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○■動物の計画能力: 「思考」の進化を探る■2017年10月19日 22:00

哺乳類と鳥類という、ともに体温を維持し、育児を行う種にみられるプランニング能力の収斂進化をさぐる



宮田 裕光 (著)
単行本: 196ページ
出版社: 京都大学学術出版会 (2014/4/3)

商品の説明


内容紹介


動物の思考能力はどのように進化したのだろうか。この謎を解く鍵となるのが、系統位置や脳構造がヒトと大きく異なる鳥類の「思考」である。綿密な行動実験に基づき、鳥類の行動計画能力の存在とその特徴を解き明かす。

内容(「BOOK」データベースより)


動物の思考能力はどのように進化したのだろうか。この謎を解く鍵となるのが、系統位置や脳構造がヒトと大きく異なる鳥類の「思考」である。綿密な行動実験に基づき、鳥類の行動計画能力の存在とその特徴を解き明かす。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)


宮田/裕光
青山学院大学ヒューマン・イノベーション研究センター助教。京都大学文学部人文学科卒業、同大学院文学研究科博士後期課程修了。2009年3月、博士(文学)。日本学術振興会特別研究員、(独)科学技術振興機構ERATO研究員を経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

目次


口絵 i

第1章 動物の思考と計画能力 1
1-1 動物の思考研究とその歴史 1
1-2 思考の定義とプランニング 2
1-3 ヒト以外の動物は計画能力を持つか 8
1-4 動物の計画の能力の実験的研究 9
1-5 本書の研究と構成 24

第2章 回り道:ハトは経路を事前計画するか 27
2-1 ハトのプランニング能力を研究する方法 27
2-2 コンピュータ画面上の空間移動と回り道 29
2-3 すでに解き方を知っている課題の特定 38
2-4 ハトの回り道行動とプランニング 46

第3章 先手読み:ハトの短期的計画と修正能力 49
3-1 迷路課題を用いた新たなテスト手続き 49
3-2 十字形迷路によるハトの先手読み 50
3-3 手裏剣形迷路による事前計画 62
3-4 ハトの短期的計画能力とその進化 67

第4章 道順計画:複数地点を訪れるハトの経路選択 73
4-1 巡回セールスマン問題と動物の道順選択 73
4-2 2個の目標はどの順で訪れるか 77
4-3 3個の目標をいかに効率的に巡回するか 80
4-4 目標配置に関わらず選ぶ経路は一定か 87
4-5 群を形成した目標を最初に訪れるか 89
4-6 回り道があると経路を変えるか 93
4-7 ハトの経路選択とその方略 97

第5章 鍵開け:キーアの事前計画と生活史 103
5-1 キーアの生活史と認知能力 103
5-2 スライド式の事前観察板を用いた課題 108
5-3 1枚の事前観察板を用いた課題 118
5-4 小さな事前観察板を用いた課題 121
5-5 2段階の鍵操作を必要とする課題 124
5-6 キーアの計画能力とそれを規定する要因 128

第6章 種間比較:幼児の迷路計画と抑制 133
6-1 ヒト幼児の計画能力と鳥類との比較 133
6-2 幼児の回り道行動とプランニング 135
6-3 十字形迷路による幼児の先読みと抑制 143
6-4 幼児の迷路計画と種間共通の選択圧 150

第7章 思考の進化史を考える 155
7-1 ハト・キーア・幼児のプランニング 155
7-2 脳の進化と思考の発現 159
7-3 鳥類の生態とプランニング 165
7-4 異なる水準の計画と統合的理解 169
7-5 プランニングのメタ認知と意識 171

コラム1 思考は脊椎動物だけのものか? 11
コラム2 行動データの解釈 71
コラム3 問題解決の偏在性 163

文献 177
あとがき 187
図表出典 189
索引 193

結語


  本書では、思考能力の進化について、鳥類やヒト幼児を対象としたプランニング能力の比較研究を通して考察した。動物の生息環境における物理的、社会的選択圧は、一方ではヒトの高度な思考につながる表象操作能力を多様な種に共通して発現させるとともに、他方では当該種それぞれの「思考」のあり方をも規定してきたようだ。今後の研究では、上述の諸視点に加えて、メタ認知、社会性、情動や感情をも含めた多様な心的過程との密接な関わりの中で「思考」の進化史を捉えることがますます重要となろう。とりわけ本節で論じた思考のメタ認知は、意識のような科学的な捉え方の難しい問題を、進化的視点から実証的に扱うことを可能にする意味で非常に有望といえる。ヒトの思考ひいては意識の進化史をこのように問い進めていくことは、われわれが自身のあり方を見つめ直すひとつの契機ともなるに違いない。

書評


哺乳類と鳥類という、ともに体温を維持し、育児を行う種にみられるプランニング能力の収斂進化をさぐる