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○■パンドラの種──農耕文明が開け放った災いの種■2016年05月01日 08:24

育てるという決断がもたらした影響の大きさ


著者:スペンサー・ウェルズ
翻訳:斉藤隆央
出版社: 化学同人
2012年1月31日発行
283ページ

■商品の説明
内容紹介
1万年前,それまで狩猟採集民だった人類は,農耕を始めた.この生活スタイルの変化は,繁栄する現代社会を形づくったと同時に,さまざまな負の側面をもたらした.肥満やうつ病などの肉体的・精神的な病,人口の過密や環境破壊,貧富の格差や民族間の争い.著者は,遺伝学と人類学の知識と経験を元に,われわれの来た道をたどり,パンドラの箱に残された希望を示す.人類史に興味のある人にはもちろん,現代生活の歪みを感じている人にも勧めたい.

出版社からのコメント
現代の狩猟採集民,タンザニア・ハザァベ族の「多くを望まない」という価値観は,震災を経験した日本人にとって,現代生活を省み,これからの生き方を考える参考になるはずです.

著者について
スペンサー・ウェルズ
ナショナル・ジオグラフィック協会の協会付き研究者で、コーネル大学においてフランク・H・T・ローズ'56クラス記念教授に選出されている。彼の率いるジェノグラフィック・プロジェクトは、世界中の人々から数十万に及ぶDNAサンプルを集めて分析し、われわれの祖先がどのように地球に住み着いていったのかを明らかにしようとしている。ウェルズはハーヴァード大学で博士号を取得し、スタンフォード大学とオックスフォード大学でポスドクの研究をおこなった。これまでに出した著書は、本書のほかに、『アダムの旅』(和泉裕子訳、英治出版)の2冊。ワシントンDCに、ドキュメンタリー映像製作者の妻と暮らしている。v

斉藤 隆央(さいとう たかお)
翻訳者。1967年生まれ。東京大学工学部工業化学科卒業。化学メーカー勤務を経て、現在は翻訳業に専念。訳書に、ニック・レーン『生命の跳躍』、『ミトコンドリアが進化を決めた』(以上みすず書房)、ミチオ・カク『サイエンス・インポッシブル』、『パラレルワールド』(以上 NHK出版)、ピーター・アトキンス『ガリレオの指』、オリヴァー・サックス『タングステンおじさん』(以上早川書房)、アンドルー・ノール『生命 最初の30億年』、マット・リドレー『やわらかな遺伝子』、『ゲノムが語る23の物語』(共訳、以上紀伊国屋書店)、ジョン・グリビン『ビジュアル版 科学の世界』(東洋書林)ほか多数。

■目次
まえがき vii
第1章 地図にひそむ謎 1
イリノイ州シカゴ/遺伝子のビーズ/変曲点/
副産物をふるいにかける/なぜそうしたのか?

