の世界からの便り 159
ジャングルの危険 163
ドリスとドリソ=ボサ 174
ナキレと女たちと愛情 176
ボートに乗って 187
わたしの兄・オーリ 199
コウモリの翼とイモ虫のグリル 202
ファユ族の言語 213
ターザンとジェーン 221
生き物コレクション・その二 226
マラリア、そしてそのほかの病気 232
許すことを学ぶ 240
ユーディット、大人になる 249
わたしの友達、ファイサ 255
ジャングルの時計 261
善い霊、悪い霊 267
決定的な戦争 270
時は過ぎる 276

第三部
「故郷」での休暇 283
ジャングルは呼んでいる 291
名前のない赤ちゃん 301
美しいもの、恐ろしいもの 306
ビサとベイサ 310
衰退 321
人間が一人でいるのはよくない 324
不倫、そしてそのほかの人生のもめごと 328
オーリが死んだ日 333
わたしの新しい部族 339
シャトー・ボー・セードル 343
孤独 369
もう一度初めから 376

エピローグ 380
謝辞 385
訳者あとがき 387

「エピローグ」より

ファユ族に対する支援は今日もなお続いている。これまでに、両親の属する組織であるYPPMが開発援助の大部分を引き受けてきた。特にママが作った学校は、若い世代が読み書きと計算、それにインドネシア語を学ぶ場として力が注がれている。法律によって、島の全住民が国の言語を使いこなすべく定められているのだ。

書評


美しい著者が、復讐の応酬で絶滅寸前になっていた幻の民族をキリスト教者の愛が救うというストーリーを基調にしながら、ファユ族と育った日々こそ本物だったと語る変な本

○■ブッシュマン、永遠に。―変容を迫られるアフリカの狩猟採集民■2017年09月15日 09:25

700万年間続いた人類の生活は、こんなにも充実した楽しい生活であったのかと思わせる描写から始まって「近代化」による変容を描くことに重点を置いた本書は、日本のブッシュマン研究者たちの紹介にもなっている



田中 二郎 (著)
単行本: 225ページ
出版社: 昭和堂; 初版 (2008/10/1)

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内容(「BOOK」データベースより)


歴史の生き証人が語る“地球最後の狩猟採集民”の過去・現在・未来。四〇年間にわたるブッシュマン研究の一端を記し、生態人類学研究から地域研究への転進を模索した。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)


田中/二郎
1941年京都生まれ。京都大学理学部卒業。東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。理学博士。京都大学霊長類研究所助教授、弘前大学人文学部教授、京都大学アフリカ地域研究センター、アジア・アフリカ地域研究研究科教授を歴任。京都大学名誉教授。専門は人類学、アフリカ地域研究。狩猟採集民ブッシュマン、ムブティ・ピグミー、遊牧民レンディーレ、ポコットなどを対象とした生態人類学的研究をおこなってきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

目次


はじめに i
第1章 コイサン人―ブッシュマンとコイコイ―の起源と歴史 1
コイサン人との出会い 2
コイサン人の名称 4
ブッシュマンの起源 9
牧畜民コイコイの分岐と拡散 11
コイサン人の衰退 16
第2章 狩猟採集の生活、文化と社会 21
カラハリの自然 22
セントラル・カラハリとカデ地域の人びと 27
日々の暮らし 31
狩猟 37
植物採集 44
生活を支える植物採集VS.狩猟の進化史的意義 48
移動生活と住居 54
平等主義と集団の流動性 61
第3章 ブッシュマン社会の変貌 65
ふたたびカデの地へ 66
調査の再開 71
変貌するカデ 76
馬を用いた集団狩猟 80
平等主義崩壊の兆し 84
第4章 定住地の整備 89
カデ小学校の開校 90
近代医療の導入 93
居住様式の変化 95
国政選挙への参加 100
コープ方式の売店ができた 105
飲酒と暴力 108
喧嘩と裁判 112
定住化がもたらす問題点 115
一九八七年の定住集落 117
調査項目の設定と各自の分担 122
第5章 長期共同調査の体制を整える 125
通年調査が可能となった 126
四人の新来者を迎え入れる 129
カラハリ族へのアプローチ 132
女性の視点によるブッシュマン研究 137
セントラル・リザーブの昨今 141
ナミビア側のブッシュマン開発計画 147
第6章 定住化と開発 153
定住化にともなう問題点再考 154
開発計画を考える 159
女性人類学断章 163
多岐にわたる昆虫の利用 168
ライオンに出くわしたコンケネ 173
第7章 故郷を追われる人びと 177
ついにそのときがきた――再移住 178
乳幼児の発達と育児 184
生態人類学から地域研究へ 187
ブッシュ生活への回帰 191
二つの死 197
最後の訪問 204
定住化社会の将来 210

あとがき 217
参考文献 221

160ページに収録された写真40の説明文


エランド・ダンス。初潮を迎えた少女は小屋のなかに寝かされ、そのまわりを数日間にわたって女たちが踊り、成人を祝う。アンテロープのなかでもお尻が丸々と大きくもっとも脂肪ののったエランドは、多産と豊穣のシンボルだとしてこの名前が付けられている(1971年10月)。

書評


700万年間続いた人類の生活は、こんなにも充実した楽しい生活であったのかと思わせる描写から始まって「近代化」による変容を描くことに重点を置いた本書は、日本のブッシュマン研究者たちの紹介にもなっている

○■ハイン 地の果ての祭典: 南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死■2017年09月12日 13:40

伝統文化の記憶を持つセルクナムの最後の人びとと交流し、記録を残し、生涯を通じてその文化の研究と紹介に取り組んだ著者が、残された記録やセルクナムの末裔たちの話などから儀式「ハイン」の様子を復元



