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○■悪夢の超特急 リニア中央新幹線■2015年09月03日 21:55

消費電力、沢枯れ、耐震性能、採算性、電磁波…
リニア新幹線の問題を理解するには十分


樫田 秀樹 (著)
単行本(ソフトカバー): 264ページ
出版社: 旬報社 (2014/9/17)

■内容紹介
【第58回JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞受賞!!】

「夢があっていい! 」「地域が活性化する! 」と思っているあなた。覚悟はできていますか?
新幹線の3倍以上かかる電力を原発再稼働でつくる? 南アルプスの天然水を枯らし、稜線に残土を積み上げる? 1日に1700台ものダンプカーを街中に走らせる? 日本最大のウラン鉱床地帯にトンネルを開ける?

【著者メッセージ】   総事業費9兆円。この史上最大の鉄道事業は、その問題点をほとんど報道されることなく着工目前まで来た。  東京・名古屋間の286キロのうち86%の246キロがトンネルになることで発生する水枯れの可能性、処分方法の決まらない膨大な建設残土、掘り当てるかもしれないウラン鉱床、一日に1700台ものダンプカーが12年も走る村、10年以上も続く騒音と振動と土ぼこり、喘息、生活と交通阻害、生態系の劣悪化、立ち退き等々。
私がリニアに関して取材を続けるのには理由がある。いま伝えるしかないからだ。
3・11の前、原発の危険性を訴えるマスコミはきわめて少なかった。事故が起きてから、多くの記者が饒舌になった。原発関連の本にしても、事故のあとは数百冊も出ているはずだ。もちろん否定しているのではない。次から次へと新たな問題が発生する以上、どれも大切な情報である。
だが、その礎を作ったのは、原発事故以前の数十年間、事故の可能性を訴え、反原発を訴えていた少数の市民団体やジャーナリストや研究者だ。たとえば、原発事故のあと、どの講演会場も立ち見が出るほどに時の人となった小出裕章・京都大学原子炉実験所助教は、事故の前は10人前後しか聴衆のいないときもあった。それでも腐ることなく、淡々と講演活動を続けた。市民団体も廃炉を視野に入れた運動を展開したり、東京電力に何度も申し入れを行なっていた。 だが、マスコミは東京電力という大スポンサーに配慮して、こうした声を拾わなかった。東京電力はひたすら「原発は安全です」を繰り返し、国民的検証もないまま、ついに事故が起きた。
リニアが事故や問題を起こすとは断言しない。ただ人間が造るものである以上、その可能性はある。リニア計画では、すでに山梨県のリニア実験線周辺で、起こらないといわれていた水枯れが頻発しているだけに、問題発生の可能性は低くはないと推測する。しかし、その検証がされていない。
あるテレビ関係者は言った。「JR東海がスポンサーである以上、報道は難しい。でも、事故や大問題が起これば取材できる」と。だが、私は事故を待ってなどいられない。いま伝えることで、多くの人にリニアに関する情報を知ってもらい、議論をしてほしい。 なぜなら、リニアは似ているのだ。原発の推進の仕方と。

内容(「BOOK」データベースより)
総事業費9兆円。この史上最大の鉄道事業は、その問題点をほとんど報道されることなく着工目前まで来た。東京・名古屋間の286キロのうち86%の246キロがトンネルになることで発生する水枯れの可能性、処分方法の決まらない膨大な建設残土、掘り当てるかもしれないウラン鉱床、1日に1700台ものダンプカーが12年も走る村、10年以上も続く騒音と振動と土ぼこり、喘息、生活と交通阻害、生態系の劣悪化、立ち退き等々。今からでも遅くはない。JR東海は関係者、特に住民を軽視せず、徹底議論を図るべきだ。

著者について
樫田秀樹(かしだ・ひでき)
1959年北海道生まれ。岩手大学卒業。コンピュータ関連企業勤務を経てフリーのジャーナリストに。NGOスタッフとしての活動や取材でアジア・アフリカ各地に赴く。著書に『9つの森の教え』(築地書館。ペンネーム峠隆一)、『「新しい貯金」で幸せになる方法』(築地書館)、『自爆営業』(ポプラ新書)、編著書に『世界から貧しさをなくす30 の方法』(合同出版)など。各誌で環境問題、社会問題、市民運動、人物ルポなどを手がける。自身のブログやホームページでも多くのテーマを執筆している。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
プロローグ
第一章 計画前夜 16
・技師の閃き/署名運動/走らないリニア/動き出した計画/「リニア・市民ネット」の誕生
第二章 空疎な「方法書」説明会 50
・国の民意軽視/不毛な説明会―環境影響評価方法書の縦覧/計画の大義/原発一基分の電力を消費するリニア/このままではずるずると着工される/大鹿村の新聞/NO!リニア連絡会/大鹿村の説明会/東京での説明会/NOを言わなかった自治体/議論がなかった期成同盟会/自治体の本音
第三章 何が問題なのか 90
・推進者からの批判/海外での事例/自治体にも隠される情報/何が問題なのか/電磁波/水枯れ/空疎な「町づくり」計画/なぜ報道されないのか?/「個別説明会は開催しません」
第四章 リニアは必要なのか? 166
・速いけど早くない/声にならない声が―「リニア、いりませんよね」/リニアを止める!―「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」の誕生/ネットワーク、国土交通省へ/議員の関心/誰がリニアを必要としているのか?
第五章 土壇場での懸念の噴出 190
・加速の第一歩/「ご理解」なんてできない/自治体も懸念。長野県大鹿村と中川村/長野県南木曽町の懸念/岐阜県可児市/静岡県七市二町の水源がなくなる?/悩ましき南アルプスの残土/公聴会と審査会
第六章 厳しい知事意見書が出ても 232
・評価書/環境大臣意見/環境省と国交省へのダブル交渉/行政訴訟?/高まる関心