第2章 新しい文化が育つ 31
ノルウェー、スタヴェンゲル/空っぽの罠/
決壊したダム/山と谷/重複の重要性/社会のガン

第3章 体の病 79
ドリウッド/倹約遺伝子型と贅沢な暮らし/三つの波/
ゲノムと環境/炭水化物と虫歯/テネシーの話へ戻ろう

第4章 心の病 119
オーストラリア、マリア・グギング/言語障害/
火山とマクロ突然変異/現代の暮らしの通奏低音/未来へ向けて

第5章 遺伝子テクノロジー 161
ダービシャー/加速する傾向/干し草にひそむ針/
望むのも慎重に/ウィルスと、アリと、嫌悪

第6章 熱い議論 199
ツバル/京都議定書問題の最前線/キャップを手にして/
熱い議論/夏のない年/必要は発明の母/海へ戻る

第7章 新しいミトスへ向かって 241
タンザニア、エヤシ湖/囚人、メタ倫理学、強欲/原理主義/
フェイスブックと狩猟採集/多くを望まない

謝辞 279
訳者あとがき 281
参考文献 13
索引 1

■「まえがき」の最後の部分
過去五万年の人類史で最大の革命と言えるのは、インターネットの登場ではなく、啓蒙運動の種から芽生えた産業革命の進行でもなく、現代の長距離移動手段の発達でもない。世界の何か所かに住む少数の人が、自然の設定した制約を甘受してその場の食料を手に入れるのをやめ、自分たちの食料を育てはじめたときが、そうなのだ。この育てるという決断が、われわれ人類になにより広範な影響を及ぼし、これから本書で検討する現象を生み出した。こうした変化の結果として伸ばした能力がある一方、われわれはある程度謙虚さも身に付けなければならない。少数のテロリストが諸国民の精神に恒久的なダメージを与えたり、単純そうに見える決断が遠い未来の世代の遺伝体質に影響したり、われわれの行為の結果、過去六〇〇〇万年のどの時点よりも多くの種が絶滅の危機に瀕していたりする今日の世界では、じっくり考えて、大きな欲求が大きな結果を生むことを理解する必要があるのだ。


■書評

別館

○■あふりかのたいこ■2016年05月04日 08:54

けものに まじれ


瀬田 貞二 (著), 寺島 龍一 (イラスト)
福音館書店 1966年12月

■商品の紹介
内容
太鼓が大好きな男の子タンボは、村にやってきた白人の男が無闇に動物を殺すのを見て、動物たちを遠くに逃がすように太鼓をたたいて合図を送りました。翌日から、動物が一匹も見つからなくなりましたが、一頭だけ現れた見事なインパラを、男とともに追っていくと、森の池のまわりには、命の水を飲むたくさんの動物が……。アフリカを舞台に自然への畏敬と命の尊さを描いた絵本。(福音館書店HPより)

■書評
別館

○■アナーキスト人類学のための断章■2016年05月06日 22:08

「グローバル ジャスティス運動」


デヴィッド グレーバー (著), 高祖 岩三郎 (翻訳)
単行本: 197ページ
出版社: 以文社 (2006/10/31)

■商品の説明 内容紹介
―変革はゆっくりと、だが着実に進んでいる―

ネグリ=ハート(『〈帝国〉』『マルチチュード』)以降の最重要人物がついにここにベールを脱ぐ。現在、10ヶ国語への翻訳が進行中の当書は、今後、思想の〈語り口〉を一変させるほどの力を持っている。この11月には初の来日を果たし、早くも各紙(誌)からの依頼が続々舞い込むグレーバーの盟友・高祖岩三郎による初邦訳。アナーキズム&人類学の結合から生み出される、どこまでもポジティヴな世界観。

アナーキズム、そして人類学の実践が明らかにするのは、近代以前の「未開社会」と呼ばれる世界が、実はより高度な社会的企画(プロジェクト)によって形成されているという事実である。真の民主主義的な世界の構築に向けて。

内容(「BOOK」データベースより)
アナーキズム&人類学、この魅惑的な結合から編み出される、よりよき世界を創るためのさまざまな術。真に変化しているものとは一体なにか?大いなる思考実験。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
グレーバー,デヴィッド
文化人類学者。活動家―DAN(Direct Action Network)、PGA(People’s Global Action)に参加

高祖/岩三郎
翻訳家、批評家。ニューヨーク在住。Autonomedia、『VOL』編集委員。1980年渡米、以後、画商、グラフィック・デザイナー、翻訳業を勤める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
まだ見ぬ日本の読者へ 自伝風序文 2

どうして学問世界(アカデミー)には、アナーキストがかくも少ないのか? 34
・だがそれはアナーキスト理論がありえないということを意味しない42
・・小マニフェスト 反政策
・・小マニフェスト 反ユートピア主義に反対する

グレーブズ、ブラウン、モース、ソレル 50

すでにほとんど存在しているアナーキスト人類学について 61
・想像的対抗力の理論に向けて 65
・・第一の事例 第二の事例 第三の事例

壁を爆破すること 83
・予想される諸批判 83
・・小マニフェスト 革命という概念について
・ひとつの思考実験、あるいは壁を爆破すること 94 ・・ひとつの事例
・これらの壁を倒すには何が必要なのか? 105

存在していない科学の諸協議 120
(1)国家論
(2)「国家ではない政体」についての理論
(3)またもや資本主義論
(4)「権力無知」か「権力馬鹿」か
(5)自主的連合のエコロジー
(6)政治的幸福の理論
(7)階層序列
(8)苦痛と快楽 欲望の私有化について
(9)ひとつのあるいはいくつかの疎外論

