独自の視点で本を選んで紹介しています。

aroha.asablo.jp/内をGoogle.comで検索します


「Amazon.co.jpアソシエイト」

○■ハイン 地の果ての祭典: 南米フエゴ諸島先住民セルクナムの生と死■2017年09月12日 13:40

伝統文化の記憶を持つセルクナムの最後の人びとと交流し、記録を残し、生涯を通じてその文化の研究と紹介に取り組んだ著者が、残された記録やセルクナムの末裔たちの話などから儀式「ハイン」の様子を復元



アン チャップマン (著), Anne MacKaye Chapman (原著), 大川 豪司 (翻訳)
単行本: 277ページ
出版社: 新評論 (2017/4/24)

商品の説明


内容紹介


尖った円錐形の仮面、裸身を覆う大胆な模様、不思議なポーズ─。人類学者M・グシンデが1923年に撮影した一連の写真を初めて見る人は、古いSF映画の一場面か、またはボディペインティング・アートかと思うかもしれない。実はこれは、セルクナムという部族が脈々と続けてきた祭典「ハイン」の扮装のひとつなのだ。
セルクナム族と呼ばれる人々は、南米大陸の南端に点在するフエゴ諸島(ティエラ・デル・フエゴ)に住んでいた。そこは人間が定住した最も南の土地、「地の果て」だった。この地域には四つの異なる部族が暮らしていたが、セルクナムはそのなかでも最大のグループだった。 主島のフエゴ島とそこに住む人々の存在は、1520年、マゼランの世界周航によって初めて西洋社会に知られた。以後多くの者がこの地を訪れる。「海賊」ドレーク、キャプテン・クック、ダーウィンを乗せたビーグル号、貿易船やアザラシ猟の船、金鉱探索者、キリスト教の伝道師たち、牧場経営者たち─。島民との間に様々な軋轢が生まれ、やがて一九世紀末に至ってフエゴ島は生き地獄と化す。公然と大虐殺が行われ、伝道所に強制収容された人たちの間に伝染病が蔓延し、そこから生きて出た者はわずかだった。フエゴ島民は短期間のうちに絶滅への道を辿り、生粋のセルクナムは1999年に絶えた。
多くの西洋人の目に、フエゴ島民の生活は「野蛮」で「惨め」で、自分たちの「文化的生活」とはかけ離れたものと映った。酷寒の地で裸同然で暮らす人々のなかには、拉致され、見せ物にされた者も多くいた。だが、彼らは世界のどこにも似たものの無い独自の文化をもっていた。部外者にはほとんど明かされることのなかった祭典「ハイン」はその白眉だ。本書は、この驚くべき祭典の姿を、残された記録や往時を知る数少ない人たちの証言から丹念に描き出し、「消えた」部族の姿を生き生きと伝えている。(編集部)

内容(「BOOK」データベースより)
南米最南端のフエゴ諸島、そこは人間が定住した最南の地だった。白人の到来による迫害と伝染病の蔓延によって絶滅へと至った部族の社会、神話、そして部外者に秘匿されていた祭典の詳細をフエゴ諸島民の研究をライフワークにした人類学者が描く。20世紀初頭の貴重な写真約50点。

著者について


Anne CHAPMAN(1922-2010) アメリカの人類学者。生き残っていたわずかなセルクナムと親交をむすび、生涯を通じてフエゴ島民の社会・文化を研究した。

訳者 大川豪司 1961年生まれ。国際基督教大学卒。現在、英語の学習塾講師。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
チャップマン,アン
1922‐2010。アメリカ合衆国の人類学者。メキシコの国立人類学大学、ニューヨークのコロンビア大学、フランスのソルボンヌ大学で、レヴィ=ストロースなどに学ぶ。ホンジュラスで先住民社会(ヒカケ族、レンカ族)の研究を行い、1964年からフエゴ諸島にわずかに残っていたセルクナム族の末裔たちに交じってフィールドワークを始める。セルクナム族最後の女シャーマン、ロラ・キエプヒャの最晩年、生活を共にし、伝統文化について記録し、数多くの歌を録音した

大川/豪司
1961年東京生れ。国際基督教大学教養学部卒業。インドネシアのジャカルタで、在住日本人子弟を対象とした学習塾の講師をして四半世紀過ごす。帰国後は予備校などで受験英語を教えている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

目次


はじめに 14
I セルクナムの神話 19
・ハイン、この「偉大なる祭典」は何のためか 20
・母権制および女たちのハイン崩壊の神話 22
・最初のハインと父権制の起源の神話 28
・ハインの秘密 29
II セルクナムの社会 35
・かつての暮らし 36
・なぜ滅びたのか 44
・慣習としてのハイン 47
III 三人の中心人物 51
・テネネスク 53
・ハリミンク 59
・グシンデ 63
IV ハイン 83
・身体彩色の技巧―日常生活用とハインの「精霊」用 84
・女子の成人儀礼 89
・ハインの精霊たちと登場の場面 112
(ショールト/オルム 命を呼びもどす者/ハイラン 淫らで不快な道化師/ハシェとワクス 騒動を起こす者/ワアシュ・ヘウワン 目に見えぬ狐/サルペン 扇情的な場面:死と出産の場面:古代母権制の長、「月」の象徴としてのサルペン/クテルネン サルペンの赤ん坊/ハラハチェス 角のある道化師/マタン バレエダンサー/コシュメンク 寝とられ亭主/クラン ひどい女/ウレン 優雅ないたずら者/タヌ 謎の精霊)
・遊戯、踊りとその他の儀式 187
(タヌの主催になる若い恋人たちの遊戯/男と女が競う遊戯/クルプシュ、あるいはペンギンの踊り/いわゆる「ヘビ踊り」/男根の儀式/好天をもたらす儀式/アシカの物真似/ケワニクスの行進/女性限定(女たちが通過儀礼を風刺する/母親たちが息子の真似をして遊ぶ))
・最後の仮説―秘密は誰のものだったのか 229
V その後のこと 233
原注 248
文献一覧 259
献辞 262
図版出典一覧 263
解説 264
訳者あとがき 270
ハインの詠唱の曲目一覧 vi
索引 i

「本書をお読みいただく前に」の冒頭部分


  著者アン・チャップマンにはティエラ・デル・フエゴ(フエゴ諸島)の先住民に関する複数の著書があるが、本書はそのうちの一部族、セルクナム族の祭典ハインについて書かれたものだ。冒頭からこの祭典と背景にある神話の詳細な話に入っていき、わかりにくく感じられるかもしれないので、本書と一部重複する内容もあるが、ティエラ・デル・フエゴの風土、そこに生きたセルクナム族らの先住民、彼らと西洋人との接触などについて簡単に概説しておきたい。

「はじめに」の冒頭部分


  両親ともにセルクナムだった最後の者は一九九九年に亡くなったが(V章参照)、セルクナム族(オナ族という名でも知られる)の子孫は、まだティエラ・デル・フエゴのアルゼンチン領に住んでいる。彼らにとって先祖からの伝統は切っても切り離せないものだ。この本が彼らと、ハインの祭典の偉大なる文化的・芸術的創造性を認める人びとの役に立つことを願っている。

書評


伝統文化の記憶を持つセルクナムの最後の人びとと交流し、記録を残し、生涯を通じてその文化の研究と紹介に取り組んだ著者が、残された記録やセルクナムの末裔たちの話などから儀式「ハイン」の様子を復元

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://aroha.asablo.jp/blog/2017/09/12/8675489/tb