あとがき 257
リニア新幹線沿線住民ネットワーク加盟の市民団体一覧 261
主な参考文献 262

■「プロローグ」から
  水枯れや残土だけではない。南アルプスだけではない。リニア中央新幹線計画には、さまざまな問題が存在する。

・新幹線の三倍以上の電力を消費することから指摘される原発再稼働につながる可能性
・強力な電磁石の使用による電磁波の発生
・岐阜県では日本最大のウラン鉱床地帯にトンネルを開ける可能性
・三兆円の借金がある会社が九兆円もの事業に乗り出すという疑問。つまり資金ショートした場合の国民負担の可能性
・なぜ時速五〇〇キロでなければならないのか

  こうしたことはほとんどの人が知らない。JR東海も国もマスコミも、総工費約九兆円という、世界の鉄道史上最大の超巨大プロジェクトの実像をほとんど周知しない。

■書評:
るびりん書林 別館

○■写真集 ヒトが人間になる ― さくら・さくらんぼ保育園の365日■2015年09月06日 09:23

食べる寝る遊ぶ働く 0歳からの子どもたち


斎藤 公子 (著), 川島 浩 (写真)
大型本: 271ページ
出版社: 太郎次郎社エディタス (1984/4/15)

■商品の説明
内容紹介
どのような保育がヒトを人間に育てるのか。260枚の写真と50ページの解説が、その全体像を描きだす。子育ての原点・0歳児から、卒園期の5歳児までを克明に記録。 ◎井尻正二さん評……このような実践が、全国の保母さんや母親に広まることを願っています。

出版社からのコメント
【復刊しました】刊行から30年。全国に広がるはだし・どろんこ保育の原点を記録した写真集が2014年11月に8年ぶりの復刊です。どうぞこの機会にお求めください。【入手方法について 2015年6月追記】復刊より8か月たちました。その間、好評をいただきさらに増刷し、在庫はあるのですが、本販売サイトからは、いまだに発注いただいておりません。入手方法についてご案内します。1ーそのままカートに入れてください。10日ほどで出版社に注文が来て、小社は2日で出荷し、入荷・発送処理に10日ほどかかるので3週間ていどでお送りできるかとおもわれます。2ー「太郎次郎社エディタス営業部」の出品物をご注文ください。新品を翌営業日に発送します。サイトに手数料を支払う必要のある関係で、国内配送料257円を頂戴するようになります。3ー他のサイトをお探しください。在庫している書店も全国各地にございます。

著者について
川島 浩(カワシマ ヒロシ) ◎1925年-東京に生まれる。写真家・田村茂氏に師事。 ◎1952年のメーデー事件の写真によりモスクワ・コムソモルスカヤプラウダ国際写真コンクール1位受賞。 ◎1959年-群馬県島小学校の写真による個展「未来誕生」にて写真批評家協会新人賞受賞。 ◎1962年-岩手県小繁の農民の長年にわたる入会権闘争に取材した個展「北方の農民」。 ◎1973年-ラオス解放区に取材した個展「洞窟をでた人びと」。 ◎おもな写真集-群馬県島小学校を撮影した『未来誕生』-麦書房。 群馬県境小学校を撮影した『いのち、この美しきもの』-筑摩書房。 『あすを拓く子ら-さくら・さくらんぼ保育園の実践』-あゆみ出版。 『斎藤喜博の仕事』-国土社。 『ぼくらはみんな生きている-与謝の海養護学校の実践』-あゆみ出版、日本写真協会年度賞受賞。 ◎現在-日本写真家協会会員、日本リアリズム写真集団会員。 上記内容は本書刊行時のものです。 斎藤 公子(サイトウ キミコ) ◎1920年-島根・隠岐島に生まれる。 ◎1956年-「さくら保育園」創設。 ◎1967年-農村部に季節保育所-現在のさくらんぼ保育園-創設。 ◎1977年-第二さくら保育園創設。 ◎おもな著書-『子育て-錦を織るしごと』-労働旬報社。 『あすを拓く子ら』『自然・人間・保育』-共著・あゆみ出版。 『さくら・さくらんぼの障害児教育』『子どもはえがく』-青木書店。 『さくら・さくらんぼのリズムとうた』-群羊社。『みんなの保育大学シリーズ』-共著・築地書館。 ◎現在-社会福祉法人さくら・さくらんぼ保育園代表園長。 北埼玉保育問題研究会会長。新日本婦人の会埼玉県本部顧問。 労働者教育協会理事。 上記内容は本書刊行時のものです。

■目次
さくら・さくらんぼの保育とは ― まえがき ― 斎藤公子 6

I章 子どもたちの四季 10
子どもと水 12
子どもと土 22
子どもと動物 36
さんぽする 42
たべる 62
あそぶ 76
けんかする 86
自分でやる 98
はたらく 102

II章 子育ちの原点 120
0歳児の発達相談 122
0歳児の365日 132

撮影メモから ― 川島浩 148

III章 表現する心 152
読みきかせる・語りきかせる 154
えがく 166
共同で創る 178
伝え、うけつぐ
① ― ひなまつり・七夕さま 188
② ― 三つ編み・竹馬・荒馬 196
③ ― こままわし 202

IV章 さくら・さくらんぼの行事 216
からだで学ぶ ― 公開保育 リズムあそびを中心に 218
子どもを見つめる ― 職員研究会 232
はだしで走る ― 運動会 242
未来へつなぐ ― 卒園式 254

わがもの顔にふるまって ― 撮影後記 ― 川島浩 270

■「まえがき」の冒頭部分
さくら・さくらんぼ保育園を訪れた人は、ある人は「ここにエミールが生きている」といい、ある人は「シュタイナー教育とそっくりだ」ともいい、ある人は「窓ぎわのトットちゃんの小学校のようだ」といいい、ある人はこうもいった。「マカレンコの"愛と規律の教育"をみるおもいがする」と。また、ある中年の男性は「なつかしいなあ!昔の"がき"といわれた子どもたちがいた」とよろこんだ。
そう。鼻が出ても意に介さず、夢中になって土を掘り、虫をつかまえ、かえるを追う子ども。少々のひび割れ、霜やけも苦にせず、遊びになにやら熱中する子ども。焼けたたらこのような赤いほほの1、2歳の子。衣服は寒ければ着て、あつければぬぐというだけのもの。素足で走りまわる子ども。だれが来ようが、大人を気にせず、カメラが追おうが、マイクをつきつけられようが、意識せずけんかをし、泣き、描く子ども。真剣に動物小屋のそうじをしている子どももいる。