アン チャップマン (著), Anne MacKaye Chapman (原著), 大川 豪司 (翻訳)
単行本: 277ページ
出版社: 新評論 (2017/4/24)

商品の説明


内容紹介


尖った円錐形の仮面、裸身を覆う大胆な模様、不思議なポーズ─。人類学者M・グシンデが1923年に撮影した一連の写真を初めて見る人は、古いSF映画の一場面か、またはボディペインティング・アートかと思うかもしれない。実はこれは、セルクナムという部族が脈々と続けてきた祭典「ハイン」の扮装のひとつなのだ。
セルクナム族と呼ばれる人々は、南米大陸の南端に点在するフエゴ諸島(ティエラ・デル・フエゴ)に住んでいた。そこは人間が定住した最も南の土地、「地の果て」だった。この地域には四つの異なる部族が暮らしていたが、セルクナムはそのなかでも最大のグループだった。 主島のフエゴ島とそこに住む人々の存在は、1520年、マゼランの世界周航によって初めて西洋社会に知られた。以後多くの者がこの地を訪れる。「海賊」ドレーク、キャプテン・クック、ダーウィンを乗せたビーグル号、貿易船やアザラシ猟の船、金鉱探索者、キリスト教の伝道師たち、牧場経営者たち─。島民との間に様々な軋轢が生まれ、やがて一九世紀末に至ってフエゴ島は生き地獄と化す。公然と大虐殺が行われ、伝道所に強制収容された人たちの間に伝染病が蔓延し、そこから生きて出た者はわずかだった。フエゴ島民は短期間のうちに絶滅への道を辿り、生粋のセルクナムは1999年に絶えた。
多くの西洋人の目に、フエゴ島民の生活は「野蛮」で「惨め」で、自分たちの「文化的生活」とはかけ離れたものと映った。酷寒の地で裸同然で暮らす人々のなかには、拉致され、見せ物にされた者も多くいた。だが、彼らは世界のどこにも似たものの無い独自の文化をもっていた。部外者にはほとんど明かされることのなかった祭典「ハイン」はその白眉だ。本書は、この驚くべき祭典の姿を、残された記録や往時を知る数少ない人たちの証言から丹念に描き出し、「消えた」部族の姿を生き生きと伝えている。(編集部)

内容(「BOOK」データベースより)
南米最南端のフエゴ諸島、そこは人間が定住した最南の地だった。白人の到来による迫害と伝染病の蔓延によって絶滅へと至った部族の社会、神話、そして部外者に秘匿されていた祭典の詳細をフエゴ諸島民の研究をライフワークにした人類学者が描く。20世紀初頭の貴重な写真約50点。

著者について


Anne CHAPMAN(1922-2010) アメリカの人類学者。生き残っていたわずかなセルクナムと親交をむすび、生涯を通じてフエゴ島民の社会・文化を研究した。

訳者 大川豪司 1961年生まれ。国際基督教大学卒。現在、英語の学習塾講師。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
チャップマン,アン
1922‐2010。アメリカ合衆国の人類学者。メキシコの国立人類学大学、ニューヨークのコロンビア大学、フランスのソルボンヌ大学で、レヴィ=ストロースなどに学ぶ。ホンジュラスで先住民社会(ヒカケ族、レンカ族)の研究を行い、1964年からフエゴ諸島にわずかに残っていたセルクナム族の末裔たちに交じってフィールドワークを始める。セルクナム族最後の女シャーマン、ロラ・キエプヒャの最晩年、生活を共にし、伝統文化について記録し、数多くの歌を録音した

大川/豪司
1961年東京生れ。国際基督教大学教養学部卒業。インドネシアのジャカルタで、在住日本人子弟を対象とした学習塾の講師をして四半世紀過ごす。帰国後は予備校などで受験英語を教えている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

目次


はじめに 14
I セルクナムの神話 19
・ハイン、この「偉大なる祭典」は何のためか 20
・母権制および女たちのハイン崩壊の神話 22
・最初のハインと父権制の起源の神話 28
・ハインの秘密 29
II セルクナムの社会 35
・かつての暮らし 36
・なぜ滅びたのか 44
・慣習としてのハイン 47
III 三人の中心人物 51
・テネネスク 53
・ハリミンク 59
・グシンデ 63
IV ハイン 83
・身体彩色の技巧―日常生活用とハインの「精霊」用 84
・女子の成人儀礼 89
・ハインの精霊たちと登場の場面 112
(ショールト/オルム 命を呼びもどす者/ハイラン 淫らで不快な道化師/ハシェとワクス 騒動を起こす者/ワアシュ・ヘウワン 目に見えぬ狐/サルペン 扇情的な場面:死と出産の場面:古代母権制の長、「月」の象徴としてのサルペン/クテルネン サルペンの赤ん坊/ハラハチェス 角のある道化師/マタン バレエダンサー/コシュメンク 寝とられ亭主/クラン ひどい女/ウレン 優雅ないたずら者/タヌ 謎の精霊)
・遊戯、踊りとその他の儀式 187
(タヌの主催になる若い恋人たちの遊戯/男と女が競う遊戯/クルプシュ、あるいはペンギンの踊り/いわゆる「ヘビ踊り」/男根の儀式/好天をもたらす儀式/アシカの物真似/ケワニクスの行進/女性限定(女たちが通過儀礼を風刺する/母親たちが息子の真似をして遊ぶ))
・最後の仮説―秘密は誰のものだったのか 229
V その後のこと 233
原注 248
文献一覧 259
献辞 262
図版出典一覧 263
解説 264
訳者あとがき 270
ハインの詠唱の曲目一覧 vi
索引 i