いくつかのまとまった考え方 137
1 グローバリゼーションと南北不平等の削除 138
2 仕事に対する闘争 140
・補足的ノート
3 民主主義 144
・ひとつの仮定

人類学 ここで作者は自らを養う手に躊躇(ためら)いがちに噛みつく 162
・ひとつの図解

グレーバー現象について 訳者あとがきにかえて ――高祖岩三郎 177
・人物 著作 活動

■扉の文
  以下に続くものは、思考の断片、可能な理論のための覚え書き、小マニフェスト集といったものである。 それらはすべて、現在存在していないが、将来いつか存在するだろうラディカルな理論的身体の概要を垣間見せるためのものである。
  アナーキスト人類学というものが実際に存在せねばならない理由が、確実に存在する。 だからなぜそれが――あるいはいっそ「アナーキスト社会学」が、「アナーキスト経済学」が、「アナーキスト文学理論」が、「アナーキスト政治学」が――存在していないのか? まずそこから考えはじめよう。

■書評
本が好き!

◎■サバンナの動物親子に学ぶ■2016年05月08日 09:14

動物たちに学ぶ命のありかた


羽仁 進 (著), ミロコ マチコ (著)
単行本: 128ページ
出版社: 講談社 (2011/8/23)

■商品の説明
内容紹介
アフリカの動物親子から学ぶ生きるとは何か
親に捨てられ必死に身を隠して生き延びようとする子ライオン、親を求めゾウに立ち向かうヌーの赤ん坊。死は生きてきたことを証明する一瞬の出来事にすぎないのか


「作家 落合恵子氏 推薦」
ここに、すべてのいのちの、原点がある。
寄り添う姿、分かち合う姿、協力し合う姿。
そうして、時には突き放す姿もまた。
わたしたち、人間が学ぶ、暮らしの流儀が
ここに、確かにある。
落合恵子
内容(「BOOK」データベースより)
「生」とはなにか、「死」とはなにか。短くても美しく生きる捨て子ライオン。子どものために死の中に飛び込むヌー。他者の死を悼み弱者をいたわる象…「生」の重さはその長さだけではない。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
羽仁/進
1928年、東京生まれ。共同通信社記者となるが、岩波映画製作所創立に参加し、映画監督となる。代表作に『絵を描く子どもたち』『不良少年』『初恋・地獄篇』『アフリカ物語』など。キネマ旬報作品賞・監督賞、ベルリン国際映画祭特別賞、モスクワ国際映画祭審査員特別賞、日本映画ペンクラブ賞受賞。記録映画保存センター代表理事

ミロコ/マチコ
1981年生まれ。画家・絵本作家。勢いのままに書く動植物を自由な思考と多彩な発想で表現する。大阪・東京を中心に展覧会多数開催。2010年、初の絵本となる『やまのいえで』をカイトプレスより刊行。同年より美術同人誌『四月と十月』の同人となる。第6回ピンポイント絵本コンペ入選。第160回、164回、165回ザ・チョイス入選。HBファイルコンペvol.21藤枝リュウジ賞大賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
序章 5
・いかに生を楽しむか 6
・死を完成させる 10
・死は必要なもの 12
・生と死を見つめ直す 15

第1章 生の重さはその長さだけではない 19
・短いが美しい生命 捨て子のライオン 20
・生きていこうと必死の兄妹ライオン 26
・人間の手で解決できないこと 30

第2章 生きることの大切さを学ぶ 33
・小さい動物の子の巧みな戦略 ガゼルの子の場合 34
・死の中に飛び込む 新しい母を探すヌーの子ども 42

第3章 子のために生きる母 55
・ライオンの代理母の場合 母と子の姿は多様だ 56
・自分の行動に真面目であること
  子を殺された母ライオンの怒りと悲しみ 62
・生と死の境目 新しい経験に挑む 72
・子のためにワニのいる河を渡るヌーの母親 79