■書評
るびりん書林 別館

?●石油と原子力に未来はあるか―資源物理の考えかた (1978年)●2015年09月10日 10:09

2011年5月に改訂版『原子力に未来はなかった』の出た、エネルギーを利用するということ全般について疑問を抱かせてくれる本


槌田 敦 (著)
-: 231ページ
出版社: 亜紀書房 (1978/02)

■商品の説明
内容
現代の科学技術は石油の科学技術であり、資源の劣化と廃物の蓄積によって近く破綻することは確実である。原発核融合も結局は石油文明であって枯渇する石油の代替エネルギーたりえない。気鋭の物理学者が「生存の条件」の準備が緊急に必要であることを明快に解明する。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
槌田/敦
1933年東京生まれ。東京都立大学理学部化学科卒業。東京大学大学院物理課程D2修了後、同大助手を経て理化学研究所研究員。定年退職後、94年から名城大学経済学部教授。06年定年退職。05年4月から09年3月まで高千穂大学非常勤講師(本データはこの新版が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
まえがき
第I部 脱石油文明の方向 1
核融合は未来の火ではない 3
脱石油文明の方向 21
「現代の博物誌・月火水木金土日」を読んで 59

第II部 核と人類は共存できない 69
原子力平和利用は故意の犯罪 71
核融合の夢と現実 91
原子力は石油の代替か
アンチプロジェクト 129
  ―原子力開発における歯止めについて

第III部 資源物理の考えかた 137
資源とは何か 139
1)物理価値
2)エントロピー
3)実用価値
4)低エントロピー資源
5)技術
6)消費の限界
定常開放系の世界 207

あとがき 227

■「まえがき」の終わりの部分
  このように代替エネルギー開発はどれをとっても、詭弁や、欺瞞や嘘に満ちあふれている。 そのようなことになる理由は、エネルギー問題の根源が消費の構造にあり、代替エネルギーの開発では解決しないのに、無理にこじつけようとするからである。 また、仮に開発に成功したところで焼け石に水ということもある。 そのうえ、資源の多消費は廃物廃熱の捨て場所を失っている。 1960年代以後(とくに1977年)の異常気象と、資源多消費による廃物廃熱との相関は誰も否定できないだろう。
  従って、資源から廃物廃熱への消費の構造を基本から考えなおすことが、今問われている。 これがこの本の主題であって、人間社会にとって資源とは何かをじっくり考えてみたい。
  さて、順序が逆になったが、この本は最近2カ年間、いろいろな雑誌に書いたり、講演したりしたものの中から集めたものである。 重複する部分が多く、とても気になるが、これを整理すると、それぞれの論文の意図を損うので、削除・加筆は最小限にとどめた。 読み苦しい点を許していただければ幸いである。
      1978年1月

○■日本の川を旅する―カヌー単独行 (1982年) ■2015年09月11日 14:07

日本ノンフィクション賞(新人賞)を受賞した、自然の楽しさ、大切さを伝える名著


野田 知佑 (著)
-: 290ページ
出版社: 日本交通公社出版事業局 (1982/04)

■新装版「まえがき」より
八年ぶりに長良川へ行ってみた。
相変わらず良い川で、良い川というのは大したもんだ、と思った。 一人の爺さんと釣りに行ったが、朝のうちは体の具合が悪い、と言っていた爺さんは、川原に着くと生色を取り戻し、二、三匹、魚を釣ったら、すっかり元気になってしまった。「良い川」とか「良い女」というのはこんな効用がある。

■著者略歴(新装版のカバーより)
一九三八年、熊本県に生まれる。
早稲田大学英文科を卒業し、
旅行雑誌記者を経て、現在はエッセイスト。
これまでに、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリア、
ニュージーランド、カナダの川を漕破した、
カヌーイストの第一人者である。
著書に『魚眼漫遊大雑記』(講談社)、
『のんびり行こうぜ』(小学館)、『北極海へ』(文藝春秋)、
『川を下って都会の中へ』(小学館)がある。
日本の川を旅するで
第九回日本ノンフィクション賞(新人賞)を受賞

■1989年新装版目次
新装版まえがき 9
いざ原野の光の中へ――釧路(くしろ)川 23
幻の魚イトウをつった――尻別(しりべつ)川 47
雨ニモ負ケル、風ニモ負ケル――北上(きたかみ)川 71
老婆は一日にしてならず――雄物(おもの)川 95
山河滅びて人肥え太り――多摩(たま)川 117
やっぱり日本は広い――信濃(しなの)川 139
冒険は三日もすると日常になる――長良(ながら)川 161 家族でツーリング――熊野(くまの)川 185
春の岸辺は花々に彩られ――(ごう)の川 209
水の上で水に渇く――吉井(よしい)川 231
桃源郷に若者は住めない――四万十(しまんと)川 253
美人も簗場(やなば)も洪水が流した――筑後(ちくご)川 275
唖然、ふる里の川はいま――菊池(きくち)川 297
薩摩(さつま)隼人(はやと)は死んだか――川内(せんだい)川 321