「本書をお読みいただく前に」の冒頭部分


  著者アン・チャップマンにはティエラ・デル・フエゴ(フエゴ諸島)の先住民に関する複数の著書があるが、本書はそのうちの一部族、セルクナム族の祭典ハインについて書かれたものだ。冒頭からこの祭典と背景にある神話の詳細な話に入っていき、わかりにくく感じられるかもしれないので、本書と一部重複する内容もあるが、ティエラ・デル・フエゴの風土、そこに生きたセルクナム族らの先住民、彼らと西洋人との接触などについて簡単に概説しておきたい。

「はじめに」の冒頭部分


  両親ともにセルクナムだった最後の者は一九九九年に亡くなったが(V章参照)、セルクナム族(オナ族という名でも知られる)の子孫は、まだティエラ・デル・フエゴのアルゼンチン領に住んでいる。彼らにとって先祖からの伝統は切っても切り離せないものだ。この本が彼らと、ハインの祭典の偉大なる文化的・芸術的創造性を認める人びとの役に立つことを願っている。

書評


伝統文化の記憶を持つセルクナムの最後の人びとと交流し、記録を残し、生涯を通じてその文化の研究と紹介に取り組んだ著者が、残された記録やセルクナムの末裔たちの話などから儀式「ハイン」の様子を復元

○■世界あやとり紀行―精霊の遊戯■2017年09月02日 22:09

自然発生的に世界各地で生まれたあやとりは、西洋文明の発達と普及に伴い消えていったという。あやとりという行為に伴う精神活動に、人が人であるためのヒントがあるのかもしれない。



シシドユキオ (著), 野口廣 (著), マーク・A・シャーマン (著), 建築・都市ワークショップ (編集), 七字由宇 (イラスト)
単行本(ソフトカバー): 69ページ
出版社: INAXo (2006/12/15)

商品の説明


内容(「BOOK」データベースより)


ここに一本の紐があります。結んで輪をつくって、手にかける。指で取ったり、外したり、くぐらせたり。ダンスをするかのように、紐を動かしていく。最後にぱっと開くと、思いもよらない形になります。あやとりは世界中で楽しまれてきました。風土を反映した多様なテーマや、複雑な形を見ると、人びとの飽くなき創造力を感じずにはいられません。けれども、ひとたび手を離すと跡形もなく消えてしまう、儚い伝承でもあるのです。実際に取ることによって残り、伝わるあやとり。紐を手に、古からの叡智を体感してみましょう。

内容(「MARC」データベースより)


紐を携えて世界を巡る、あやとりの旅。オセアニアから極北圏、北南アメリカ、アフリカ、アジアまでを訪ね、その土地ならではの様々なあやとりの形を紹介。紐を手に、古からの叡智を体感してみましょう。

著者について


シシドユキオ Yukio SHISHIDO
あやとり研究者、国際あやとり協会会員
1952年、京都府生まれ。高校卒業後、書店業に従事しながらあやとりの研究を始める。「ナウルあやとり問題」の解決や、ネイティブ・アメリカンの世界に受け入れられた創作あやとりなどにより、海外の愛好家から高い評価を得ている。論文「The Reconstruction of the Remaining Unsolved Nauruan String Figures」(『BISFA』3:108-130)ほか。

野口廣 Hiroshi NOGUCHI
早稲田大学名誉教授、国際あやとり協会編集顧問
1925年、東京生まれ。理学博士。東北大学理学部数学科卒業後、ミシガン大学に留学。イリノイ大学客員教授、早稲田大学教授を経て同大学名誉教授となる。78年、日本あやとり協会を設立。93年より2004年まで(財)数学オリンピック財団理事長を務め、現在、情報オリンピック日本委員会専務理事。著書、専門の学術書のほかに、『あやとり』正、続、続々(河出書房新社)、『キキとララのかんたんあやとり』(サンリオ)ほか。

マーク・A・シャーマン Mark A. SHERMAN
分子生物学者、国際あやとり協会会長。
1960年、アメリカ・オハイオ州生まれ。86年、南カリフォルニア大学薬学部バイオ薬化学博士課程修了。カリフォルニア大学でのポストドクター(分子生物学・分子遺伝学)を経て、89年からシティ・オブ・ホープ・ベックマン研究所員。現在は分子モデリングを研究。著著『Kwakiutl String Figures 』(UniversityofWashington Press)ほか。

目次

巻頭カラーグラビア

もくじ/あやとり分布図 10-11

オセアニア 12
天の川 ◇パプアニューギニア 12-15
こぶた ◇ローヤルティ諸島 16
人食い鬼 ◇ソロモン諸島 17
カワソリの罠 ◇パプアニューギニア ☆やってみよう! 18-19

