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○●南方共栄圏―視察と探訪●2015年08月02日 09:31

大東亜戦争直前の昭和15年に、南洋群島、豪州、フィリピンなどを視察した記録

大谷敏治 (著)
発行所: 三省堂
昭和16年5月15日発行
昭和17年3月1日3版発行
402ページ

■目次
我が南洋群島 1
・芝浦解纜 3
・南を指して 7
・台風に乗る 9
・サイパンを左に 18
・南洋糖業を語る 25
・パラオまで 40
・コロールにて 51
・ガルミスカン植民地 58
・洋上仮泊 69
・燐鉱のアンガウル 76
・絶海の孤島 86
・白帆かかげて 90
蘭領印度 111
・ニューギニアを瞻望す 113
・ダムビア海峡を通る 114
・闇夜を往く 118
・貿易風 123
・忘れられた蘭印・香料諸島 132
・極楽鳥 146
・チモールをかすめて 158
豪州連邦 163
・テラ・オーストラリヤ 165
・要港ポート・ダーイン―ポートダーイン― 167
・アラフラ艦隊 173
・恐ろしき一夜 190
・暗黒大陸を飛ぶ 198
・カンガルーを抱いて―デリーウオータ― 210
・ブリスベンまで 223
・羊毛のせり市―ブリスベン― 231
・シドニーへ 251
・州立屠殺場を観る―シドニー― 256
・大学の人々 263
・花の都―カンベラ― 273
・小麦のプール―メルボルン― 283
・馬券を購う 288
・黄金狂時代―アデレード― 298
・ガレット大臣と語る 306
・虹のかけ橋 319
帰航 337
・支那船に乗る339
・ニューギニア―ラバウル― 352
・セレベス・ボルネオを望む―ダバオ― 368
・若き比律賓―マニラへ― 380
・祖国へ囘へる―高雄にて― 396

■「はしがき」の冒頭部分
あらゆるものがひとつの聖なる目的のために、協力節約せねばな らぬ時に、資本と労働とを、すくなくもこのかたちで動員すること が、はたして国に忠なる所以かどうか、正直にいって、すこぶる疑 わしい。まして、記述するところは、いま祖国日本が関心の的、南 洋にかかわるとはいえ、決して新しすぎるとはいえない旅の物語で ある。だが、地域からみて、東京芝浦を振りだしに、往航は、サイ パン・パラオの南洋群島、蘭印モルツカス諸島、チモール、豪州、 そして復航に、ニューギニア比律賓を経て台湾高雄に舞い戻るまで の航跡は、いま問題の南方共栄圏を正に縦に貫いている。そのため に利用された交通機関は、三十五反の帆をはりあげた帆前船、四発 低翼単葉の定期航空機、巨躯を流線形に揺るがす大陸横断列車、そして最後にボイラーの損傷にあえぐ支那の古船、乗り物として人間の利用しうる最古のものから最新のものまでを尽くしたといってよろしかろう。

■解説
著者は視察当時小樽高等商業学校、発行時には東京外国語学校で教鞭をとっていた方です。シナ事変や、南洋庁、大東亜共栄圏構想など、当時の状況を受けて書かれた文章になっています。多くのページがオーストラリアに費やされています。本書を読むと、ただテレビや新聞を通じて間接的に知るのとは違って、当時一般に流通していた書籍を通じて当時の状況を知ると、現実に起きたできごととして実感されてきます。

当時、委任統治領であった南洋諸島における糖業は完全に日本人の手によって進められていたことや、当時アメリカが統治していたフ ィリピンのダバオに繊維用麻の栽培のために多くの日本人が移住し ていたこと、シナ事変の影響で関係が悪化するオーストラリアとの 関係や当時から強かった白豪主義のこと、アラフラ海の潜水夫とし て下級労働者として使われていた日本人たちのことなど、こういう 状況であったのだなと改めて確認できます。

今と同じように、時代の流れを作る正体不明の人々がいて、そのよう な人々がいることを知らないままで時代の流れを読み、高収入や夢を追って懸命に生きる人々の姿が見えてくるようです。

同著者による次のような著書があります。
マライの経済資源


インドネシア民族史 (1943年) (東洋民族史叢書〈第2巻〉)

△●火の神の懐にて ― ある古老が語ったアイヌのコスモロジー●2015年08月03日 11:28

知恵と宿命を調和させる先人たちの知恵の一例


松居 友 (著), 小田 イト
単行本: 284ページ
出版社: 洋泉社 (1999/09)