あとがき 344

■一言:
1985年に新潮社から文庫版、1989年に講談社から新装版が出ています。

■書評
るびりん書林 別館

△■アメリカの国家犯罪全書■2015年09月13日 09:50

アメリカによる多数の「国家犯罪」を元外務省職員がまとめた衝撃の一冊


ウィリアム・ブルム (著)
益岡 賢 (訳)
発行所: 作品社
2003年4月20日発行
417ページ

■内容の紹介(カバーのそでより)
アメリカ合衆国は、イラク・北朝鮮などを「ならず者国家」「悪の枢軸」と呼び、「正義」と「民主主義」の名のもとに断罪している。しかし、チョムスキーも指摘するように、本当の「ならず者国家」、世界最悪の「テロ国家」はアメリカ自身である。
本書は、アメリカ政府・米軍・CIAが世界の隅々で行っている、テロ支援、拷問や洗脳、暗殺、盗聴、選挙操作、麻薬製造、毒ガス・生物兵器使用、虐殺…等など、イラク・北朝鮮どころではない「国家犯罪」のすべてをまとめた衝撃の一冊である。

著者について(本書より)
ウィリアム・ブレム(William Blum)
一貫して米国の国家的犯罪・外交政策の暗部を分析・告発しつづけているジャーナリスト。1943年、ニューヨーク生まれ。米国国務省の外交担当部門に従事していたが、67年、ベトナム戦争に反対して辞任。辞任後、ワシントン初の「地下」新聞『ワシントン・フリープレス』を創刊するが、FBIの妨害で廃刊。69年、秘密のベールに包まれていたCIAの内部を暴く告発書を刊行。200名以上のCIA職員の名を公開して破門を呼ぶ。米国やヨーロッパ、南米などでフリー・ジャーナリストとして活躍。とくに72~73年にはチリに滞在し、アジェンデ政権の成立とCIAが計画した軍事クーデターによる崩壊を、現地からリポートしつづけ世界に真実を訴えた。70年代半ばには、元CIA職員フィリップ・アジェとともに、ロンドンでCIAの内実を暴く作業に従事。80年代後半には、映画監督オリバー・ストーンとともに、米国外交の真実についてのドキュメンタリー映画の制作に乗り出す。現在は再びワシントンに居住し、本書をはじめとした書籍や記事の執筆を行っている。なお98年に発表した、米国がイラクの生物兵器・化学兵器のための原料を提供していたという記事は、米国で「最も検閲を受けた上位10の事実」の一つに数えられ、「模範的ジャーナリスト賞」を授与されている。

訳者について(本書より)
益岡賢(ますおか けん)
1964年生まれ。メディア論・コミュニケーション論に関心を持つ。90年から東チモールへの連帯活動をはじめ、91年より東京東チモール協会所属。ニュースレター編集を担当。著書に『東チモール――奪われた独立・自由への闘い』(明石書店、1999年共著)、『東チモール2――住民投票後の状況と正義の行方』(明石書店、2000年、共著)、訳書に『アメリカが本当に望んでいること』(ノーム・チョムスキー著、現代企画室、2002年、共訳)などがある。また、チモール・ロロサエ情報ページ(http://www.asahi-net.or.jp/~gc9n-tkhs/)の手伝いをしている。個人ページは、http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/

■「訳者あとがき」より
本書の内容は、「悪の枢軸」を断罪し「正義」を振りかざすアメ リカ合州国の、不法な軍事介入や不当な外交政策、人道に対する罪 などの「国家犯罪」を、戦後から現在にいたるまで、驚くべき情報 収集力をもって網羅的にまとめたものである。アメリカの国家的な 犯罪行為を告発したものは多数あるが、本書ほど徹底的なものは例 がない。したがって、マスメディアが伝えないアメリカ国家の真実 の姿を考えようとする多くの人々にとって、本書は極めて重要な基 本書として定着している。

■「はじめに」の冒頭より
  本書を、『チェーンソーによる連続幼児殺人犯たちと、彼らを愛した女性たち』という書名にしようかとも考えた。
  この女性たちは、切断された手足や頭のない胴体を見せられても、愛する人がそんなことをするとは信じない。もし信じたとしても、愛する男が真に善意からしたのだと心底から考える。それは、おそ らくはとても不幸な事故であり、善意が起こしてしまった過失だと考える。また、それが人道的行為だと考えることすらありうる。

■目次(小項目は除く)
――新版へのまえがき
9・11事件とアフガニスタン爆撃、そしてイラク攻撃をめぐって 17
米国のイラク攻撃をめぐって――日本版への増補 38
はじめに 43

第I部 アメリカとテロリストとの愛憎関係 81
第1章 テロリストたちがアメリカをいじめる理由 82
第2章 アメリカから世界へのプレゼント
――アフガンのテロリスト養成所の卒業生たち 88
第3章 暗殺 95
第4章 米軍・CIAの訓練マニュアルより 103
第5章 拷問 111
第6章 芳しくない輩(アンサヴォリー・パーソン) 125
第7章 「芳しくない輩」の新規訓練 129
第8章 戦争犯罪者――「敵」側の、そしてわれわれ米国の 138
第9章 テロリストの安息地 151
第10章 ポル・ポト支援 161

第II部 米国による大量破壊兵器の使用 167
第11章 爆撃――無差別破壊 168
第12章 劣化ウラン兵器 174
第13章 クラスター爆弾 180
第14章 化学兵器・生物兵器の利用――米国国外 184
第15章 化学兵器・生物兵器の利用――米国国内 197
第16章 化学兵器・生物兵器利用の奨励 207

第III部 「ならず者国家アメリカ」vs世界 213
第17章 米国による介入の歴史―― 一九四五年~現在 214
第18章 選挙操作 274
第19章 「米国民主主義基金」(NED)
――CIAの下請けNGO 290
第20章 世界と対立するアメリカ――国連を舞台に 296
第21章 盗聴――地球上のあらゆる場所で 315
第22章 拉致と略奪 328
第23章 CIAがマンデラを二八年間も牢獄に閉じ込めた経緯 334
第24章 CIAと麻薬との関係――「何が悪い?」 337
第25章 地上唯一の超大国であるということは、
  決して謝罪する必要がないということである 350
第26章 自由企業のために、合衆国は、侵略し爆撃し殺害する。
  しかし、アメリカ人は本当にそれを信じているのだろうか 362
第27章 「自由の国」のある一日
  「新しき良き日々」のはじまりか 370

