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○●南方共栄圏―視察と探訪●2015年08月02日 09:31

大東亜戦争直前の昭和15年に、南洋群島、豪州、フィリピンなどを視察した記録

大谷敏治 (著)
発行所: 三省堂
昭和16年5月15日発行
昭和17年3月1日3版発行
402ページ

■目次
我が南洋群島 1
・芝浦解纜 3
・南を指して 7
・台風に乗る 9
・サイパンを左に 18
・南洋糖業を語る 25
・パラオまで 40
・コロールにて 51
・ガルミスカン植民地 58
・洋上仮泊 69
・燐鉱のアンガウル 76
・絶海の孤島 86
・白帆かかげて 90
蘭領印度 111
・ニューギニアを瞻望す 113
・ダムビア海峡を通る 114
・闇夜を往く 118
・貿易風 123
・忘れられた蘭印・香料諸島 132
・極楽鳥 146
・チモールをかすめて 158
豪州連邦 163
・テラ・オーストラリヤ 165
・要港ポート・ダーイン―ポートダーイン― 167
・アラフラ艦隊 173
・恐ろしき一夜 190
・暗黒大陸を飛ぶ 198
・カンガルーを抱いて―デリーウオータ― 210
・ブリスベンまで 223
・羊毛のせり市―ブリスベン― 231
・シドニーへ 251
・州立屠殺場を観る―シドニー― 256
・大学の人々 263
・花の都―カンベラ― 273
・小麦のプール―メルボルン― 283
・馬券を購う 288
・黄金狂時代―アデレード― 298
・ガレット大臣と語る 306
・虹のかけ橋 319
帰航 337
・支那船に乗る339
・ニューギニア―ラバウル― 352
・セレベス・ボルネオを望む―ダバオ― 368
・若き比律賓―マニラへ― 380
・祖国へ囘へる―高雄にて― 396

■「はしがき」の冒頭部分
あらゆるものがひとつの聖なる目的のために、協力節約せねばな らぬ時に、資本と労働とを、すくなくもこのかたちで動員すること が、はたして国に忠なる所以かどうか、正直にいって、すこぶる疑 わしい。まして、記述するところは、いま祖国日本が関心の的、南 洋にかかわるとはいえ、決して新しすぎるとはいえない旅の物語で ある。だが、地域からみて、東京芝浦を振りだしに、往航は、サイ パン・パラオの南洋群島、蘭印モルツカス諸島、チモール、豪州、 そして復航に、ニューギニア比律賓を経て台湾高雄に舞い戻るまで の航跡は、いま問題の南方共栄圏を正に縦に貫いている。そのため に利用された交通機関は、三十五反の帆をはりあげた帆前船、四発 低翼単葉の定期航空機、巨躯を流線形に揺るがす大陸横断列車、そして最後にボイラーの損傷にあえぐ支那の古船、乗り物として人間の利用しうる最古のものから最新のものまでを尽くしたといってよろしかろう。

■解説
著者は視察当時小樽高等商業学校、発行時には東京外国語学校で教鞭をとっていた方です。シナ事変や、南洋庁、大東亜共栄圏構想など、当時の状況を受けて書かれた文章になっています。多くのページがオーストラリアに費やされています。本書を読むと、ただテレビや新聞を通じて間接的に知るのとは違って、当時一般に流通していた書籍を通じて当時の状況を知ると、現実に起きたできごととして実感されてきます。

当時、委任統治領であった南洋諸島における糖業は完全に日本人の手によって進められていたことや、当時アメリカが統治していたフ ィリピンのダバオに繊維用麻の栽培のために多くの日本人が移住し ていたこと、シナ事変の影響で関係が悪化するオーストラリアとの 関係や当時から強かった白豪主義のこと、アラフラ海の潜水夫とし て下級労働者として使われていた日本人たちのことなど、こういう 状況であったのだなと改めて確認できます。

今と同じように、時代の流れを作る正体不明の人々がいて、そのよう な人々がいることを知らないままで時代の流れを読み、高収入や夢を追って懸命に生きる人々の姿が見えてくるようです。

同著者による次のような著書があります。
マライの経済資源


インドネシア民族史 (1943年) (東洋民族史叢書〈第2巻〉)