第4章 他者の死を悲しむ 83
・喜びを分かち合う バッファローの赤ちゃんから逃げる巨象 84
・他者の死を悼む 弱者を思いやる気持ち 95
・弱者をいたわる心 象は他者を死から守ろうとする 100

第5章 肉食には存在意味があるのだ 107
・多くの生命に新たな生を与える ライオンとバッファローの戦い 108

終章 117
あとがき 124

■帯より
動物も人も死を避けるために、いろいろ工夫をします。
しかし、その工夫は「生」全体のあくまで一部なのです。
そんなことばかり工夫していては、「生」の楽しみを忘れて
しまいます。
死はせつないけれども、必要なもの、大切なものなのです。
いまこそ、私たち人間は、「生」と「死」を見つめ直す時間
なのかもしれません。

■書評
別館

○■インド動物ものがたり―同じ地上に生なすもの■2016年05月12日 19:21

ネコは、母神の使いだから、いちばんいいものを食べていいことになっている


西岡 直樹 (著)
単行本: 278ページ
出版社: 平凡社 (2000/11)

■商品の説明
内容紹介
ロングセラー『インド花綴り(正・続)』の著者が描く、人と動物と神様の物語38編。神話や民話から日常の暮らしまでを、やさしく語りおろす。インドの奥深さ、精神世界の源が見えてくる。

内容(「BOOK」データベースより)
雲を生み、恵みの雨をもたらす白いゾウ、幸運と豊饒の女神を運ぶフクロウ、背の上に大地をのせるカメ…。小さなものへの愛着や、やさしさへの共感、不思議な怪しさを語る、悠久の大地・インドの動物と人、神さまのおはなし37話。

著者について
西岡直樹(にしおか なおき)
1946年、東京生まれ。宇都宮大学農学部卒業後、1973~78年に、インド西ベンガル州のシャンティニケトン大学、カルカッタのジャドブプル大学でベンガル語を学ぶ。インドの村々を回り、昔話および植物に関する話を収集して現在にいたる。
著書に『インドの昔話』(共著/春秋社)、『仏教植物散策』(共著/東京書籍)、『インド花綴り』(正・続/木犀社)、『インドの樹・ベンガルの大地』(講談社文庫)、訳書に『ネパール・インドの聖なる植物』(T.C.マジュプリア著/八坂書房)などがある。

■カバーそでより
その(ばん)
私たちはひとつの小さな石油ランプの光を囲んで、
ムクンド(じい)さんの描いた絵巻物(えまきもの)を見た。
――王さまの動物使いが、森でジャッカルをあやつっています。
たくさんのジャッカルをあやつっています。フッカフワー、フッカフワー

老人は、つぎのあてられた綿(めん)肩提(かたさ)げから、手垢(てあか)にまみれた小さな巻物(まきもの)のようなものを数本とりだした。 油煙(ゆえん)をひゅるひゅると立ち(のぼ)らせて燃える、石油ランプの薄明(うすあ)かりに()らしだされたその絵を見て、私は心の動揺(どうよう)(おさ)えることができなかった。 ずっと前から見たいと思っていた絵が、予期(よき)もせずそこに()(ひろ)げられたからである。

■目次
不思議な遠吠え――ジャッカル 10
大地を支える者――カメ 19
幸運の女神を運ぶ――フクロウ 30
山を出たものの――ゾウ 35
クマにまたがったラジュ――ナマケグマ 48
官能(かんのう)のさえずり――オニカッコウとオオバケン 54
ハヌマーンの養女――ハヌマンラングール 59
四つ目のイヌ――イヌ 68
ホタルのランプ――ハタオリドリ 75
ボノビビの森――トラ 80
真夜中の恐怖――ヤスデ 92
裏庭の(ぬし)たち――ミミズとメクラヘビ 97
雨を呼ぶ鳥――クジャク 102
(きず)く者、(こわ)す者――シロアリとセンザンコウ 107
風の神の乗り物――シカ 113
毒消しの薬草を知る――マングース 127
ドルマとアドル――スイギュウ 133
五本の筋と三本の筋――リス 140
ビュシュノーイの村――ニルガイ 144
青い卵と命の棒――ハゲワシ 153
砂漠の舟――ラクダ 160
夫婦愛――ヤモリ 165
ガネーシャの乗り物――ネズミ 171
猿蟹合戦の蜂――スキャングング・キャットフィッシュ 177
オオカミに育てられた少女――インドオオカミ 181
仏陀(ぶっだ)供物(くもつ)――ブタ 189
女神の祝福(しゅくふく)――ネコ 189
二つの世界の狭間(はざま)で――インドオオコウモリ 201
土下座(どげざ)するトカゲ――ブラッドサッカー 206
女神ノノシャ――ヘビ 210
二羽の鳥には合掌(がっしょう)を――カバイロハッカ 219
女神の()(にえ)――ヤギ 223
小さな(きら)われ者――ジャコウネズミ 231
与えてやまないもの――()ウシ 236
恐怖の(きざ)し――バタ 246
同じ地上に生なすもの――インド・ベンガル地方の植物観 251