パプアニューギニアのあやとり 20-21

ウミヘビ ◇トレス海峡諸島のマレー島 22
赤ん坊が生まれる ◇オーストラリア・イッルカラ 23
たつまき ◇オーストラリア・ヨーク岬 24

アボリジニのあやとり 25

サンゴ ◇ヤップ島 26
ひょうたん ◇ハワイ 27
エイゲメアング ◇ナウル 28

ナウルのあやとり 29

伝説の精霊 クハとラチ ◇ラパヌイ(イースター島) 30

ラパヌイのあやとり 31

マウイ四兄弟 ◇ニュージーランド 32

マオリのあやとり 33

コラム◎文字のない社会とあやとり 33

極北圏 34
耳の大きな犬 ◇カナダ・コパーマイン地方 34-35
山並み または オイルランプの炎 36
山間の月 37
白鳥 38

極北圏のあやとり 39

北アメリカ 40
ナバホの蝶 ◇アメリカ ☆やってみよう! 40-43

ナバホのあやとり 43

テントの幕 または ナバホの敷物 ◇アメリカ 44
赤ん坊占い ◇アメリカ ☆やってみよう! 45-47

南アメリカ 48
火山 ◇アルゼンチン 48
コウモリの群れ ◇ブラジル 49

ブラジルのあやとり 50
ガイアナのあやとり 50
ペルーのあやとり 51

アフリカ 52
木琴 ◇モザンビーク 52
集会場 ◇カメルーン、赤道ギニア、ガボン 53
鳥の巣 ◇スーダン 54

エチオピアのあやとり 55

アジア 56
インドのあやとり 56
中国のあやとり 57
お守り ◇日本 ☆やってみよう! 58-60

あやとりとともに 野口廣 61
ISFA、国際あやとり協会の活動と成果 マーク・A・シャーマン 67

参考文献 71

執筆者紹介 72

書評


自然発生的に世界各地で生まれたあやとりは、西洋文明の発達と普及に伴い消えていったという。あやとりという行為に伴う精神活動に、人が人であるためのヒントがあるのかもしれない。

○■日本の遊戯■2017年04月30日 20:38

鷹狩、蹴鞠、流鏑馬から、将棋、なぞかけ、鬼ごっこ、ひな祭り、端午の節句まで、古来からの日本の遊戯を収集した字典。羽田元首相の実家が経営する書店から復刻出版。



小高 吉三郎 (著)
-: 716ページ
出版社: 羽田書店; 3版 (1950)

■目次
序に代へて
凡例
日本の遊戯

「あ」の部 一
あがりこさがりこ/あげだま/あげばね/あしおし/あしごき/あしずまふ/あておに/あないち/あなおに/あふぎあはせ/あふぎきり/あぶりだし/あめんぼうつり/あやとり/あんま

「い」の部 一七
いかご/いかのぼり/いくさあそび/いしあわせ/いしうち/いしくづし/いしけん/いしつみ/いしなげ/いしなご/いしはじき/いしひろひ/いたおとし/いたちごっこ/いてふうち/いぬおふもの/いもむしころころ/いろはかるた/いわしこい/いんぢ/いんぢうち

「う」の部 四七
うさぎうさぎ/うしごと/うしろんぼ/うたあわせ/うたがひ/うたがるた/うちごま/うつむきさい/うでおし/うでしばり/うですまふ/うでひき/うなぎのせのぼり/うなりごま/うまくらべ/うまごと/うんすんかるた

「お」の部 七六
おこんめ/おしくらまんぞ/おつきさまいくつ/おてだまあそび/おででこすごろく/おてまり/おてらのみづくみ/おでんや/おとしあひ/おにあそび/おにご/おにごっこ/おにごと/おにさだめ/おにのるす/おにわたし/おのせ/おはなごま/おひはご/おひばね/おほさかおんごく/おみなへしあはせ/おみこし/おむく/おやとりことり/おやまのおやまのおこんこさん/おりがみ/おリすゑ

「か」の部 九八
かうあはせ/かうもりかうもり/かがみおに/かくれおに/かくれかしこ/かくれかんしやう/かくれくじ/かくれこ/かくればち/かけくら/かけくらべ/かけこ/かけつこ/かげふみおに/かげゑ/かごめかごめ/かごゆり/かさがけ/かざくるま/かずとり/かたおし/かたくび/かたぐま/かたぐるま/かづけおに/かなづちとび/かなどうごま/かなわなげ/なはづとび/かひあはせ/かひおほひ/かべはなれ/かへるつり/かへるのとむらひ/かまおに/かみてつぱう/かみなりあそび/かみふき/かゆづゑ/からかひおに/からごま/からすだこ/かりうち/かるた/てんしやうかるた/かんころ/がんころし

「き」の部 一五一
きうぢやう/きくあはせ/きそひうま/ぎちやう/きづ/きのぼり/ぎつかんこ/ぎつちやう/きつねけん/きつねのおまど/きはちまはし/きんきう

「く」の部 一六四
くぎごま/くさあはせ/くひうち/くびつぴき/くびひき/くらべうま/くるまがへり/くるみうち/くわんいすごろく

「け」の部 一九二
けいば/げたかくし/げへ/けまり/けん/けんけん/けんずまふ/けんだま

「こ」の部 一九九
ごいしあそび/ここはどこのほそみち/ことりあはせ/ことりおに/ことろことろ/こばよ/こぶしはづし/こふやしおに/こほりすべり/こま/こまつひき/ごみかくし/こめつき/こゆみ/ごんごんごま

「さ」の部 二二六
ざうりかくし/さぎあし/さぎずまふ/さざえうち/ざとうすまふ/さるがへり/さるわり

「し」の部 二二九
しうきく/しうせん/しだら/しつぺい/しなだま/じふろくむさし/しゃうぎ/しやうぎあそび/しやうぎたふし/じやうどすごろく/しやうぶたたき/しやうぶのねあわせ/しやうやけん/じやくぐり/しやちほこだち/しやぼんだま/じやんけん/じゆんくわんぎ

「す」の部 三〇九
ずいずいずっころばし/すぎたち/すごろく/すずめこゆみ/すねおし/すまふ/すわりすまふ/すゐじあうしよぐわ

「せ」の部 三五九
ぜにごま/せんそやまんぞ

「た」の部 三六四
たかあし/たかがり/たがまはし/だきう/たきものあはせ/たくあんおし/たけうま/たけがへし/たこ/たこあげ/たすけおに/たなばたまつり/だま/たまくり/たまりおに/たるにんぎやう/だるまおとし/だんき/たんごのせつく

「ち」の部 四六二
ちうがへり/ぢむしつり/ちやうま/ちんちんもがもが/ぢんとり

「つ」の部 四六五
つくばね/つけぎひき/つなぎおに/つなひき/つばなつばな/つぼうち/つりぐひ

「て」の部 四七八
てぐるま/てしばり/でたりひつこんだり/てつどうごま/てぬぐひひき/てのひらおし/てのひらかへし/てまりあそび/てるてるばうず/てんぐはいかい/でんぐりかへり/てんぐるま/てんしやうかるた/てんてんてんぢく