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより) 北海道を終いの住処ときめた著者が、ひとりのアイヌの古老とじっくり膝をまじえ、話を聞いた。その古老の語ることばや生き方のなんと黄金のようにきらめいていることか。―死と葬儀と引導渡し、臨死体験と死後霊、鮭の霊送り、熊送り、一匹の蠅も神になるなど、神々と人間の交歓を描いて、アイヌの精神文化と豊かな世界に私どもを誘ってくれる。
内容(「MARC」データベースより) 死と葬儀と引導渡し、臨死体験と死後霊、鮭の霊送り、熊送り、一匹の蝿も神になるなど、ひとりのアイヌの古老の言葉が神々と人間の交歓を描いて、アイヌの精神文化と豊かな世界に誘う。JICC出版局93年刊の再刊。

■目次
まえがき 1
誕生の丘、神々に囲まれて 13
移住、大地は個人の所有物ではない 19
家は聖堂であり主人は祭司 23
最初の記憶、父さんの死 33
彼岸への思い、墓標は死者を送る杖 39
天界の方位と世界像 47
死者の国はどこにあるのか 56
死と葬儀と引導渡し 65
死後の霊の状態 76
先祖供養、死者の国における霊の成熟 85
[付記]ジョン・バチュラーの著作との符合と若干の考察 96
地獄とは霊の腐りゆく場所である 102
カムイの本質は霊であり、善い霊と悪い霊がいる 111
カバリ幻想 122
母さんの思い出、コタンの秋 132
春、カムイとともに生きる喜び 146
千船のばあちゃんは吟遊詩人 159
愛馬が死後、夢で自らの気持ちを訴える 164
娘時代、親友トヨちゃんとの思い出の日々 169
アイヌと和人、すぐれた精神文化は滅びない 173
妹、障害をもった和人のもらい子 181
子どもは神の国からくる 188
雀になった子ども 197
死者の語る夢の教え 205
丸木舟と千歳川、鮭の霊送り 215
喜代作さんが熊を獲った話 224
霊を迎えてもてなして霊を送る 229
イヨマンテ、熊送りの思い出 237
霊送りに秘められたもの 245
一匹の蠅も尊い神になること 253
アイヌ文化の復活 270
あとがき 277

■「まえがき」の一部抜粋
  少なくとも長い間私は、ゲーテの自然科学にはじまって自然界や人間社会、文化や宗教のなかに、 またユングやゼーデルマイヤーの著作などのなかに一貫してコスモロジーの問題を追求しつづけてきました。 そして今も探求しつづけていうのでありますが、まだまだアイヌ語ができないものの、長年に積み重ねてきた探求が役に立つにちがいない。
  アイヌ文化のもつすぐれたコスモロジー(世界像)は言語のみではなく、イトばあちゃんのあらゆる生き方や考え方のなかににじみ出ているにちがいない。 それなら、イトさんの語るあらゆることに関心を持ち聞いていこう、そうすれば何かがわかるにちがいない。 ――そんなわけで私は、アイヌ文化云々の前に、イトばあちゃんその人の生き方そのものをうかがうようにつとめたのです。
  ですから、この本には単にアイヌ文化のことのみではなく、たとえば田植えや盆踊りおn思い出などもでてきます。 しかし、それらのなかにも重要な要素がにじみ出ていることを慧眼な読書は見抜いてくださることと思います。
  さらにそれが幸いしたのでありましょう。 おばあちゃんに出会い、徒然なるままにお話をうかがっておりますとその生き方や語る内容のなかに予想もしなかった驚くべき精神文化とコスモロジーが潜んでいるのをしだいに発見しはじめました。 それは、イトばあちゃんが語る細部、その人生のさまざまな模様にいたるまで見事に浸透しているのです。

■一言:
無味乾燥な客観性を超えて文化の伝承を目指した作品ではあるが、「アイヌ―歴史と民族」のような作品とは異なり、たぶんに理想化が含まれていると感じる。

○○アマチュア森林学のすすめ―ブナの森への招待○2015年08月04日 09:30

専門分野を越えて、森全体を研究するためにあえてアマチュアとして森を研究


西口 親雄 (著)
単行本: 216ページ
出版社: 八坂書房; 新装版 (2003/05)

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
ブナ林に息づく様々な生物たちの姿をとおして、森という宇宙のメカニズムを探る。その考察は洪水や水質問題にまでおよび、自然保護を考える「アマチュア」のための入門書。
内容(「MARC」データベースより)
ブナ林に息づく様々な生物たちの姿をとおして、森という宇宙のメカニズムを探り、洪水や水質問題までも考察。自然保護を考える「アマチュア」のための入門書。1993年刊の新装版。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
西口/親雄
1927年大阪生まれ。1954年東京大学農学部林学科卒業。東京大学農学部付属演習林助手。1963年東京大学農学部林学科森林動物学教室所属。1977年東北大学農学部付属演習林助教授。1991年定年退職。現在、NHK文化センター仙台教室・泉教室講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次(中項目まで)
I 雑木林とブナの森 ―まえがきにかえて― 1
1 ブナの森は緑色 2
2 早春の森をゆく 7

