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?●かくれた次元●2015年08月18日 09:46


エドワード・T・ホール (著), 日高 敏隆 (翻訳), 佐藤 信行 (翻訳)
単行本: 304ページ
出版社: みすず書房 (1970/10/30)

■内容
今日の世界では、われわれは、多くの情報源からのデータに圧倒され、さまざまの文化に接触し、世界中いたるところで人びとにインヴォルヴされてゆく。それとともに、世界全体とのかかわりが失われているという意識もしだいに強くなっている。

本書は、人間の生存やコミュニケーション・建築・都市計画といった今日的課項とふかく結びついている“空間"利用の視点から人間と文化のかくれた構造を捉え、大量のしかも急速に変化する情報を、ひとつの統合へと導く指標を提供するものである。

ホールは、二つのアプローチを試みる。一つは生物学的な面からである。視覚・聴覚・嗅覚・筋覚・温覚の空間に対する鋭敏な反応。混みあいのストレスから自殺的行為や共食いといった異常な行動にかられるシカやネズミの例をあげ、空間が生物にとっていかに重要な意味をもつかを示す。人間と他の動物との裂け目は、人びとの考えているほど大きくはない。われわれは、人間の人間たるところがその動物的本性に根ざしていることを忘れがちである。

もう一つは文化へのアプローチである。英米人・フランス人・ドイツ人・アラブ人・日本人などの、私的・公的な空間への知覚に関して多くの興味ぶかい観察を示し、体験の構造がそれぞれの文化にふかく型どられ、微妙に異なる意味をもつことを示す。それはまた疎外や誤解の源でもあるのだ。

このユニークな把握は、人間に人間を紹介しなおす大きな助けとなり、急速に自然にとってかわり新しい文化的次元を創り出しつつあるわれわれに、新鮮な刺激と示唆をあたえてやまない。

■目次(大項目)
日本版への序 i
まえがき iii

第一章 コミュニケーションとしての文化 3
第二章 動物における距離の調整 13
第三章 動物における混みあいと社会行動 37
第四章 空間の知覚―遠距離受容器 目・耳・鼻 62
第五章 空間の知覚―近距離受容器 皮膚と筋肉 76
第六章 視覚的空間 95
第七章 知覚への手掛かりとしての美術 111
第八章 空間のことば 130
第九章 空間の人類学―組織化のモデル 145
第十章 人間における距離 160
第十一章 通文化的関連におけるプロクセミックス―ドイツ人・イギリス人・フランス人 182
第十二章 通文化的関連におけるプロクセミックス―日本とアラブ圏 206
第十三章 都市と文化 228
第十四章 プロクセミックスと人間の未来 249
・形対機能、内容対機能/人間の生物学的な過去/解答の必要性/文化をぬぎすてることはできない

付録 遠近法の一三のヴァラエティーに関するジェームズ・ギブスンの論文の摘要 261
訳者あとがき 269
文献 I

■まえがき(中ほどの一段落)
  私は人類学者なので、人間行動のある面について、その端緒に立ちかえり、その発端となった生物学的な亜構造(サブストラクチュア)を探りだしてみるくせがついている。 このアプローチは、人間も他の動物界のメンバーと同じように、最初も最後も、そしていつも、自分が一個の生物であるという事実の囚人であるということを強調する。 人間を他の動物から切離す裂目は、多くの人が思っているほど大きくはない。 われわれが動物について、そして進化が生みだしてきた複雑な適応のしくみについて多くを知るにつれて、そのような研究はもっと難解な人間の問題の解決にとって、ますます深い関連をもつようになってくるのである。

■一言:
「空間が生物にとっていかに重要な意味をもつかを示す」

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