「と」の部 四九三
とうせんきよう/どうどうめぐり/とうはちけん/とびしやうぎ/とらけん/とりあはせ/とりさし/とんぼがへり/とんびだこ

「な」の部 五一五
なぞ/なつご/ななつご/なはとび/なんこ

「に」の部 五二五
にぎりひらき/にぎりひらきうち/につくび/にらみくら/にんぎやうだる

「ぬ」の部 五二九
ぬすびとかくし/ぬすみしやうぎ

「ね」の部 五三〇
ねことねずみ/ねずみごつこ/ねずみとり/ねつき/ねつくひ/ねつくひうち/ねんが/ねんがら

「の」の部 五三五
のりゆみ

「は」の部 五四四
ばいごま/ばいまはし/はいろん/はうびき/はかたごま/はごいた/かさみしやうぎ/はじきいし/はじきしやうぎ/はしごおに/はしらとつつき/はしらまはり/はしらつら/はちまきとり/はなかるた/はなはな/はなび/はね/はねつき/はまなげ/はまゆみ/はるごま/はんじもの

「ひ」の部 五七八
ひひなあそび/ひひなまつり/ひきおとし/ひつぱりつこ/ひととり/ひとやどおに/ひまはし/びやぼん

「ふ」の部 六〇〇
ふくわらひ/ぶしやうごま/ふたやどおに/ふたりおに/ふなくらべ/ぶらんこ/ふりしやうぎ/ぶりぶり

「へ」の部 六〇九
ぺつたんこ/へんつき

「ほ」の部 六一二
ぼうおし/ぼうぬきうち/ぼうねぢ/ぼうひき/ほたるかり/ほんけん/ぼんぼん

「ま」の部 六二〇
まくらひき/まぜけん/まつばきり/まはりのこぼとけ/まはりしやうぎ/まひまひつぶり/ままこだて/まりあそび/まりうち/まりつき/まるおに/まるわたり

「み」の部 六三三
みづいはひ/みづじ/みづてつぱう

「む」の部 六三七
むかうのおばさん/むさし/むしけん/むしゑり/むちごま/むつむさし

「め」の部 六四二
めかくしおに/めくらおに/めくらべ/めじろおし/めなしどち/めんうち/めんがた/めんこ/めんないちどり

「も」の部 六四六
もじくさり/もじゑ/もんどり

「や」の部 六五四
やうきゆう/やさすがり/やつこだこ/やどなしおに/やぶさめ/やまぶしあそび

「ゆ」の部 六七二
ゆきあそび/ゆびきり/ゆびくぐり/ゆびずまふ/ゆびまはし

「よ」の部 六七九
よどのかはせ/ようよう

「ら」の部 六八一
らかんまはし/らんご

「り」の部 六八四
りうご

「わ」の部 六八六
わまはし

「ゐ」の部 六八七
ゐご/ゐんふたぎ

■書評
鷹狩、蹴鞠、流鏑馬から、将棋、なぞかけ、鬼ごっこ、ひな祭り、端午の節句まで、古来からの日本の遊戯を収集した字典。羽田元首相の実家が経営する書店から復刻出版。

○■サンカと説教強盗〔増補版〕■2017年01月15日 14:18

大正15年から昭和4年にかけて60件を超える窃盗・強盗事件を起こして帝都を騒がせた、サンカ出身とも言われる説教強盗。その逮捕までの経緯を推理する前半部分は面白い。


礫川 全次 (著)
単行本: 255ページ
出版社: 批評社; 増補版 (1994/12)

■商品の説明
内容紹介
昭和初期、帝都西北部の新興住宅地をねらう強盗が跋扈した。説教強盗妻木松吉。その兇悪な手口から捜査当局は説教サンカ説を流す。後のサンカ小説家三角寛らも関わった事件の真相を追う。
内容(「BOOK」データベースより)
昭和初期、東京に「説教強盗」が現れた。その名は妻木松吉。その兇悪な手口から、警察は犯人サンカ説を流した。捜査当局に対抗し犯人を追う、後のサンカ小説家、新聞記者三角寛。大戦を前にして物情騒然たる帝都の、富裕な新興住宅地西北地区にねらいを定めた一世説教強盗の、謎に包まれた出自と捕まるまでの犯行経路を追う。

内容(「MARC」データベースより)
大正末期から昭和初期に「帝都」を震憾させた説教強盗。事件の背後に見え隠れするサンカ。事件の全貌を克明に調べ上げ、実像と虚像が同居し、現像までが交錯するサンカと説教強盗の真相に肉迫する。
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
礫川/全次
1949年生まれ、在野史家。フィールドは、近現代史、犯罪・特殊民俗学。歴史民俗学研究会代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
はじめに 3
第一章 説教強盗とは 13
泣く子も黙る説教強盗 14
前代未聞六五件の強盗 17
用意周到な犯行計画 24
強要・暴行・説教 25
どんな犬でもひとにらみ 30
意表をついた逃走経路 31

第二章 説教強盗事件の地理 35
事件の地理的背景 36
旧東京から大東京へ 37
関東大震災の影響 40
城西・城北への人口移動 42
説教強盗の出没範囲 44
西巣鴨町字向原 47
説教強盗の地理感覚 52

第三章 翻弄された捜査陣 53
小沼米店における失態 54
高田署前における失態 56
旧態依然の捜査体制 58
魔の時代、昭和初年 60
捜査体制の一新 62
小沼米店の指紋をめぐって 63
鮮明な四指の指紋 65