II 森の生産者 ―樹木の社会― 13
1 陽樹の戦略 ―タネは風に乗って― 14
2 灌木の戦略 ―タネは小鳥に乗って― 20
3 広葉樹の萌芽戦略 28
4 陰樹ブナの森の構造 32
5 ブナの生活戦略 ―結実と芽生え― 40
6 ブナの生活戦略 ―稚樹から老木の枯死まで― 46
7 ブナ更新のなぞ 51
8 ササ進化論 ―日本列島で発展― 57
9 ブナの森探訪 ―ブナとカンバ類とシナノキ― 61
10 ブナの森探訪 ―ブナとスギとアスナロと― 66

III 森の消費者・昆虫 73
1 森の動物の代表は昆虫と野鳥 74
2 消費者のルール 80
3 ブナの実の害虫第発生 84
4 ブナアオシャチホコの大発生 91
5 ブナの森の蝶・チョウセンアカシジミ 97
6 ブナの森の蝶・フジミドリシジミへの進化 104
7 ブナの森の蝶・ササを食草とする蝶 109
8 ブナの森の蛾・キシタバ類 111
9 雑木林のアブラムシ ―その生活戦略 114

IV 森の消費者・野鳥と哺乳動物 121
1 野鳥 ―一次消費者の見張り番― 122
2 ブナの実の豊作と野ネズミの大発生 127
3 野ネズミの進化論 130
4 ノウサギの天敵 135
5 シカとカモシカ 142
6 大台ケ原のシカの害 148

V 森の分解者 ―森の掃除屋― 155
1 糞虫、牧場で大活躍 156
2 樹木の穿穴虫とキツツキ 162
3 シラカンバの敵・ゴマダラカミキリ 168
4 ブナの森はきのこ天国 171
5 松のこぶ病 ―雑木林の生きもの― 176

VI 森と水 183
1 ダムと森林伐採 184
2 川は汚れる、なぜ? 192

あとがき 203
参考文献 208
索引

○○世界の民族 メキシコ・中央アメリカ○2015年08月08日 18:42

メキシコ、中央アメリカの諸民族一覧を収録


エドワード・エバンズ・プリチャード(シリーズ総監修)
梅棹忠夫(日本版総監修)
佐々木高明(日本版編集総務)
ジュリアン・ピット=リバーズ(第11巻編纂)
増田義郎(日本版第4巻監修・日本語訳)
杉山晃(日本語訳)
中山邦紀(日本語訳)
大型本: 146ページ
出版社: 平凡社 (1979/09)

■目次
貨幣の起源 ポール・アインチヒ 8
メキシコ、中央アメリカの人々 ジュリアン・ピット=リバーズ 12
メキシコのこころ<オクタビオ・パスの解釈> クルストファー・デリック 6
メキシコのキリスト マルキーズ・ド・ラ・ロジェール 36
セリ族<メキシコ> テッド・デ・グレイジア 44
タラウマラ族<メキシコ> マイケル・マートン 52
ウイチョル族<メキシコ> フランクリン・A・ホフマン 60
メキシコのメスチソ部落 ローラ・ロマヌッチ=ロス 68
タラスコ族<メキシコ> マーガレット・ハーディン・フリードリッチ/ポール・フリードリッチ 76
ラカンドン族<メキシコ> ジェレミー・マレット 84
チアパス州のチャムラ族 プリシラ・レイチャム・リン 94
メキシコ、中央アメリカの黒人 ウンストン・S.ブラウン 102
グアテマラの神秘 ミゲル・アンヘル・アストリアス 106
クナ族<パナマ、コロンビア> メアリアン・カーデール=シュリンプ/レオノーラ・エレーラ・アンヘル 114
ホンジュラスとエルサルバドルの生活 アリスター・ホワイト 122
メソアメリカの古代文明 イグナシオ・ベルナール 132
メキシコ、中央アメリカの諸民族一覧 136
日本版の読者のために 増田義郎 143