訳者あとがき 405
事項・人名索引 417

■一言
本当に危険な情報を伝えようとする人たちは、不慮の死を遂げている。最近独立した国家は、資源を持つ国ばかりであり、決して、住民自治を背景となどしていない。本書はページ数の多さも含め、評価を下げたい要素が多すぎます。

■書評
るびりん書林 別館

○●現代世界ノンフィクション全集9 森の猟人ピグミー/極北の放浪者/カラハリの失われた世界●2015年09月14日 09:05

コリン・ターンブルの『森の猟人』など、森、極北、乾燥地という異なる環境で狩猟を中心に暮らす人々を追い、本国で反響の大きかった3編を、一部分削除して収録。


筑摩書房編集部 (編集)
-: 465ページ
出版社: 筑摩書房 (1966)

■内容の紹介(本書の「解題」より抜粋)
●森の猟人ピグミー
・彼らはごく最近まで類人猿の一種ぐらいにしか考えられていなかった。
・ターンブルの場合は、計三年以上に及ぶ旅行中、ほとんど彼らと共に過ごし、それ以上の滞在が研究の客観性をそこなわないかと危ぶみはじめたくらい親交を重ねた。これほど深い洞察と愛情にみち、かつ詳細なピグミーの記録は他に例をみないのではなかろうか。
・原著(Simon&Schuster, New York, 1961)は十五章からなる部厚な本だが、うち十二章に相当する部分が、一九六三年、『ピグミー 森の猟人』の題で、講談社から刊行された。本書には、イトゥリの森でのピグミーの生活と習俗をあつかった七章分を収め、全体にわたって訳文に手を入れた。(藤川玄人)

●極北の放浪者
・著者のゴントラン・ド・モンテーニュ・ド・ポンサンがエスキモーと一年ちかくを過ごした時の手記である。
・ポンサンのこの本ぐらい、エスキモーの性格、ものの考え方、生活ぶり、彼らを取りかこむ厳しい自然の姿を見事にえがいたものは他にもとめられない。
・原書ははじめ、大戦中のアメリカで発表され、大きな反響をよんだものである。その後、彼の母国フランスで出版され、今日まで、「エスキモー物」の古典として、不動の地位を占めている。
・本書は一九五七年、新潮社より「人と自然叢書」の一冊として刊行された。原書は四部より成るが、ここには第四部「岐路」を除き、三部までを収めた。(近藤等)

●カラハリの失われた世界
・著者ロレンス・ヴァン=デル=ポストは、南アフリカ、オレンジ自由州に、オランダ系開拓民の子として生れた、生粋のアフリカっ子である。
・本書を一貫して流れている基調は、著者の、ブッシュマン族に対する深い愛情である。これが他の単なるアフリカ探検記とは類を異にする本書の大きな特色と言えるであろう。
・原書は十章から成る大部のものであるが、紙幅の都合上、本書では特に生彩に富む六章分を訳出し、二章から五章までの四章は適当に縮訳した。(佐藤喬)

■目次
●コリン・ターンブル 藤川玄人訳
森の猟人ピグミー 5
一 イトゥリの大森林 7
二 部落 24
三 ふたたび森へ 48
四 モリモ 63
五 狩り 76
六 ピグミーの法律 90
七 成人式 103

●ゴントラン・ド・ポンサン 近藤等訳
極北の放浪者 125
第一部 キング・ウィリアムランド
一 極北への独り旅 127
二 アザラシ狩りのエスキモー 144
三 カナダ・エスキモーとくらして 177

第二部 出張所
四 エスキモーの人生観 195

第三部 ペリー湾
五 奥地への独り旅 227
六 極北の神父 265

●ロレンス・ヴァン=デル=ポスト 佐藤喬訳
カラハリの失われた世界 295
一 出発準備 297
二 砂漠の中へ 320
三 「失望」の沼 355
四 「すべり山」の亡霊たち 380
五 泉の猟人 403
六 雨の歌 425

解題 451
記録の条件 川喜田二郎 455

■一言
これらの作品を読むことで「健康で文化的な最低限度の生活」などという価値観の欺瞞が見えてきます。

○■アフリカ最後の裸族―ヒデ族と暮らした100日 (1978年) (大日本ジュニア・ノンフィクション)■2015年09月15日 09:41

1968-69年、カメルーン政府による「はだか狩り」が進む村の様子


江口 一久 (著)
-: 144ページ
出版社: 大日本図書 (1978/02)

■商品の説明
内容
カメルーン北部、チャドおよびナイジェリアと国境を接するマンダラ山脈に住む、周囲の人々とは異なった様子をし、裸体で暮らしていたヒデ族の村で暮らした100日間の記録。

著者について
江口一久(えぐちかずひさ)
1942年京都市に生まれる。京都大学文学部卒業。現在、国立民族学博物館教授。西アフリカで、ヒデ族、フルベ族などの人類学的調査を行っている。 著書に「フルベ族とわたし」、「懺悔の詩」、「フルフルデ語マルア放言雑記」などがある。(2003年4月に第日本図書株式会社から能開文庫として発行された版より)。

■目次(2003年4月に第日本図書株式会社から能開文庫として発行された版)
1 サハラ砂漠(さばく)をこえて 9
ジーンズは「はきかえられる」けれど 9
美しい村、美しい人 13

2 ギレ・ウサくんとの出会い 16
コトバ・ことば・言葉 16
ふたりの「先生」 23

3 長い一日 29
コンジェラ(ほう)が見える! 29
文明の音も消えて 33

4 天の上まで住む人びと 40
ふしぎな「村」のかたち 40
ヒデ(ぞく)はどこからきたか 48
"はだか"の生活 51
トゥル村の一年 57
首長(しゅちょう)とわたし 60

