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○■山の仕事、山の暮らし■2017年07月28日 20:45

山の仕事は多様だ。山岳救助隊、山小屋経営、登山ガイド、ユリの栽培、天然氷の製造。ぜんまいとり、狩猟、サンショウウオとり。養蜂、峠の茶屋、ウルシカキ、炭焼き。山は厳しく、山は自由だ。



高桑 信一 (著)
単行本: 446ページ
出版社: つり人社 (2002/12)

■商品の説明
内容紹介
失われつつある山の民の姿を活写し、単行本刊行時各紙誌で絶賛された高桑信一氏の代表作が、ヤマケイ文庫に!
書名どおり、日本各地で、山で生きる市井の人々の姿を活写した名作です。
もとは「渓流」(つり人社)に連載され、取材期間は10年にも及ぶものでした。
2002年、つり人社から単行本が刊行されると、各紙誌で絶賛されました。
著者の高桑信一氏は、登山を通して独自の視点で「山」を表現してきましたが、本書ではそこで暮らす人の姿が主題となっており、登山の域を超えた作家となる端緒となった作品です。
狩猟をはじめ、山での暮らしが注目される今、本書は新たな価値を帯びています。
高桑信一 1949年、秋田県生まれ。電電公社からNTT勤務を経て02年退社。
「ろうまん山房」を設立してフリーランスに。主に取材カメラマン、ライター、渓流ガイドとして活動する。
著書に「一期一会の渓」「山の仕事、山の暮らし」「希望の里暮らし」(つり人社)「道なき渓への招待」「古道巡礼」(東京新聞出版局)「渓をわたる風」(平凡社)「森と水の恵み」(編著・みすず書房)などがある。 --このテキストは、文庫版に関連付けられています。

著者からのコメント
著者 高桑信一 , 2003/03/07
滅びつつも、逞しく生きる山びとの譜
「山の仕事、山の暮らし」は、「渓流」という雑誌に十年間連載されたものをまとめました。「渓流」は年に二冊の発行ですので、二十人になるはずですが、それが十九人で終わってしまったのは、それだけ山に糧を求めて生きているひとが少なくなったからです。つまりこの本は、滅びゆく山びとたちを綴った本なのです。けれどそこには悲しみがありません。晴朗とした日本の山河と、山に生きるひとびとの、おおらかな生き様があるばかりです。
 446ページという厚い本になってしまったのは、多くの写真を使ったからです。全体の半分近くをモノクロの写真が占めていますので、文だけではなく、目でも楽しんで戴けると思います。多くの方々に読んでいただけたらうれしいことです。
内容(「BOOK」データベースより)
穏やかな時間の流れに支配される、山の暮らし。ゼンマイ採り、炭焼き、サンショウウオ採り、ウルシ掻き…。厳しく、美しい日本の山を仕事の場と選び、そこに暮らす19の物語り。

内容(「MARC」データベースより)
日本の山から姿を消そうとしている山棲みの民たちの暮らしを10年に渡って追い続けた、美しいルポルタージュ。月刊つり人別冊『渓流』で「山に生きる」のタイトルで連載されたものに訂正、加筆する。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
高桑/信一
1949年、秋田県男鹿市生まれ。十代から登山をはじめ、海外の高峰にも足を延ばすが、いつしか日本の風土に還る。奥利根越後沢尾根冬季初登、剱沢大滝完登などの山歴を持つが、この国の原風景に出会う山旅をこよなく愛する。夏は沢登り、冬は雪稜登高を好み、奥利根や会越国境、下田・川内など、原始の姿をとどめる山域に精通する。古道や消えゆく山里の暮らしを追ったルポを、山岳関係の雑誌などに執筆する。2002年から「ろうまん山房」を設立し、フリーランスのライター、カメラマン、山岳ガイドを本業とする。浦和浪漫山岳会会員。埼玉県杉戸町在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
1只見のゼンマイ取り 菅家喜与一 12
2南会津の峠の茶屋 中村源治 34
3川内の山中、たったひとりの町内会長 渡邊慶作 54
4檜枝岐の山椒魚採り 星寛 72
5足尾・奈良のシカ撃ち 井上盛次 94
6只見奥山、夫婦径 佐藤恒作 116
7奥利根の山守り 高柳盛芳 136
8会津奥山の蜂飼い 松本雄鳳 158
9仙人池ヒュッテの女主人 志鷹静代 182
10檜枝岐の雪が極めたワカン作り 平野茂 206
11越後山中に白炭を焼く暮らし 大津勝雄 226
12谷川岳・遭難救助に捧げた半生 馬場保男 252
13尾瀬・冬物語 谷川洋一 276
14森のひとの、夢を育むヒメサユリの花 月田礼次郎 296
15岩手・浄法寺町の漆掻き 佐藤春雄 318
16朝日・飯豊の山々とともに生きる 関英俊 342
17西上州、猟ひと筋の人生 二階堂九蔵 366
18さすらいの果てに黒部に環る 志水哲也 392
19秩父の天然水に魅せられた半生 阿佐美哲男 416

■「はじめに」の冒頭部分
  滝をひとつ越え、瀬音を楽しむようにして流れを遡ると広い台地に出た。渓の奥に残雪を戴いた県境の尾根が横たわり、燃えあがる緑の森の向こうでカッコウの声が谺していた。青い空から、春の光がまっすぐに降っていた。
  「まるで桃源郷のようだね」
  私は思わず仲間たちに呟いた。
  流れにほど近い広場の隅にゼンマイ小屋があった。小屋の前に大きなビニールシートが何枚も敷かれ、褐色に縮んだ、おびただしいゼンマイが干されていた。そのビニールシートの上で、ひとりの女性が一心にゼンマイを揉んでいた。絣のモンペに絣の作業着を着て手甲を付け、日よけの菅笠をかぶっていた。それはまるで一枚の絵であった。森と流れとそのひとが、ひとつの風景を醸しだしていた。
  私たちに気づいた彼女は、作業の手を休めてふり返った。
  「どこからきやった。お茶でも呑んだらいいべ」
  そう声をかけてくれたのである。

■書評
山の仕事は多様だ。山岳救助隊、山小屋経営、登山ガイド、ユリの栽培、天然氷の製造。ぜんまいとり、狩猟、サンショウウオとり。養蜂、峠の茶屋、ウルシカキ、炭焼き。山は厳しく、山は自由だ。