○■日本の風土病 ─ 病魔になやむ僻地の実態■2015年08月09日 10:55

ツツガ(恙)ムシ、デング熱、マラリアなどの実態調査を行った貴重な書


佐々 学 (著)
発行所: 法政大学出版局
昭和34年12月25日発行
328ページ

著者略歴
佐々学
大正五年三月十四日 東京神田に生る
昭和十一年三月 第一高等学校卒業
昭和十五年三月 東大医学部卒業 直ちに伝研に入る
昭和二十一年九月 医学博士
昭和二十二年十二月 東大助教授
昭和二十三年八月 アメリカに留学(一年間)
昭和三十年十月 日本医学団員として中共訪問(一ヵ月)
昭和三十二年十一月 タイ、台湾、沖縄を訪問(三ヵ月)vy 昭和三十三年十一月 東大教授
昭和三十四年六月 メリーランド大学の招聘によりアメリカ訪問(三ヵ月間)
[著書]
「蚊を調べる人の為に」(東京出版社)
「人体病害動物学」(医学書院)
「恙虫と恙虫病」(医学書院)
「日本の蚊」(DDT協会)

■目次
まえがき
第一章 風土病論の立場から 1
一 社会の盲点 2
二 風土病の科学 5
三 風土病の成り立ち 10
四 寄生虫病における風土の影響 18

第二章 ダニと風土病 23
一 裏日本のツツガムシ病 26
  はじめに/「つつが」の来歴/研究のはじまり/
  疾病と感染経路/分布と発生状況/予防と治療
二 七島熱 ─ 八丈デングの探求 50
  きっかけ/新型ツツガムシ病の発見/伝播者決定への傍証
  八丈だけではない/七島熱研究が教えたもの
三 土佐の「ほっぱん」 64
  はじめに/沢田メモ/伊田部落調査/ほかの土地にも

第三章 昆虫と風土病 71
一 バンクロフト糸状虫病(フィラリア、草ふるい、象皮病) 74
  北国にもフィラリアがある/フィラリアとは/流行地
  症状/感染と発病/予防と治療/愛媛のフィラリア退除
ニ 小島のバク(マレー糸状虫病) 102
  太平洋上の孤島をたずねて/バクの探究/バクの本態
  バクの疫学/感染経路は/効きすぎた特効薬/予防対策の試み
三 マラリア(おこり) 119
  日本の「おこり」/「おこり」の本態/マラリアの媒介蚊
  「おこり」はなぜなくなったか/カナリアの貢献/台風の恩恵
四 デング熱と黄熱 129
  デング熱来襲/南海にて/デング熱の流行相/黄熱の流行相
  ネッタイシマカは日本から姿を消したか/蚊を飼う話
五 日本脳炎 141
  蚊の岡山/日本脳炎の疫学/日本脳炎の蚊媒介説
  ウィルスの潜伏場所
六 ブユとその駆除 148
  研究と行政のつながり/研究のきっかけ/ブユの生態
  ブユの被害/ブユを防ぐには/ブユの駆除法

第四章 野生動物と風土病 163
一 野兎病 165
  野兎病発見のエピソード/流行地と感染経路/病原体
  疾病と治療/ノウサギとダニと
二 ネズミと風土病 179
  ネズミの種類と生態/ネズミと伝染病
三 ハブとマムシ 185
  用心棒/ハブの性質/ハブの咬症/統計
  ハブ咬症の治療と対策/マムシ

第五章 ジストマ(吸虫)と風土病 201
一 日本住血吸虫病 204
  ぶどうと地方病/片山記/研究史/どうしてかかるか
  症状/流行の現状/どうして防ぐか/あとがき
二 肝ジストマ病(肝吸虫病) 229
  児島湾地帯/黄牛病記/研究の来歴/肝ジストマとは
  流行地の分布/病害/診断と治療/予防
三 肺ジストマ(肺吸虫病) 243
  沖縄にも/来歴/病害/感染経路/治療と予防/診断
  流行地/南予の肺ジストマ紀行

第六章 さなだむしと風土病 263
一 広節裂頭条虫 265
  熊のふんどし/裂頭条虫とは/感染と症状/その他の裂頭条虫類
二 有鈎条虫と無鈎条虫 272
  重役のてんかん/虫の形状/発育史と感染経路/病害/予防
  さなだむしの駆除
三 エキノコックス症(包虫症) 280
  包虫とは/礼文島の包虫症

第七章 線虫と風土病 283
一 十二指腸虫病(鈎虫症) 285
  奄美の検便作業/鈎虫とは/発育史と感染経路/病害
  検査法/治療/予防/分布
二 糞線虫病 303
  島流し/自ら実験台に/分布/感染と症状/予防
三 鰐口虫病 313
  南京領事館病/本家はタイ国/日本への輸入/発育史
  感染経路 ─ ライギョの刺身/症状/治療と予防
あとがき

