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○■日本の風土病 ─ 病魔になやむ僻地の実態■2015年08月09日 10:55

ツツガ(恙)ムシ、デング熱、マラリアなどの実態調査を行った貴重な書


佐々 学 (著)
発行所: 法政大学出版局
昭和34年12月25日発行
328ページ

著者略歴
佐々学
大正五年三月十四日 東京神田に生る
昭和十一年三月 第一高等学校卒業
昭和十五年三月 東大医学部卒業 直ちに伝研に入る
昭和二十一年九月 医学博士
昭和二十二年十二月 東大助教授
昭和二十三年八月 アメリカに留学(一年間)
昭和三十年十月 日本医学団員として中共訪問(一ヵ月)
昭和三十二年十一月 タイ、台湾、沖縄を訪問(三ヵ月)vy 昭和三十三年十一月 東大教授
昭和三十四年六月 メリーランド大学の招聘によりアメリカ訪問(三ヵ月間)
[著書]
「蚊を調べる人の為に」(東京出版社)
「人体病害動物学」(医学書院)
「恙虫と恙虫病」(医学書院)
「日本の蚊」(DDT協会)

■目次
まえがき
第一章 風土病論の立場から 1
一 社会の盲点 2
二 風土病の科学 5
三 風土病の成り立ち 10
四 寄生虫病における風土の影響 18

第二章 ダニと風土病 23
一 裏日本のツツガムシ病 26
  はじめに/「つつが」の来歴/研究のはじまり/
  疾病と感染経路/分布と発生状況/予防と治療
二 七島熱 ─ 八丈デングの探求 50
  きっかけ/新型ツツガムシ病の発見/伝播者決定への傍証
  八丈だけではない/七島熱研究が教えたもの
三 土佐の「ほっぱん」 64
  はじめに/沢田メモ/伊田部落調査/ほかの土地にも

第三章 昆虫と風土病 71
一 バンクロフト糸状虫病(フィラリア、草ふるい、象皮病) 74
  北国にもフィラリアがある/フィラリアとは/流行地
  症状/感染と発病/予防と治療/愛媛のフィラリア退除
ニ 小島のバク(マレー糸状虫病) 102
  太平洋上の孤島をたずねて/バクの探究/バクの本態
  バクの疫学/感染経路は/効きすぎた特効薬/予防対策の試み
三 マラリア(おこり) 119
  日本の「おこり」/「おこり」の本態/マラリアの媒介蚊
  「おこり」はなぜなくなったか/カナリアの貢献/台風の恩恵
四 デング熱と黄熱 129
  デング熱来襲/南海にて/デング熱の流行相/黄熱の流行相
  ネッタイシマカは日本から姿を消したか/蚊を飼う話
五 日本脳炎 141
  蚊の岡山/日本脳炎の疫学/日本脳炎の蚊媒介説
  ウィルスの潜伏場所
六 ブユとその駆除 148
  研究と行政のつながり/研究のきっかけ/ブユの生態
  ブユの被害/ブユを防ぐには/ブユの駆除法

第四章 野生動物と風土病 163
一 野兎病 165
  野兎病発見のエピソード/流行地と感染経路/病原体
  疾病と治療/ノウサギとダニと
二 ネズミと風土病 179
  ネズミの種類と生態/ネズミと伝染病
三 ハブとマムシ 185
  用心棒/ハブの性質/ハブの咬症/統計
  ハブ咬症の治療と対策/マムシ

第五章 ジストマ(吸虫)と風土病 201
一 日本住血吸虫病 204
  ぶどうと地方病/片山記/研究史/どうしてかかるか
  症状/流行の現状/どうして防ぐか/あとがき
二 肝ジストマ病(肝吸虫病) 229
  児島湾地帯/黄牛病記/研究の来歴/肝ジストマとは
  流行地の分布/病害/診断と治療/予防
三 肺ジストマ(肺吸虫病) 243
  沖縄にも/来歴/病害/感染経路/治療と予防/診断
  流行地/南予の肺ジストマ紀行

第六章 さなだむしと風土病 263
一 広節裂頭条虫 265
  熊のふんどし/裂頭条虫とは/感染と症状/その他の裂頭条虫類
二 有鈎条虫と無鈎条虫 272
  重役のてんかん/虫の形状/発育史と感染経路/病害/予防
  さなだむしの駆除
三 エキノコックス症(包虫症) 280
  包虫とは/礼文島の包虫症

第七章 線虫と風土病 283
一 十二指腸虫病(鈎虫症) 285
  奄美の検便作業/鈎虫とは/発育史と感染経路/病害
  検査法/治療/予防/分布
二 糞線虫病 303
  島流し/自ら実験台に/分布/感染と症状/予防
三 鰐口虫病 313
  南京領事館病/本家はタイ国/日本への輸入/発育史
  感染経路 ─ ライギョの刺身/症状/治療と予防
あとがき

■「まえがき」(冒頭から終わり近くまで)
  風土病論の立場から日本の国土を眺めると、それには、たいへん な特色があることに気がつく。
  アジア大陸の東側に南北に細長い列島を形成して、寒帯から亜熱 帯にわたり、変化に富んだ気象、地形に恵まれて、その面積こそ狭 少であるが、動植物相はヨーロッパ全土の数倍にも達する種類を包 含し、この土地にすむ人はその数も多く、生活様式もさまざまなで ある。そこには自然環境としても、風俗文化のうえからも、ヨーロ ッパやアメリカとは相違して、東南アジアの国々と共通する部面が 多くみられるのみならず、さらに、これらとは永く海に隔てられて、 日本独特の自然と文化さえはぐくまれてきた。
  風土病とは、これら自然のあたえる特異な環境と、人間社会にお ける風俗習慣とが織りなす複雑なつながりのなかに派生した、地方 的に限局された特殊な疾患を意味する。その発生は、いわゆる僻地 に多い。僻地なるが故に発生する風土病もあれば、風土病のあるが 故に依然僻地である地域もある。

  私は職を大都会のまん中にある大学研究所に奉じながら、いつし か、好んでこうした僻地を訪れ、風土病に悩む人たちと身近に接し、 さらに、その人たちをとりまく自然の姿を究明することに興味を覚 えた。こうした人たちの多くは、けっして自ら都会の大病院を訪れ ることもなければ、声を大にしてわが悩みを天下に訴えることもし ない。甚だしきは、わざわざ膝を屈して病状を尋ねるわれわれにさ え、その悩みを秘めようとする。風土病の探求には、その解明に必 要な科学知識を身につけた研究者たちが、自らの経費と資材のぎせ いにおいて、こうした僻地の旅をつづけるよりほかない。
  私は本書に、日本の風土病として、ごく一部にすぎないが、代表 的なもののいくつかをあげて、その本態を論じ、予防や治療の指針 を示すことを試みた。もとより、医学を専修せんとする学生諸氏に 教科書を提供するつもりではない。たとえ、その数は僅かであろう とも、日本でインテリと自任する方々の教養の書として、また、こ のなかのいくたりかが、将来こうした問題を政治的に、あるいは自 然科学的に解決してゆくために働いてくれることを期待しながら筆 をすすめた。

■一言:
この本は、図書館で借りた本です。つい先日は3000円ほどで販売 されていたのですが、手ごろな価格での出品は現時点ではありま せん。

■書評:
るびりん書林 別館

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