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◎■身体の人類学■:「制服」からの脱却2016年07月12日 17:07

超越的世界へ上昇しようとする知ではなく、「生」と一体化した「知」のあり方


菅原 和孝 (著)
単行本: 311ページ
出版社: 河出書房新社 (1993/01)

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
問わねば誰もが知っているはずのまじわる身体の経験を追い人間とその社会の隠された生き方をとらえる学問の冒険考。

著者について
菅原和孝(すがわら・かずよし)
一九四九年、東京生まれ。京都大学理学部卒業。現在、京都大学総合人間学部助教授。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
まえがき 1
序章 フィールド・ワーク 13
I 身体から見えること
第一章 身体の人類学へ向けて―デカルト的袋小路からの脱出 48
第二章 身体が表示すること―男と女、おとなと子供 60
第三章 身体のなわばり―訪問と挨拶 92
第四章 儀式化される身体―理論化への試み 121
第五章 遊ぶ身体―「あたりまえ」のなかの謎 158

II 身体と言葉
第六章 「しゃべる身体」へ―グウィ自身はどう感じているのか 184
第七章 関係としての身体―ふれることへの意味づけ 197
第八章 身体のイディオム―「身ぶり」と「すがた」への言及 217
第九章 「性」としての身体―愛と嫉妬 248

終章 フィールドから帰って 283
注 294
あとがき 308

■「まえがき」の冒頭部分
  二十歳(はたち)になるまえのころだったろうか、ある雑誌で、アフリカ南部のカラハリ砂漠でくらした日本人の人類学者の寄稿したカラー写真入りの記事を、わくわくしながら読んだ。
  そこには、広大な原野のただなかでカモシカを狩り、野生の植物を採集して生きている人々のことが生き生きと語られていた。 豊かな胸をした娘が、てれくさそうに微笑みながら木の実を摘んでいる写真を見つめ、私は、自分の求めているのはこのような世界ではなかったのかと、憧れに胸を熱くした。
  それからおよそ一〇年後、私はいろんなめぐりあわせで、この「ブッシュマン」とよばれる人たちのもとで調査を始めることになった。 それからまた、さらに一〇年近い歳月が流れてしまった。 そのあいだ、私は四度にわたりカラハリ砂漠に足を運び、足かけ二年に近い歳月をかれらとともにすごした。
  この本では、これらのフィールド・ワークを通じて、私がこだわりつづけてきた「身体」というテーマについて語ってみたい。 具体的にいえば、かれらの日常生活のなかで起こっている、「からだのふれあい」「(シラミ)とり」「ふさけあい」「けんか遊び」「挨拶」「おしゃべり」といったありふれた行動を徹底的に、しつこく観察することによって、人と人とが生身の身体として直接的にかかわりあう、その経験の成り立ちを明らかにしたい。 さらに、このような「身体の経験」という「基礎」から、この人たちの社会とその生きかたの本質をとらえなおしてみたい。

■書評
るびりん書林 別館