第四章 説教強盗捕縛さる 67
前科一犯妻木松吉 68
不自然な経緯 71
捜査当局の秘密 73
左官「屋久米吉」 75
空前の大ニュース 76

第五章 新聞記者三角寛の挑戦 83
超人的な取材活動 84
新聞と警察 86
十二月三〇日記事 88
三角寛、犯人をキャッチ 91
追いつめられた捜査当局 93

第六章 説教強盗「山窩」説 99
俗説の発生源 100
黒装束五人組 103
特殊な侵入盗 105
薄弱な根拠 107
不幸な生い立ち 108
義父と松吉 111

第七章 「山窩」の虚像と実像 113
近代「山窩」像について 114
警察用語としての「山窩」 116
特殊な侵入盗と忍者 117
凶悪犯グループと忍者 119
サンカ集団と忍者 122
忍者・山窩・警察 123
虚像としての「山窩」 125

第八章 「サンカ」とは何か 127
サンカの定義 128
サンカをめぐる難問 130
サンカの語源 131
サンカの源流 134
サンカと下層生活者 136
組織性と犯罪性 140

第九章 サンカの漂泊性と被差別性 145
宮本常一のサンカ観 146
サンカと山中の住民 148
サンカの被差別性 150
番非人とサンカ 152
番非人とサンカの共通性 156

第十章 三角サンカ学の意味 159
新聞記者から小説家へ 160
山窩小説の意味 162
サンカ学研究の動機 164
三角サンカ学の特徴 165
最後のサンカ集団 167
説教・口説き・物乞い 169

補章 サンカ再論 173
資料編①~⑧ 189
あとがき 254

■「はじめに」
  サンカとは何か。
  ある時は古代からの伝承を伝える一群の人々であり、ある時は山野を疾駆する超人的パワーの持ち主である。またある時は警察を出し抜く特殊な犯罪集団である。
  しかし、結局の所、これらサンカ像は、現実に押しつぶされた現代人がサンカに仮託した「虚像」に過ぎないのではないか。
  人々は自らの渇望に基づいて、勝手なサンカ像を創り出しているに過ぎないのではないか。サンカが既に過去の存在であることを十分知りながら。
  従来のサンカ論にあきたらなかった私は、三角寛がサンカと関わることになった説教強盗事件について詳しく調べなおしてみようと思いたった。この事件がなければ、三角のサンカ小説もなかっただろうし、サンカの存在が広く知られることもなかっただろうからである。
  ところが、この説教強盗事件というのは実に妙な事件であり、調べれば調べるほど不可解な点が出てきた(謀略事件としか思えない一面がある)。しかも、犯人がサンカ出身というのも単なる「ウワサ」に過ぎず、確たる証拠は何もなかったのである。
  本書は、サンカ論を目指したものではあったが、この不可解な事件にややページを割きすぎたかもしれない。しかし、この事件を詳しく追ってみたことによって、従来のサンカ像とは違う「現実的」なサンカ像が見えてきた気がする。もっとも本書で示し得たサンカ像はまだ極めて未成熟なものであり、今後さらに「現実」に追っていかなくてはならないと感じている者である。
  読賢の御批判を期待したい。
〔付記〕本増補版は、初版に補章及び資料編を加えたものである。初版にあった誤字等は訂正し、数か所で表現を改めたが、内容の改訂はおこなわなかった。「まえがき」、「あとがき」も元のままである。右付記する(一九九四・八・二七)。

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サンカと説教強盗―闇と漂泊の民俗史

■書評
大正15年から昭和4年にかけて60件を超える窃盗・強盗事件を起こして帝都を騒がせた、サンカ出身とも言われる説教強盗。その逮捕までの経緯を推理する前半部分は面白い。

○■世界の狩猟民――その豊穣な生活文化■2016年12月17日 20:44

世界の狩猟採集民を集めた待望の一冊、ついに刊行?


Carleton Stevens Coon (原著), カールトン・スティーヴンズ クーン (翻訳), 平野 温美 (翻訳), 鳴島 史之 (翻訳)
単行本: 471ページ
出版社: 法政大学出版局 (2008/02)

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
1万年前、人間はすべて狩猟民だった。狩猟民とは農業を知らず、家畜を飼わない民のことである。著者は世界中の主だった狩猟採集民族を、民族ごとではなく、基本装具、狩りや漁のスタイル、結婚や神話、儀礼、シャーマンなどテーマごとに考察する。アメリカ先住民、アボリジニ、アイヌ、イヌイット、サンといった人々が、仲間と助け合い、豊かな知恵をもって驚くべき生活の技をどのように編み出し、伝えていったのか。人が集まって生きる意味を、あらためて私たちに問いかける書。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
クーン,カールトン・スティーヴンズ
1904年6月23日米国マサチューセッツ州ウエイクフィールド生まれの人類学者。28年ハーバード大学でPh.D.取得。48年まで同大学で教鞭をとった後、ペンシルバニア大学に移り、退職する63年までペンシルバニア大博物館館長を務める。現役時代も退職後も、考古学、民族学の分野の根っからのフィールドワーカーで、モロッコ、アルバニア、エチオピア、イラン、アフガニスタン、シリア、ティエラ・デル・フエゴ、シエラ・レオネ、チャド、リビアなどへ出かけた。研究業績に対し1951年バイキング自然人類学賞、55年米国科学アカデミー選出など、多数の栄誉が授与された。考古学、自然人類学、民族学に大きく貢献し、その驚くべき広範な学識の成果を、書籍はもとより博物館展示やテレビのトークショーを通して専門家や一般読者に伝えた。自伝三部作は未完。1981年6月3日マサチューセッツ州ウエストグロスターで死去(76歳)