あとがき 258

地図 8
インドの神、聖者、聖典、その他 262
登場するおもな動物と植物の名称 276
参考文献 277
初出誌・図版クレジット 278

■書評
別館

-○全脳革命-ヘミシンクで無限の可能性を広げ、人生や実生活に役立てよう○2016年05月14日 20:18

精神世界だけではなく、さまざまな実生活の分野で応用され、成果を上げているヘミシンク


ロナルド ラッセル (著), 【監訳】坂本政道 (その他), 日向 やよい (翻訳)
単行本(ソフトカバー): 464ページ
出版社: ハート出版 (2011/3/23)

■商品の説明
内容紹介
データや実例が証明した究極の脳活技術
ヘミシンク有効活用法

「人生の目的が見つかった」
「学習障害を持つ子供の様子が安定した」
「不眠症が改善した」「外科手術の麻酔が 不要になった」
「学級崩壊から教室が立ち直った」……

ヘミシンクは精神世界だけのツールではありません。
さまざまな実生活の分野で応用され、成果を上げているのです。

ヘミシンクは多くの分野の専門家の興味をひきつけている。 こんにち、トレーナーやワークショップ開催者のいる国が20カ国ほどあり、ヘミシンクを用いたコースに参加する人々が、世界の50カ国からヴァージニアのモンロー研究所にやってくる。
さらに、特定の目的のために使用されるヘミシンクCDやテープは、 おびただしい数にのぼる。『全脳革命』は、あなたがこれまで可能だとは思いもしなかったような能力に満ちた、まったく新しい世界へとあなたをいざなう。

出版社からのコメント
へミシンクというアメリカ発のオーディオ・ガイダンス技術をご存じだろうか? 特殊な音をステレオヘッドフォンで聴くことで、左右の両脳が同期(シンクロ)した状態へと安全かつ効率的に導く技術である。右脳と左脳がバランスして活動する、いわば全脳状態が導かれる。集中して学習するのに適した状態へも導くことも可能で、これぞ、究極の脳活技術と言ってもよいかもしれない。
へミシンクはロバート・モンローにより1960年代から70年代に開発され、その後モンロー研究所によるさまざまな専門機関との40年以上にわたる共同研究により、その安全性、有効性が科学的、臨床的に証明されてきている。モンロー研究所が中心となって、医療機関や教育機関などとタイアップした実践的な研究が40年以上にわたってなされてきている。
本書はこういったへミシンクの実用面での応用に焦点を当てている。

医療、精神医学、教育、睡眠導入、介護現場などでの応用
具体的に言うと、医療での応用、精神医学と心理療法での応用、学習障害児や自閉症児に対する応用、介護施設での応用、睡眠障害における応用、教育における応用、ビジネスにおける応用などである。
本書では、こういった分野におけるへミシンクの驚くべき効果を数多くの実例を挙げて紹介している。紹介している人たちは、医療現場のドクターや精神科医、心理療法士、物理学者、教育者、カウンセラーなどであり、その報告は専門的な立場からの信頼性の高いものとなっている。厳密に科学的な手法を用いた、学術的にも意義の高い研究も含まれている。
本書で紹介される多くの実例の中から、ほんのいくつかを挙げよう。
(1)従来の手法ではなかなか効果が得られなかった何人もの学習困難児が、へミシンクにより集中できるようになった。
(2)手術中にへミシンクを聴いた患者は、手術中、対照群の4分の1の量の鎮痛薬しか必要としなかった。術後にも、鎮痛薬が少ししか必要なかった。
(3)どの学校からも追い出され、行き場のなかった若者たちが集まる教室で、授業中にヘミシンクを聴かせたところ、彼らの多くが授業を真面目に受けるようになった。
(4)癌を含む複数の合併症を持ってホスピスに入院した患者が、死への恐れを解消し安らかな気持ちで旅立っていくことができた。
(5)ヘミシンクを聴くことで集中力が上がり、そのおかげで仕事の能率が上がったり、適度にリラックスすることができて作業効率も上がった。
(6)痛みに伴う不眠や精神的な悩みに伴う不眠が解消され、夜ぐっすりと眠れるようになった。
(7)その他、多数の研究、報告あり。