5 とんがりぼうしの家 62
ギレさんの家 62
新しい家が()つ! 69

6 モロコシとビール 72
(かた)がゆとビール 72
市場(いちば)のにぎわい 77
わたしの水 83

7 かじ屋のハリさん 85
"魔力(まりょく)"をもつ人びと 85
(さい)新妻(にいづま) 89

8 つの(ぶえ)とたいこ 92
語り、うたい歩く人びと 92
クザイ・ダゴダム・タルナ・タルナさん 95
つの(ぶえ)とオカリナのひびき 100

9 おどる人びと 102
乾季(かんき)――休息(きゅうそく)季節(きせつ) 102
先祖(せんぞ)の名まえをたどって 104
牛祭(うしまつ)りの熱狂(ねっきょう) 107
夜空に歌声がひびいて――ハナスコの犠牲祭(ぎせいさい) 116
"休息(きゅうそく)季節(きせつ)"最後(さいご)のおどり――スカラ・ゾングァの(まつ)り 120

10 さよならコンジェラ(みね) 122
火が消えるように(わか)い命が消える 122
トゥル村の「学校」 128
ヒデ(ぞく)独立心(どくりつしん) 133
文明(ぶんめい)未開(みかい)のあいだで 136
さよならヒデ(ぞく) 140

写真 熊瀬川 紀
資料画 江口 一久(フィールド・ノートより)

■書評
るびりん書林 別館

○■日本最後の秘境 住んでびっくり!西表島■2015年09月16日 08:29

西表島でのびっくり体験、移住のハウツーなど、西表島での生活を具体的にイメージできる本


山下 智菜美 (著)
単行本: 237ページ
出版社: 双葉社 (2006/10)

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
西表島のリアルな生活を詰めこんだ一冊。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
山下/智菜実
1967年東京都生まれ。2003年拠点を西表に移す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
はじめに
西表島イラスト入りエピソードMAP 10

第1章 西表島生活編 13
【拾ったりもらったり】身軽でいたい西表島移住のはじまり 14
【NTTもびっくり】家が地図に載っていない!? 25
【物価高とたたかう】離島ゆえの値段。買い物は上手に 29
【朝寝坊とたたかう】仕事は早朝、気温が上がる前に 35
【高温多湿=カビとたたかう】除湿への挑戦。大型冷蔵庫は必需品 42
【これが「離島苦」か!?】送料にア然!コストと時間がかかる 48
【医療でも「離島苦」】専門医が必要ならヘリで搬送 52
【アレルギーは治るのか!?】花粉症と水虫のゆくえ 57
【紫外線とたたかう】「うわっ焼けた!」はもう手遅れ 59
【はきものいろいろ】西表ファッションの定番を知る 66
【少子高齢化に悩む】高校がない離島での学校統廃合問題 72
【ゴミの野焼きは終了】でもこっそり燃やすというウラ技も 80
【台風とたたかう】家も車につなぎとめる 89
【寒さとたたかう】四季ではなく二季の西表に冬はない!? 96

COLUMN
部屋探しに必要なのは 19
自転車を買う、自動車を買う 22
引っ越しをする 27
光ファイバーは百年後なのか!? 32
ケータイ電話はどこが入る? 34
島で仕事を探す 39
移住に必要なものって? 46
プロパンガスの旅 55
西表のテレビ、ラジオ事情 64
新聞をとる 70
土地を探す 75
家を建てる 77
看板あれこれ~道路事情 93

第2章 西表島の生物自然編 99
【「モズク採りに行った?」】おじい、おばあの頼りになるジンブン 100
【恐怖の毒餌】放し飼いのかわいいペットが危ない!? 107
【西表では景品に!?】食うヤギか食わざるヤギか 109
【シロアリとたたかう】害虫との終わりのないたたかい 114
【ゴキブリとたたかう】ホウ酸ダンゴを作りまくる4月 119
【蚊とたたかう】方法、対策は人それぞれ。免疫もできる 125
【目に見えない恐怖!】蚊よりも小さい、"もっこ"とたたかう 130
【ネズミとたたかう】なんでもかんでもかじられ被害大 135
【ハブとたたかう】深夜、警棒と鋤でハブを退治 140
【アリの大群とたたかう】ヤツらはパンツまでも食べる! 145

COLUMN
アウトドアのジンブン 105
ジンブンを実践する~野草編 112
ジンブンを学ぶ~手わざ編 122
イノシシを食べる 133
オトモダチな生きもの 149

第3章 西表島ご近所編 151
【日々、もらいものの嵐】パイン66個をもらい、愕然 152
【恐るべしご近所の目!】プライバシーに関するびっくり 161
【打ち上げ「ぶがり直し」】「お先に!」をいわない独特な帰り方 167
【不思議な島ことば】「だからよ」で会話は終了した 175
【西表のドレスコード】祝宴ではビシッとキメるべし 181
【包むものさまざま】レジ袋もふろしきも大活躍 187
【筋肉痛とたたかう】かなり体育会系な西表島の暮らし 194
【大酒飲みたちの事件・事故】そそうをしても許されるのが島のよさ 201
【ストップ大気汚染】島には環境に優しいタクシーも走る 209
【沖縄県だけど"沖縄"じゃない】自然、文化、人のつながりが残る島 213

COLUMN
お手製甘味を楽しむ生活 156
公民館活動をする 158
掃除道具「レーキ」と「ビーバー」 165
島時間というもの 171
お昼寝文化 173
なにかにつけてご祝儀 179
そろいのTシャツを作る 185
西表の恋愛・結婚事情 190
ひと苦労の離島出産事情 192
大人気"栄養ドリンク" 197
芸は身を助ける 199
島人は島酒を飲む 204
年末年始を楽しむ 206
喪服とお香典について 211

第4章 西表島のイベント 215
海神祭 メイン・イベントはハーリー 216
豊年祭 豊作を祝う夏のお祭り 219
アンガマ 祖先の霊を供養する旧盆の行事 222
運動会 子持ちでなくても参加 225
節祭 西表島最大の祭り 227
西表島横断 好奇心で島横断に参加。長い1日だった 229
カジマヤー 97歳のおじい、おばあを祝う 232
やまねこマラソン 年々参加者が増える人気のイベント 234
ヤマネコ、ホタル、サガリバナ すばらしい自然が、いつもすぐそこに 236