■「まえがき」(冒頭から終わり近くまで)
  風土病論の立場から日本の国土を眺めると、それには、たいへん な特色があることに気がつく。
  アジア大陸の東側に南北に細長い列島を形成して、寒帯から亜熱 帯にわたり、変化に富んだ気象、地形に恵まれて、その面積こそ狭 少であるが、動植物相はヨーロッパ全土の数倍にも達する種類を包 含し、この土地にすむ人はその数も多く、生活様式もさまざまなで ある。そこには自然環境としても、風俗文化のうえからも、ヨーロ ッパやアメリカとは相違して、東南アジアの国々と共通する部面が 多くみられるのみならず、さらに、これらとは永く海に隔てられて、 日本独特の自然と文化さえはぐくまれてきた。
  風土病とは、これら自然のあたえる特異な環境と、人間社会にお ける風俗習慣とが織りなす複雑なつながりのなかに派生した、地方 的に限局された特殊な疾患を意味する。その発生は、いわゆる僻地 に多い。僻地なるが故に発生する風土病もあれば、風土病のあるが 故に依然僻地である地域もある。

  私は職を大都会のまん中にある大学研究所に奉じながら、いつし か、好んでこうした僻地を訪れ、風土病に悩む人たちと身近に接し、 さらに、その人たちをとりまく自然の姿を究明することに興味を覚 えた。こうした人たちの多くは、けっして自ら都会の大病院を訪れ ることもなければ、声を大にしてわが悩みを天下に訴えることもし ない。甚だしきは、わざわざ膝を屈して病状を尋ねるわれわれにさ え、その悩みを秘めようとする。風土病の探求には、その解明に必 要な科学知識を身につけた研究者たちが、自らの経費と資材のぎせ いにおいて、こうした僻地の旅をつづけるよりほかない。
  私は本書に、日本の風土病として、ごく一部にすぎないが、代表 的なもののいくつかをあげて、その本態を論じ、予防や治療の指針 を示すことを試みた。もとより、医学を専修せんとする学生諸氏に 教科書を提供するつもりではない。たとえ、その数は僅かであろう とも、日本でインテリと自任する方々の教養の書として、また、こ のなかのいくたりかが、将来こうした問題を政治的に、あるいは自 然科学的に解決してゆくために働いてくれることを期待しながら筆 をすすめた。

■一言:
この本は、図書館で借りた本です。つい先日は3000円ほどで販売 されていたのですが、手ごろな価格での出品は現時点ではありま せん。

■書評:
るびりん書林 別館

○■カンジ―言葉を持った天才ザル■2015年08月10日 11:37

発話能力と言語を理解する能力の違い、人間と他の動物に共通する認知システム


スー サベージ・ランボー (著), 加地 永都子 (翻訳)
単行本: 239ページ
出版社: 日本放送出版協会 (1993/03)

■内容(「BOOK」データベースより)
彼はボノボ(ピグミーチンパンジー)のカンジ。覚えた英単語は約1000語。日常生活にはほとんど不自由しません。本書は気鋭の女性科学者であるランボー博士が、カンジとの出会いから現在までの4500日を綴った驚異と感動の手記です。