実は、へミシンクというと、これまで、精神世界での深遠な体験やスピリチュアルな体験を手助けする方法という印象をもたれている方が多かったのではないだろうか。
本書の主眼はこういった精神世界の体験にはない。もっと日常的な、実用的な応用についてである。へミシンクには、そういうすばらしい面がある。

著者について
【編著者】ロナルド・ラッセル(Ronald Russell)
英国生まれ。英国空軍で軍務に就いたのち、オックスフォード大を卒業。その後教職に就き、いくつかの大学で試験官や講師を務める。
現在、グラスゴー大学で人間の意識に関する講座を担当。モンロー研究所の顧問委員会および専門委員会のメンバー。
著書や編著書は英国および米国で15冊ほど出版されている。1993年に本書の先行版である「Using the Whole Brain」を編集している。

【監訳者】坂本政道(さかもと まさみち)
モンロー研究所公認レジデンシャル・ファシリテーター
(株)アクアヴィジョン・アカデミー代表取締役
1954年生まれ。
1977年東京大学 理学部 物理学科卒。1981年カナダトロント大学電子工学科 修士課程終了。
1977年~87年、ソニー(株)にて半導体素子の開発に従事。
1987年~2000年、米国カリフォルニア州にある光通信用半導体素子メーカーSDL社にて半導体レーザーの開発に従事。
2000年5月、変性意識状態の研究に専心するために退社。
2005年2月、ヘミシンク普及のため(株)アクアヴィジョン・アカデミーを設立。
最新情報については著者のウェブサイト「体外離脱の世界」とアクアヴィジョン・アカデミーのウェブサイトに常時アップ。

【訳者】日向 やよい(ひむかい・やよい)
東北大学医学部薬学科卒業。主な訳書に「殺菌過剰!」(原書房)、「新型殺人感染症」(NHK出版)、
「ボディマインド・シンフォニー」(日本教文社)、「異常気象は家庭から始まる」(日本教文社)、
「類人猿を直立させた小さな骨」(東洋経済新報社)、などがある。
■目次
全能革命 もくじ
監訳者まえがき――本書の魅力とその役割 坂本 政道 4
刊行によせて ローリー・モンロー 12
ヘミシンクの道 ロバート・A・モンロー 14
はじめに ロナルド・ラッセル 18
フォーカス・レベル 25

第1章 ヘミシンクで自分の能力を啓く 35
勉強に、スポーツに、健康にもヘミシンク テレサ・ブラード 36
セミナーは人間成長の場 フェリシア・ポッター 45
ヘミシンクで友人の人生が変った ティモシー・K・アンブローズ(博士) 50
人生の転機に正しい選択を スザンヌ・ブルー 61
自身のトラウマを解消する ゲイル・M・ブランシェット 64
ヘミシンクとともに、自閉症に立ち向かう アン・カーペンター 70
刑務所におけるヘミシンクの実践 ロナルド・ラッセル 77

第2章 ヘミシンクと子供たち 81
子供たちの学習支援にメタミュージック スザンヌ・エヴァンズ・モリス(博士) 82
摂食障害のある子供とメタミュージック スザンヌ・エヴァンズ・モリス(博士) 93
ヘミシンクが自閉症児に学習の扉を開く ノラ・ローゼン、ベレニス・ルーケ 104
ヘミシンクを小児科診療に利用する試み ジャクリーヌ・マスト(理学・教育学修士) 116

