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△●考える寄生体―戦略・進化・選択●2016年05月21日 16:11

寄生体を通じて知る自然界の姿


著者:マーリーン・ズック(Marlene Zuk)
翻訳:藤原 多伽夫(ふじわら・たかお)
出版社: 東洋書林
2009年8月28日発行
357ページ

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
病気はどこにでも存在する。どんな生き物でも病気になるし、それから逃れられる生き物はいない。一方人間は病気をもたらすウイルスや細菌を撲滅しようと努めてきた。しかしちょっと待ってほしい。病気は重力と同じように、うまく共存できるようになる「力」だとしたらどうだろうか。本書では、進化生物学の視点から、ダーウィン医学の紹介に始まり、感染症と薬剤耐性、メスがオスを選ぶ条件、衝撃的な宿主の操作まで、機知に富んだ語り口で新たな寄生体像を議論する。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ズック,マーリーン
カリフォルニア大学サンタバーバラ校で生物学を学ぶ。1986年、ミシガン大学でコオロギの行動と寄生者についての研究により博士号を取得(動物学)。求愛行動においてメスはオスの寄生体耐性を識別し選択するとした「ハミルトン=ズックのパラサイト仮説」(指導教官ウィリアム・ハミルトンとの共同研究)で知られる。現在、カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)自然科学農学部教授。専門は行動生態学

藤原/多伽夫
1971年、三重県生まれ。1993年、静岡大学理学部卒業。実務翻訳会社勤務を経て現在翻訳家。自然科学、動物、環境、考古学など幅広い分野の翻訳と編集に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
01章 医者に進化論が必要な理由 26
腰痛は妥協の産物/熱は下げたほうがいい?/病気より悪いもの/石器時代ダイエットは有効か/遺伝病の意外な効用

02章 寄生虫は敵か味方か 54
アレルギー疾患の「衛生仮説」/T細胞の働き/寄生虫の効用を探る/根絶をあきらめたWHO/体内は豊かな熱帯雨林/清潔さと病気は紙一重

03章 感染症と進化 84
病原体は徐々に弱くなる?/大迷惑な「実験」/病気の重さはコントロールできる?/鳥インフルエンザは人間の脅威となるか/防御をすり抜ける病原体

04章 性をめぐる終わりなき戦い 106
なぜ「性」が必要なのか/進化のスピードと性の関係/健康暇なし/赤の女王仮説を検証する/性はただ、そこにある

05章 セックスでうつる病気 126
性感染症もいろいろ/動物の性の悩み/相手は多いほうがいい?/ナイトクラブと性感染症/性感染症の未来/微生物が与えてくれるかすかな希望

06章 男は病弱、女は長生き 154
オスであること自体が健康リスク/男女の差は何か/つらくて短いオスの一生/男が長生きする日は来るか

07章 メスに選ばれる条件 176
尾羽はきれいなだけじゃない/再び寄生虫の登場/メンドリの判断/人間に毛がない理由/美しければ健康なのか/男性ホルモンの真実/初心者(あるいは生態学者)のための免疫学入門/鳴き声と脾臓ととさかの関係/富めるものが勝つ/男性ホルモンとジャンクフードの共通点/昆虫のオスも同じ?/恋するってつらい

08章 心と美の関係 220
あざやかな色は健康の証し?/ハゲワシの「化粧」の秘密/男性ホルモンの呪縛は解けるか/美しさとはいったい何だろう/肌の歴史の過ち/健康は外見に表れる?/美しさだけがすべてじゃない

09章 健康を保つには 250
土を食べる理由/スパイスの抗菌作用/胃腸の気持ち/かぐわしき鳥の巣/グルーミングの功罪/みんなで病気を予防/自分の病気は自分で治す

10章 新興感染症の真実 286
過去の感染症/病気は忘れたころにやってくる/人にも動物にもうつる病気/生物多様性と病原体汚染/本当の新興感染症とは/心の病と感染症

11章 操られる宿主 320
遺伝子の「長い腕」/宿主を操る寄生虫/蚊やノミも被害者/ふつふつとわき上がる怒りの謎/操る者を操る/やっぱり操られていた/痛みと寄生者/交通事故とトキソプラズマの関係/寄生者の声に耳をすませよ

謝辞 350
訳者あとがき 352

索引 巻末001
参考文献 巻末018

■「はじめに」の中間部分より
仮に、肺を攻撃して人の命を奪うおそろしい細菌がいるとしよう。肺の壁の粘液がこの細菌にとって通り抜けにくいなど、細菌の侵入を妨げる肺をもつ人は、抵抗力がなくて死んでいく人よりも子どもを残す可能性が高く、この粘液の遺伝子を次世代に受け渡せる。一方で細菌には、こうした粘液の中で生き延びる変異型が登場し、やがてこの型の細菌が大勢を占めるようになる。そうなると今度は肺のほうも、かの対策をとって、たとえば細菌の成長を妨げる化学物質などを生産して、抵抗力を高めるだろう。やられたら、やりかえす。その繰り返しだ。私たちがどんな対策をとっても、細菌を完全に消すことはおそらくできない。だが、逆に言えば、細菌が人間のすべての防御を破ることもまた、できないはずだ。(19ページ)

■書評
別館

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