スー・サベージ・ランボー
一九四六年、アメリカ、ミズーリ州生まれ。 オクラホマ大学で心理学を専攻し、博士号を取得。
現在、ジョージア州立大学言語研究センターにおいて、霊長類の言語能力と知覚についての研究を進めています。
夫君のデュエイン・ランボー博士は同言語研究センター所長でもあります。
この本は日本の読者のために、初めて書き下ろされました。
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
序にかえて ― 河合雅雄
日本の読者へ ― スー・サベージ・ランボー
第一章 ボノボは愛することが好きなサル 10
・私が言語研究センターでカンジと初めて出会ったとき、彼はまだ生後六カ月。 両親はザイールから連れてこられたが、彼はアメリカ生まれのアメリカ育ちだ。
第二章 境界を越えたサル、カンジ 20
・カンジは新たに二人の母親を得た。それは養母のマタタと、彼にすっかり()きつけられた私だった。 こうして三者の奇妙な生活が始まった。
第三章 ボノボは言葉を学べるか 29
・サルは言葉を学べるのか、サルとヒトはコミュニケーションできるのか。 私たちは、この困難な実験に「レキシグラム」という装置を使って挑戦することになった。
第四章 母と子の絆 47
・マタタの教育方針は自由放任主義。そんなマタタのもとでカンジは元気に育っていく。 しかし、ある日マタタが他の研究所へ送られることになる。
第五章 カンジは秘密をもっていた 59
・マタタの姿が消えた日、私たちの心配をよそに、カンジは驚くべき能力を示しはじめた。 そこには、私に向かって「話しかける」類人猿がいた。
第六章 森へ行く 70
・研究センターの隣の二〇ヘクタールに及ぶ原生林には、カンジのために小道が敷かれ簡単な小屋がいくつもつくられた。 そして、ここを散歩することが、私たちの最高のお楽しみとなった。
第七章 カンジの朝 81
・カンジの好奇心は、朝目覚めると同時にフル回転で発揮される。 ゲームに熱中し、外部からの来訪者を観察し、鏡に向かって百面相をして見せる。そんなカンジの一日。
第八章 チェイス 100
・カンジのもっともお気に入りのゲームの一つが「チェイス」(追いかけっこ)。 スローモーションにしてみたり、かくれんぼと組み合わせてみたり、楽しみ方はいろいろだ。
第九章 カンジが泣いた 124
・マタタがもどってきた!睡眠薬で眠らされ、小さな檻に押し込められて。 そのことを伝えられたカンジは、電気に触れたかのように私をみつめた。
第十章 カンジの夜 133
・ベッドルームに入ったカンジは、何枚もの毛布を使って寝床をこしらえる。 寝つくまでのひとときを、この中で大好きなビデオ鑑賞にあてるのが彼の夜の日課だ。
第十一章 カンジのひとり言 143
・昼寝の時間や一日の静かなとき、カンジは私たちから距離をおき、キーボードを使ってよく一人で話をしている。 ちらっとかいま見た、その内容は。
第十二章 セオリー・オブ・マインド 158
・成長するにつれて、カンジのコミュニケーションの内容はますます豊かで複雑なものになっていった。 そして、いつしか簡単な文法の能力も身につけていた。
第十三章 「ジャガイモを亀に投げられる?」 185
・言語学者は複雑な相互関係によって組み立てられる象徴的情報を処理できるのは人間だけだという。 だが、カンジはこうした分にもすばらしい反応を示した。
第十四章 サルはどこまでヒトになれるか 211
・カンジは、私たちと共通の祖先が共有していたにちがいない能力について、多くのことを教えてくれる、 ヒトとサルとのミッシングリンクなのだ。

「カンジ」の理解を深めるためのノート 229
ランボー博士と言語研究センター ― 新生玄哉 230
監修を終えて カンジに出会ってしまったヒト ― 古市剛史 233

■見返しの言葉
「サルはヒトの言葉を理解できない」
これが世界の科学者たちの見解でした。
ところが、英文法を理解し、
ヒトと対話するサルが出現したのです。

彼はボノボ(ピグミーチンパンジー)のカンジ。
覚えた英単語は約一000語。
日常生活にはほとんど不自由しません。
本書は気鋭の女性科学者であるランボー博士が、
カンジとの出会いから現在までの
四五〇〇日を綴った驚異と感動の手記です。

■扉の言葉
主人公のカンジはオスのピグミーチンパンジー。
ピグミーチンパンジーは私たちが動物園で見かけるふつうのチンパンジーとは違い、
アフリカのごくかぎられた密林で生きつづけ、
数十年前に発見されて「最後の類人猿」と称されました。
現在ではボノボと呼ばれることが多くなってきています。
両親はザイールから連れてこられましたが、カンジはアメリカのアトランタ生まれ。
生後6カ月の彼が女性研究者の
サベージ-ランボー博士と出会うところから、この手記は始まります。

■一言
外界を同じように知覚し、同じように処理する人と動物

■書評:
るびりん書林 別館

○○森の旅―山里の釣りから〈3〉○2015年08月11日 08:46


内山 節 (著)
単行本: 244ページ
出版社: 日本経済評論社 (1996/05)

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
本書は、大日本山林会の刊行誌『山林』に、「山里紀行」の表題で連載した原稿の1990年4月から96年3月にかけてを収録した。

内容(「MARC」データベースより)
村人が森をつくり、森に村人が支えられる。大日本山林会の刊行誌『山林』に、「山林紀行」の表題で、90年4月から96年3月まで連載した、山里に関する思索を収録。80年、90年刊の「山里の釣りから」の続刊。

?○脳はバカ、腸はかしこい○2015年08月12日 10:27


藤田 紘一郎 (著)
単行本: 219ページ
出版社: 三五館 (2012/10/20)

■商品の説明
内容紹介
バカな脳は自分だけが満足すればいいので、甘いものや煙草やアルコールがやめられず、そのたびに身体(腸)は悲鳴をあげています。人間をコントロールしているはずの脳は、じつはダマされやすい、偏見まみれの自惚れ屋でした。
悠久の生物の歴史では、40億年前にまず腸ができ、そのずっとあと5億年前にようやく脳が誕生。生物と腸とのつきあいは長いものの、脳とのつきあいはまだ短く、それゆえ生物は脳をうまく使いこなせていない。
「腸内環境を整えることでドーパミンやセロトニンなどが脳に運ばれ、良好な精神状態が作られる」とする著者自身の最新研究成果も盛り込み、「脳」と「腸」の関係性について、わかりやすく紐解きます。
出版社からのコメント
「脳」に関わる本は今なお隆盛ですが、そんな脳を一刀両断に切り捨てる書き下ろし作品が登場。本当に大切なのは「脳」ではなく「腸」だった!
内容(「BOOK」データベースより)
腸が脳を支配していた。ダイエットが失敗するのも、タバコがやめられないのも、勉強に弱いのも…腸を鍛えていないから。キセイチュウ博士、最新書き下ろし。