第3章 教育現場におけるヘミシンクの活用 127
ADDに対するバイノ^ラル・ビートの効果 ロバート・O・ソーンソン 128
なぜメタミュージックが学習困難に効果的なのか バーバラ・ブラード(文学修士) 135
教育プログラムにおけるヘミシンク リセ・D・ドロング(博士)、レイモンド・O・ワルドゲッター(教育学博士) 147
荒れた教室をヘミシンクで立て直す ピーター・スピロ 153

第4章 ヘミシンクを医療に役立てる 169
医療にヘミシンクを用いて効果をあげる ブライアン・D・デイリー(医学博士) 170
入院生活でヘミシンクを有効利用 マーティー・ゲルケン 185
ヘミシンクでエネルギーヒーリングの効果を高める キャロル・セイピック 193
聴覚障害の患者がヘミシンクを使うためには ヘレン・N・ガットマン(博士) 201

第5章 ヘミシンクと精神医学 205
精神科診療にヘミシンクを導入する ジョナサン・H・ホルト(医学博士) 206
強化された直感的心理療法 ゲイリー・D・シェイキン(医学博士) 215
ヘミシンク=自己の癒し ゲイリー・D・シェイキン(医学博士) 228
ヘミシンクは内なるセラピスト ノラ・ローゼン 238
ヘミシンクでアルコール性鬱病を治療する ジョン・R・ミリガン(博士)、レイモンド・O・ワルドゲッター(教育学博士) 244
とある患者の体験より パトリシア・マーチン 250

第6章 ヘミシンクによる睡眠効果 255
痛みに伴う不眠を克服する スコット・M・テイラー(教育学博士) 256
不眠症とヘミシンク エドワード・B・オマリー(博士)、メアリー・B・オマリー(医学博士) 268
明晰夢 ブライアン・D・デイリー(医学博士) 277

第7章 介護施設におけるヘミシンクの活用 281
コミュニケーション・ギャップに橋を架ける デブラ・デービス(教育学修士) 282
長期入所者に対する補完治療法としてのヘミシンク リチャード・スタウト、ジュディー・マッキー 294

第8章 ビジネスに活かせるヘミシンク 303
ビジネス・セミナーでヘミシンクを使う リン・ロビンソン(博士) 304
ヘミシンクで仕事を効率化 ジェイムズ・エイケンヘッド(教育学博士) 311

第9章 世界に広がるヘミシンク 327
キプロスにおけるヘミシンク リンダ・ルブラン 328
ポーランドにおけるヘミシンク ポーウェル・ビック 339
スロヴェキアにおけるヘミシンク ペーター・シムコヴィチ 345
スコットランドにおけるヘミシンク ロナルド・ラッセル、ジル・ラッセル 356
メキシコにおけるヘミシンク ジーン・バステリス 362

第10章 ヘミシンクは動物にも効果があるのか 367
動物の苦痛をやわらげ安心感を与える スザンヌ・モリス他 368

第11章 ヘミシンクを科学的に検証する 383
バイノーラル・ビートの効果に関する研究 ジェイムズ・D・レーン(博士) 384
ヘミシンク中の脳と意識の働きを研究する F・ホームズ・アトウォーター 398
ヘミシンク中における脳波の状態を研究する ジョナサン・H・ホルト(医学博士) 409
"意識に関する"出版物におけるロバート・モンローの影響 スティーヴン・A・グラフ(博士) 416

第12章 ヘミシンクで広がる無限の可能性 425
影を取り戻すことによる癒し=リチャード・ヴェーリングの仕事 ロナルド・ラッセル 426
マジカル・ミックス キャロル・セイビック 431
シンクロニシティとソートボールの交差点 リン・B・ロビンソン(博士) 437

第13章 ヘミシンクを自発的に学ぼう 447
ヘミシンクCD(アルバム) 448
ヘミシンクCD(シングル) 453
モンロー研究所提供の滞在型プログラム 455