■書評
るびりん書林 別館

◎■西洋紀聞 (教育社新書─原本現代訳〈61〉)■2015年09月20日 08:21

1708年、イエズス会士シドッチを尋問し、将軍閲覧用に著された『采覧異言』とともに著された書。列強による侵略の様相を現実的に感じる世界情勢の記録と、東洋の知性によるキリスト教批判がすばらしい。


新井 白石 (著)
大岡 勝義, 飯盛 宏 (翻訳)
発行所: 教育社
1980年10月25日発行
271ページ

■商品の説明
内容
本書は、西洋紀聞の翻訳に加えて、新井白石、西洋紀聞、および当 時の国際情勢についての解説が付されており、『西洋紀聞』は将軍 に献上されて閲覧を受けることを意識して書かれた『采覧異言』と は異なり、一般の目に触れたのはやっと明治十五年であったことな どがわかります。

著者について
新井 白石(あらい はくせき)
江戸時代中期の旗本・政治家・学者。一介の無役の旗本でありながら六代将軍・徳川家宣の侍講として御側御用人・間部詮房とともに幕政を実質的に主導し、正徳の治と呼ばれる一時代をもたらす一翼を担った。家宣の死後も幼君の七代将軍・徳川家継を間部とともに守り立てたが、政権の蚊帳の外におかれた譜代大名と次第に軋轢を生じ、家継が夭折して八代将軍に徳川吉宗が就くと失脚、晩年は著述活動に勤しんだ。
学問は朱子学、歴史学、地理学、言語学、文学と多岐に亘る。また詩人で多くの漢詩が伝わる。白石は号で、諱は君美(きみよし、有職読みで きんみ)(WikiPediaより)

大岡 勝義(おおおかかつよし)
1916年、東京都生まれ。
1942年、早稲田大学文学部中退。
現在、森村学園中等部教授。 (本書のカバーそでより)

飯盛 宏(いさがいひろし)
1926年、東京都生まれ。
1952年、東北大学文学部史学科卒業。
現在、森村学園高等部教諭。
神奈川県衛生短期大学講師。
(本書のカバーそでより)

■「はじめに」
  『西洋紀聞』は、宝永五年(一七〇八)十一月の切支丹禁令をあえて冒して日本に潜入し、布教を企てた宣教師ヨハン=シドッチを、時の最高権威者新井白石がみずからすすんで尋問し、その結果成立した世界事情紹介とキリスト教批判の書物である。
  本文わずか百ページにも満たない小冊ながら、死を覚悟して布教を志した熱血のシドッチと、鎖国下の閉ざされた日本にあってなお、広い視野と公正な立場で物事を判断しえた理性の人白石の、こん身の力をふりしぼった質疑応答は、おのおのの立場から真実を貫こうとする両者の対決の結果にほかならぬ。 しかも二人の対面はわずか四度にすぎなかった。 白石は記している、シドッチはまこと「博聞強記、彼方多学の人と聞こえて……」と。 しかしわれわれは言う、白石もまた博聞強記多学の人に外ならないと。 『西洋紀聞』を江戸時代、否全時代を通じ最高最大の書物の一つとするゆえんである。
  この巨峰にいどむのにわれわれの力はあまりに小さい。 知る限り現代語全訳はまだ無いようである。 なるべく原文に忠実に、その文の高い格調をできるだけ損わないよう努めたつもりであるが、白石の文章は含蓄深く、古典よりの引用や簡潔な省略も多いため、文脈をたどるのにしばしば困難を感じたことであった。
  したがって先輩諸氏の御業績を多く参照させていただいた。 ことに白石学の泰斗であられる松村明・宮崎道生両先生の御著書に負うところ絶大である。 あつく学恩を謝するものである。 また増渕勝一・小林高四郎両先生からはたえずご激励をいただき、またご教示いただいたことも少なくなかった。 教育者出版部の小飼一彦氏にもたいへんお世話になった。 あわせて謝意を表したい。 このようなささやかな作品でも多くの方のご恩を受けて、はじめて誕生しえたことを思い感謝の念でいっぱいである。
  なお、本文上・中巻とその注、参考資料として収めた"「長崎注進羅馬人事」宝永五年下巻"の訳文は大岡が、解説と下巻の訳文・注は飯盛が分担した。
      大岡 勝義
      飯盛 宏