平野/温美
広島県尾道市生まれ。東京教育大学(現筑波大学)大学院文学研究科修士課程修了。アメリカ文学専攻。現在、北見工業大学教授

鳴島/史之
東京都立川市生まれ。東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程修了。エリザベス朝演劇専攻。現在、北見工業大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
まえがき ix
第1章 世界の現存する狩猟民――その概要 1
第2章 狩猟民の基本装具 17
第3章 水陸の移動と運搬 63
第4章 食料探索――狩猟とわな猟 81
第5章 大型動物の狩り 125
第6章 漁 151
第7章 採取 173
第8章 食物と麻薬 197
第9章 狩猟民の社会組織――地縁、バンド、親族 213
第10章 結婚 231
第11章 政治と争い 267
第12章 専門分化、富と交易 303
第13章 神、精霊、神話と物語 321
第14章 誕生、成人、死における通過儀礼 351
第15章 強化儀礼と周期的な祭事 389
第16章 シャーマンと治療 423
第17章 結論――狩猟民から何を学ぶか 443

訳者あとがき 421
図・地図一覧(17)
参考文献(10)
索引(1)

■「まえがき」の冒頭部分
  わたしは、この世界で狩猟民や採集民として現代まで永らえた人々についての資料を、ほぼ半世紀間読んできました。そうした各地を、たとえ短期間でも訪れたことは幸運でした。今日二五万人弱の狩猟民が現存します。これは人類の〇・〇〇三パーセントにすぎません。一万年前の狩猟民はおよそ一〇〇〇万人、世界人口の一〇〇パーセントでした。
  一万年前、人は皆狩猟民でした。読者のみなさんの先祖も含まれます。一万年はおよそ四〇〇世代にわたる期間ですが、この短さでは目立った遺伝的変化は起こりません。人間行動が他の動物行動と同じく、最終的に遺伝された能力(学ぶ能力も含む)に依存する限り、わたしたちの持って生まれた傾向は大して変化するはずはありません。祖先とわたしたちは同じ人間なのです。
  「狩猟民の生き方が判明するなら、もし、わたしたちが一万年前の生活を始めることになった倍に一体何ができるか、それを知る参考になるだろう」。
  これはSFでも、気まぐれな空想でもなく、専門家としてのまじめな結論なのです。いつ頃からか、わたしたちは生物への放射能の蓄積効果、酸素浪費による回復不可能な大気圏の希薄化、その他の地球危機に、険しい顔をするようになりましたが、それを長々と論じる必要はないでしょう。誰もが知るこれら恐ろしい事実を説明する専門家は別にいます。わたしは同じく重要な、あることについて述べます。それは破壊の連鎖のすべてを解く鍵、すなわち人間自身についてであります。

■書評
世界の狩猟採集民を集めた待望の一冊、ついに刊行?

△■混浴宣言■2016年11月21日 20:51

混浴を存続させてきたのは女性たちだった?


八岩 まどか (著)
単行本: 254ページ
出版社: 小学館 (2001/11)

■商品の説明
内容紹介
八岩まどか氏は、日本と世界の温泉をつぶさに回って執筆を続け、混浴の文化をこよなく愛する女性温泉ジャーナリスト。もともと混浴が普通だった日本の温泉には100年以上にわたって、野蛮な風俗として退けられてきた歴史がある。ついに平成5年には「混浴をさせてはならない」と法律で明文化され、混浴禁止の波がひなびた混浴の温泉地にも押し寄せてきた。しかし、その一方で、若い人たちを中心にインターネットなどを通じて交流を深め、新しい意識で混浴を楽しむケースも増えている。めまぐるしい今の時代、束の間の非日常を体験できる混浴温泉は、ますます大きな意味を持ってきている。過去の歴史で、混浴禁止の令をうち破ってきたのは、いつも女性だった。今回は八岩氏が、新しいアプローチで混浴を解放する。

出版社からのコメント
混浴の歴史、文化から新しい混浴の潮流、そして海外の混浴事情まで。女性温泉ジャーナリストが混浴の全貌に迫り、その素晴らしさを描く。平成5年に人知れず禁止令が出た混浴温泉を蘇らせることはできるか?

内容(「BOOK」データベースより)
消えつつある混浴は、日本人のふれあいの原点。女性混浴愛好家が、湯気の向こうにご案内。

内容(「MARC」データベースより)
その昔、銭湯も温泉も混浴だった。歴史のなかで幾度となく禁止されても、混浴を望んだのはいつも女たちだった…。消えつつある混浴は日本人のふれあいの原点。女性混浴愛好家が、湯気の向こうの「裸のつきあい」にご案内。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
八岩/まどか
1955年生まれ。温泉の歴史、文化、民俗に興味を覚えて執筆活動を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
混浴宣言 8
第一章 現代混浴事情 11
混浴温泉女二人旅/水着は緊張を押しつける/挑発する女、見られる男/大自然の混浴体験はクセになる

第二章 混浴はなぜ禁止なのか 39
自然のままに混浴していた温泉/突然の銭湯混浴禁止令/男女七歳にして湯を同じうせず/新しい風はいつも女性から吹いてくる/身分によって湯を分ける

第三章 聖なる湯と性なる湯 73
艶めかしい湯女たち/女にとっての色ごと/女たちの祭り

第四章 文明開化が混浴を変えた 103
日本人には羞恥心がない/裸体が見えてはならない/ノスタルジーとしての混浴/戦争のなかで

第五章 混浴が楽しくなくなった理由 147
どうしても混浴は禁止だ/上司との混浴はイヤ/浴室がプライベート空間になった

第六章 混浴の再発見 171
裸の解放感/若い女性たちが混浴に目覚めた/癒されたい

第七章 ドイツ混浴事情 195
温泉は社交場/雪のなかで泳ぐのがドイツ流?/水着を脱ぎ捨てて/露骨な視線はマナー違反/温泉は裸の舞台/温泉は劇場だ/お国柄も見えて/まなざしの交換

第八章 新しい混浴の波 229
混浴は非日常体験/心を遊ばせる

あとがき 246
混浴温泉リスト 248
参考文献 254

■書評
混浴を存続させてきたのは女性たちだった?