著者について
藤田紘一郎(ふじた・こういちろう)◎1939年、旧満州ハルビン生まれ。東京医科歯科大学名誉教授。人間科学総合大学教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。免疫や伝染病研究の第一人者であり、免疫学を下敷きにしての文明批評にも定評がある。専門医学から下ネタまでを縦横に行き来する軽妙洒脱な文章家としての顔も持つ。『笑うカイチュウ』『清潔はビョーキだ』など著作多数。本書では、「脳論」の一歩先を行く「腸論」の地平を切り拓く。この人の腸が見たい。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
藤田/紘一郎
1939年、旧満州ハルビン生まれ。東京医科歯科大学名誉教授。人間総合科学大学教授。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。免疫や伝染病研究の第一人者であり、免疫学を下敷きにしての文明批評にも定評がある。専門医学から下ネタまでを対象とする文章家としての顔も持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■一言:
微生物たちの活躍する畑と腸の類似性

◎■血液の闇 ― 輸血は受けてはいけない■2015年08月13日 10:24

輸血の危険性と血液ビジネスを指摘した貴重な書


船瀬 俊介 (著), 内海 聡 (著)
単行本: 256ページ
出版社: 三五館 (2014/7/19)

■商品の説明
内容紹介
日本では毎年、120万人が受けている輸血。
しかし、「輸血でしか人は救えない」という医学洗脳の裏で甚大な医原病が続出し、おびただしい生命が奪われている。そして、被害者たちは何の救済も受けられないまま、その死因は闇に葬られてい。輸血とは、現在進行形の巨大薬害だったのだ。
理想の輸血代替液は、輸血が確立するはるか以前に解明され、世界的なニュースとなっていたにもかかわらず、なぜ医学界によって葬られたのか?
輸血によって病人を増やし、感染症を蔓延させ、巨利を貪りたい血液利権、医療利権の思惑を読み解き、輸血の暗部とその背景を白日の下に晒す。
『医学不要論』の内海聡と、『病院で殺される』の船瀬俊介が、それぞれ現役医師と医療ジャーナリストの立場から、医学界の常識を覆す衝撃事実を告発。

出版社からのコメント
「血液の闇」特設サイト
http://www.sangokan.com/book/ketsueki.php

「血液の闇」チラシ画像
http://www.sangokan.com/book/gazo/ketuekichumon.pdf

血液問題に関する行政交渉と記者会見(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=sLPxfpTcqH0
内容(「BOOK」データベースより)
膨大な輸血・血液製剤の利権の背後で、輸血・血液製剤という毒により、おびただしい生命が奪われ、医原病に苦しめられている。その悪意による薬害の犠牲者、被害者たちは原因を一切問われることなく、暗黒の闇に葬られている。医者も患者も気づいていない、医学界最後のタブー。


著者について
船瀬俊介◎ふなせ・しゅんすけ
1950年、福岡県生まれ。医療・環境問題に取り組むジャーナリスト。日本消費者連盟の活動に参加、「消費者リポート」の編集などを経て、独立。
1980年代には化粧品の危険性を、1990年代には電磁波の問題を、2000年代には抗ガン剤の無効性をいち早く告発し、時代の一歩先を行く視点が注目を集める。
現代医療の実態を取材する中で「輸血」の危険性に着目し、本書を執筆。『病院で殺される』『3日食べなきゃ、7割治る! 』など著書多数。
内海聡◎うつみ・さとる
1974年、兵庫県生まれ。筑波大学医学部卒業後、内科医として東京女子医科大学附属東洋医学研究所、東京警察病院などに勤務。精神医療分野での活動において「病を悪化させる精神科医療」の現実を痛感。その全貌を明らかにした『精神科は今日も、やりたい放題』がベストセラーに。その後、積極的な執筆・講演活動で“医学の正体"を伝えるべく奮闘中。「医学にまつわる洗脳の中で輸血の洗脳を振り払うのがもっとも難しかった」と語る。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
船瀬/俊介
1950年、福岡県生まれ。医療・環境問題に取り組むジャーナリスト。日本消費者連盟の活動に参加、「消費者リポート」の編集などを経て、独立。1980年代には化粧品の危険性を、1990年代には電磁波の問題を、2000年代には抗ガン剤の無効性をいち早く告発し、時代の一歩先を行く視点が注目を集める