■目次(本文から拾って小項目を追加しました)
はじめに 3
『西洋紀聞』の世界 7
  一 新井白石の生涯 9
  二 新井白石の人物像 24
  三 『西洋紀聞』について 29
  四 宗教改革と絶対主義国家の征服 40
    凡例 49
上巻 51
  シドッチの来航/白石に尋問の命下る/通訳との打ち合わせ/   白州のシドッチ/尋問の開始/シドッチの真情/白石の説得/   尋問の再開/ヨーロッパ諸事情の聞き取り/教義の尋問/   シドッチの学識/シドッチの人柄/拘禁の処置/シドッチ洗礼を行う/   シドッチ入牢/来航の真意/シドッチの牢死/『西洋紀聞』成る/   付録〔シドッチの来日したときの有様が記されている〕 82     異人船の出没/異風人の上陸/異人、長崎につく/     長崎奉行所での調べ/シドッチ江戸に着く/シドッチの食事と所持品
中巻 91
  五大州とは/世界地図について   ヨーロッパ諸国     教皇の都イタリア・ローマ/シチリアは噴煙の島/     ポルトガルのアジア進出/ゴア・マカオとの交渉/ポルトガルの王位復権/     キリスト教の渡来について/強大国スペイン/カステイリヤ/     フランス/大国ドイツ/その他の諸国/海戦に巧みなオランダ/     悪名高いイギリス/その他の北欧諸国/ヨーロッパにおける為政者の選び方/     君長の位号/ヨーロッパの民俗/ヨーロッパの言語   アフリカ諸国     軍事力強大なトルコ/その他アフリカ各地   アジア諸国     良馬の国ペルシア/アジアの大国モンゴル/織物の地ベンガラ/     色織柄のインデヤ・ゴア・マカオ/シャカ入滅の地セイロン/     金札の礼シャム/オランダの進出マラッカ/赤道直下のスマトラ/     温暖なジャワ/香料と黄金の島々ボルナオ・マカッサル/     銀山と日本人の町ルソン島/新大陸オーストラリア/日本への路/     新イスパニア(メキシコ)/新フランス(カナダ)   ソイデ=アメリカ諸国(南アメリカ)     未開の地ブラジルとサン=ヴィンセント島/     付 長人国パタゴニア/付 スペイン王位継承戦争起こる/     イスパニヤ継承戦争終わる
下巻 151   ヨハン=シドッチの来航理由/ヒイタサントールムとデキショナアリヨム/   携行品・衣服など/シナ・シャムの事情/フランシスコ=ザビエルとキリシタン大名/   ザビエルの遺体など/利瑪竇のこと/ヨーロッパの軍事事情/火器の始め/   イスパニアの領土形成/シドッチが日本布教を志した理由/日本人と中国人の性格の相違/   シドッチが選ばれた理由/直接江戸に来ることを望んだ理由/キリスト教の概要/   キリスト教の公認/キリスト教僧職の段階/世界の宗教/白石のキリスト教批判 注 211 「長崎注進羅馬人事」宝永五年下巻 247 参考文献 269
■書評
るびりん書林 別館

○●日本よ、森の環境国家たれ (中公叢書)●2015年09月24日 09:55

「森の民」の「植物文明」と「家畜の民」の「動物文明」という視点から、一神教と環境破壊の必然的なつながりを明かし、多神教文明の重要性を説いた刺戟的な本


安田 喜憲 (著)
単行本: 281ページ
出版社: 中央公論新社 (2002/03)

■著者について
安田喜憲(ヤスダヨシノリ)
1946年、三重県生まれ。東北大学大学院理学研究科博士課程退学。理学博士。国際日本文化研究センター名誉教授。東北大学大学院環境科学研究科教授
2007(平成19)年紫綬褒章受章。気候変動と人類の生活・歴史の関係を科学的に解明する「環境考古学」の確立者。著作に、『山は市場原理と闘っている』(東洋経済新報社、2009年)、『稲作漁撈文明』(雄山閣、2009年)『生命文明の世紀へ』(第三文明社、2008年)、『環境考古学事始』(洋泉社、2007年)、『一神教の闇』(筑摩書房、2006年)『気候変動の文明史』(NTT出版、2004年)など多数
(『一万年前』より)

■目次
第一章 人類文明史の二類型区分 3
一 森の民日本人の危機 4
二 長江文明もアンデス文明も森の文明 12
三 環太平洋植物文明圏 31
四 森の文明と家畜の文明 49
五 家畜の文明の原罪と森の文明の悲劇 69

第二章 森の環境国家日本の構築 87

第三章 森のこころの文明 113
一 「森のこころ」の新しい文明 114
二 森を守る女性のこころ 137

第四章 森を守る食生活 153
一 アメリカはパンで日本人の魂を変えた 154
二 森を守る食生活 162
三 日本人はなぜ肉食を止めたのか 170

第五章 日本桃源郷構想 181
一 畑作牧畜民のユートピア・稲作漁撈民の桃源郷 182
二 ユートピアから桃源郷へ 214

第六章 森の環境国家が地球と人類を救う 223
一 ドラゴン・プロジェクト 224
二 木造百年住宅の輝き 241
三 二十一世紀の地球温暖化を前にして 248

第七章 世界を変える森の環境国家 261
一 文明観を根底から見直そう 262
二 中高年よ森へ行こうではないか 270

あとがき 277
初出一覧 281

■「著者から読者へ」(本書のカバー裏表紙より)
人類文明史には「森の民」の「植物文明」と「家畜の民」の「動物文明」の二類型があるというのが、本書の最大の発見である。「森の民」の「稲作漁撈民」は桃源郷を、「家畜の民」の「畑作牧畜民」はユートピアを創造した。桃源郷こそ「森の民」の究極の生命維持装置だった。だが、人類文明史は、一面において後者の「動物文明」が前者の「植物文明」を駆逐する歴史であった。そうした中で「森の民」日本人は「家畜の民」に蹂躙されへこたれたことが一度もなかった。日本人が森にこだわり「森の環境国家の構築」に邁進するかぎり、日本の未来は安泰であるというのが。本書の提言である。

■「あとがき」より(中間の段落)
日本文化が「森の文化」であることをはじめて指摘した一九八〇年に比べて、今日(二〇〇二年)の日本は、経済不況と高い失業率にあえいでいる。 「家畜の民」の圧倒的なパワーの前に「森の民」が自信を失いかけている。しかし、二十一世紀は「森の文明」の時代であり、「森の民」の時代である。 地球温暖化に歯止めをかけることもなく、自然を搾取しつづけ、豊かさを追い求め、力づくで他の文明を圧倒しようとする「家畜の民」の文明が、あと二十年もつはずがない。 アメリカと中国の「家畜の民」の「自然=人間搾取系の文明システム」は、二十年以内にかならず行き詰まる。 その時に向けて、日本人は「森の環境国家の構築」に邁進しなければならないのである。 「今日の苦境は新たな発展の時代の到来の前兆なのである」。

■一言
「森の民」が「家畜の民」によって滅ぼされてきたという視点が刺戟的。この「家畜の民」を支配する者たちこそが世界統一政府の樹立を目論み、金融の仕組みを作り、石油、医療、食糧など、大きな利益を確実にあげることのできる産業を支配している人びとであろう。
彼らによって地球が破壊される前に、人類すべてがこのような視点を持って、自然および他者と共生する以外に生き残りの道がないことを自覚するとき、道は開けるのであろう。