○■オオカミはなぜ消えたか―日本人と獣の話■2016年09月16日 21:02

『間引きと水子』の著者である民俗学者が探る日本人と獣の関係


千葉 徳爾 (著)
単行本: 279ページ
出版社: 新人物往来社 (1995/04)

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
人と獣たちは、狐のように信仰の対象となったり、熊や猪のように獲物とされながらも永く共存してきた。オオカミが日本から消えたことを通して、現代人の生活を考える。

著者について
千葉 徳爾(ちば とくじ)
千葉県生まれ、東京高等師範学校を卒業し、愛知大学、筑波大学、明治大学の教授や、日本民族学会代表理事を歴任。日本地理学会名誉会員であった。柳田國男門下生であった。
人と動物の交渉史、山村文化などを研究し、「狩猟伝承研究」五巻にまとめた。2001年11月に、冠不全のため85歳で死去した。

■目次
第一章 日本人と野獣たち 7
近代日本の絶滅哺乳類/白色鳥獣出現の意義/人獣交渉史としての肉食の問題/記述の方針

第二章 日本人の野獣観 20
「美女と野獣」譚の一例/人獣交渉の一こま/異類婚姻譚の恐怖/山中異界観の形成/近世本草書にみる羚羊/『和界三才図会』の典拠/倒叙法と生態理論/野獣とは何か/野獣の分類/猫の国に行った人の話/近世日本の人狼交渉/ニホンオオカミノ斜陽化と滅亡/狂犬病と山犬・里犬/鹿の捕獲法とその目的/猪鹿数の減少と理由/狐・狸と日本人の思考/狸の生態と新興との間/多面的な人獣交渉

第三章 東日本のけものたち―その生態的環境― 74
野獣の種類別か人間の時代別か/『原始謾筆風土年表』が語る近世の下北/野獣増減の自然条件/熊と人間の交渉形態/北海道開拓と羆/アザラシとトド/羚羊狩から月の輪熊へ/マタギの巻物は飾物なのか/熊胆ブームのあだ花

第四章 西日本のけものたち―歴史的視点から― 111
西日本の熊と人との交渉/恐れながらも熊を捕る理由/熊への畏敬/西日本の山地は猪熊の世界/和紙生産地の鹿の被害/東西にみる猿の禁忌/野獣を殺して浄土に送る者/生類を憐れむというのはどういうことか/西日本の諏訪の文の普及/千匹塚という鳥獣供養法/供養儀礼を弘めたのは者は誰だろう

第五章 日本人にとってキツネとは何か 146
蝦夷の狐と本土の狐/狡猾は美徳ではなかったか/稲荷社信仰の御利益/大狐侍と家の繁栄/憑物もちの迷信/飯綱狐というものの話

第六章 日本オオカミはどこへ 166
北海道の狼たち―群集生活の悲劇/狼群の捕獲から滅亡へ/近世の日記にみる狼の盛衰/狼の被害者数とその分布/金沢近郊の野獣害記録/狼はどうだったのか/狼狩猟隊の日仏比較/金沢近郊の狼捕獲状況/狼犬混血のもう一つの結果?

第七章 鹿・猪・豚 195
日本列島の猪・鹿分布/祖母・傾山系の起伏と動物環境/もしも日本列島に人が住まなかったら/野獣捕獲頭数からみた神宮宮城林/猪・鹿捕獲と棲息量/伊勢地方の野獣捕獲量の近況/近世日本列島の狩猟圧/近世の大名狩猟とその目的/狩場の設定と農民生活/大名狩の伝統と目的/富士の巻狩が意味したもの/富士の巻狩の成果とは何か/猪から豚へ―南西諸島の人獣交渉史/ぶたは日本語である/ぶたという言葉の語源/南西諸島の野猪と人/猟犬とそのありかた

第八章 人とけものとの交わり 256
人とけものの間柄/人獣交渉史から見えてくるもの/人間と野獣とはなぜ同じ生きものか/狩猟者の用いる内蔵呼称/野獣と人との生命の類似性/臓器に名前をつける理由/終わりにあたって

あとがき

■「あとがき」の終わりの部分
  それにしても、ローマ人たちがコロセウムの中で人と野獣、人と人とが殺戮しあう場面を一つのエンターテインメントとして眺めていた心理は、われわれ園芸的農耕に早々と逃避(と彼等はいうにちがいない)して、死と対決闘争する人生を味わおうとしなかった社会に生きる者には、到底理解しがたいという気がする。これは野獣の上に奴隷を、奴隷の上に市民をという階級づけを久しく当然とみなして来た社会制度と不可分なものであろう。だが、それらを論証するには、やはりもう少し時間をかけて資料を集めなくてはなるまい。早まって誤解してはならないと思う。だからやはり、初めの計画のように、この書物に述べるのはこれだけにして、あとは別稿にまつことにしよう。それがなんとなく不満ではあるが結論となった次第である。
  したがって、いつか欧亜各地の人獣交渉の姿が、より詳しく知られたならば、もう一冊東西両洋の人と野獣とのかかわりかたを、著者の視点から考察して、気づいたことを書いてみたいものだと念願している。ただし、それまでの余命があるならば、という条件づきの話だが。
  最後に多大の配慮をいただいた新人物往来社編集部の酒井直行氏に厚く御礼申上げる。
一九九四年の大晦日を明日に控えて

■書評
『間引きと水子』の著者である民俗学者が探る日本人と獣の関係