内海/聡
1974年、兵庫県生まれ。筑波大学医学部卒業後、内科医として東京女子医科大学附属東洋医学研究所、東京警察病院などに勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
はじめに
第1章 こうして輸血で殺される――船瀬俊介
第2章 エホバの証人〝輸血拒否〞事件の真相――内海聡
第3章 放射線照射で「死にかけ血液」注入――内海聡
第4章 輸血がガンを作っていた――船瀬俊介
第5章 血液製剤と感染症で、病院は荒稼ぎ――内海聡
第6章 無輸血手術が世界の流れだ! ――船瀬俊介
第7章 輸血不要論――内海聡
第8章 医学理論を覆す「カントンの犬」の衝撃――船瀬俊介
第9章 吸血ビジネスの大崩壊が始まった――船瀬俊介
第10章 国際赤十字の闇、日赤利権の闇――内海聡
エピローグ 「新医学」の未来に向けて――船瀬俊介

■帯から
医学界最大にして最凶のタブーを告発!
・血液に照射する、致死量をはるかに超える放射線の恐怖
・輸血は、免疫を低下させ、ガンリスクを跳ね上げる
・「報告するのは100人に1人」とんでもない副作用の数々
・「エホバの証人」輸血拒否事件の、知られざる真相
・100年前から存在する「輸血の代替法」はなぜ浸透しないのか?
・血液製剤とそれによる感染症は、医療利権のビジネスモデル
・血液にまつわる赤十字と天皇家の深すぎる闇

■一言:
国際資本家たちの大きな収入源の一つである、医療の闇に迫った、現代人必読の本

■書評
るびりん書林 別館

○■ミクロネシア民族誌(1943年)■2015年08月16日 09:43

当時の南洋庁の協力を得た元海軍大佐による、委任統治領となったミクロネシアの民族誌


松岡静雄 (著)
発行所: 岩波書店
昭和18年1月30日発行
458ページ

■概要
1927年に岡書院から発行された本が、著者の没後岩波書店から新し く発行されたもののようです。
著者については、松岡静雄lに略歴が記されています。

「跋」によると、海外諸国を訪問した経験と手当たり次第に読んだ書 物を元に、岡茂雄氏から南島民族のアウトラインを書いて見ろと頼ま れて『太平洋民族誌』を著したもののミクロネシアについては殆ど触 れなかったそうです。ミクロネシアについての情報は、自国領内であ るのに外国人の報告のみをあてにするのは気のきかぬ話であるとして南洋庁に協力を仰ぎ、パラウ、ヤップ、サイパン、トラック、ポナペ、 クサイ、マーシャルの各地に滞在している南洋庁吏員から調査資料を得たと記されています。
このような経緯で作られた本書は、当時の南洋諸島の様子を知るために貴重な資料であると言えそうです。

■目次(中項目まで)
前篇
第一章 総説 3
一 ポネペ占領 3
二 歴史、地理 8
三 住民 26
四 言語 39
五 伝説 54
六 遺跡 63
七 種族 81

第二章 信仰 92
一 原始信仰 92
二 神 104
(やしろ)および霊代(たましろ) 130
四 祭祀 141
五 託宣卜兆 154
六 護りおよび加持 170
呪詛(マジ)禁厭(ナヒ) 180
八 禁忌、俗信 193

第三章 社会 207
一 政治的組織 207
二 氏族組織 235
三 社会制度 255
四 経済組織 272

第四章 人事 284
一 妊娠分娩 284
二 育児 291
三 性的慣習 297
四 喪葬 305

後篇
第一章 身飾 319
一 被服 319
二 装身 335
三 文身 364
四 随身具 388

第二章 居住 392
一 概説 392
二 公舎 397
三 住宅および付属建物 419
四 内外設備および家具 427

第三章 飲食 431
一 食物 431
二 飲料 446
三 飲食器具 452

第四章 兵器 464
概説
一 槍 465
二 打物 469
三 飛道具 473

第五章 舟楫 478
一 概説 478
二 舟の構造 482
三 舟庫 492
四 航海術 494

第六章 工芸 517
一 原料および工具 517
二 織物 523
三 編物 528
四 彫刻、模象 535
五 珠玉および貝石貨 544

第七章 日常生活 558
一 眠食坐臥 558
二 生業 562
三 娯楽 576

横田卿助序 595
著者跋 599
南洋研究の先覚者松岡静雄大佐を偲ぶ(清野満治) 623 名称および主事項索引 659

■書評
るびりん書林 別館