■第11章 「ヘミシンクを科学的に検証する」の扉より

『Using the Whole Brain』が1993年に出版されて以来、ヘミシンク・プロセスと、意識の状態に対するその影響に関する研究は着実に進んできた。F・H・「スキップ」アトウォーターが言うように、ヘミシンクが意識にどのように影響を及ぼすのかを正確に理解しようとするなら、「バイノーラル・ビート同調という限定的な概念」から一歩離れる必要がある。

ジェイムズ・レーン・スキップ・アトウォーター、ジョナサン・ホルトによる本章の3つの小論は、それぞれの分野の専門家によっていまどのようなタイプの研究が集中的に行われているのかを明らかにする。この音響技術が科学界により広く受け入れられるには、そしてその結果がさらに幅広く利用され、最高の効果を発揮するには、こうした研究が欠かせない。

それらと対象的ではあるが、やはり非常に関連性の高いのが、スティーヴィン・グラフの分析である。彼はロバート・モンローと研究所が意識にまつわる文献に与えた影響を分析している。彼の所見はきわめて明快であり、モンローの発見と著書の影響力の大きさを如実に示す証拠となっている。


■基礎データ
ページ数464
目次数67
目次の細かさ6.9
索引の数0
参考文献一覧29
印象右脳と左脳で働きを分担することで成長に対応した新皮質は、再度統合されるのだろうか。しかし、危惧を感じることも事実である。

目次数はページ番号の付いた目次項目の数
目次の細かさは(ページ数/目次数)
目次の細かさが小さいほど、丁寧に目次が振られていることになります。

■関連書評
脳の神話が崩れるとき
宇宙無限力の活用

○■食べない、死なない、争わない (人生はすべて思いどおり--伝説の元裁判官の生きる知恵)■2016年05月15日 08:43

食べないから健康、死なないから幸福、争わないから平和


著者:稲葉耶季(いなば やすえ)
出版社: マキノ出版
2015年4月21日発行
186ページ

■商品の説明
内容紹介
食べないから健康、死なないから幸福、争わないから平和。
ベストセラー『食べない人たち』に登場する「不思議なI先生」こと稲葉耶季が遂にベールを脱いだ!
渋谷は公園通りの東京山手教会に生まれ、裁判所で判事を務めるかたわら、ヒマラヤで学校づくりに奔走し、現在は尼僧−−−−本能のままに行動して、すべてを実現させる生き方を余すところなく紹介した一冊。「いまを生きる16の知恵」を収載。

内容(「BOOK」データベースより)
ベストセラー『食べない人たち』の「不思議なI先生」が遂にベールを脱いだ!教会に生まれ、裁判所で判事を務めるかたわら、ヒマラヤで学校づくりに奔走し、現在は尼僧―「いまを生きる16の知恵」を収載。

著者について
稲葉耶季(いなば・やすえ)
1942年、東京都生まれ。67年、東京大学経済学部経済学科卒業。
69年、同大学同学部経営学科を卒業し、東京都庁に就職。
77年、司法研修所をへて静岡地方裁判所判事補となり、以後、名古屋、群馬などに勤務。
93年、那覇地方裁判所判事。97年、横浜地方裁判所判事。同年、インド北部に「ヒマラヤ稲葉学校」を設立。
99年、琉球大学法文学部教授。2006年、那覇簡易裁判所判事。09年、名護簡易裁判所判事。
12年、定年退官。13年11月、臨済宗の僧侶となる。14年1月、弁護士登録。
同年9月、インド・ラジギールで修行。15年1月よりインド・ナグプール仏教大学設立アドバイザーとして活動中。

■目次
はじめに ~悠々とした大河の流れのように生きる~ 1
第1章 食べない(5ヵ月の不食体験と現在)
食べないほうが幸せ――だけどときが満ちるのを待つ 16
体の準備ができたときにやめるきっかけに出会う 19
肉や魚をやめたらおなかをこわさなくなった 23
不食が結んだ秋山弁護士との縁 26
玄米ごはんほどおいしいものはほかにない 30
西洋医学をさけ食事とホメオパシーで健康を保つ 34
ウシを養う穀物で10倍の人が養える 38
不食のメカニズム①「腸内細菌」 41
化学物質は腸内バクテリアにダメージを与える 46
不食のメカニズム②「プラーナ」 49
瞑想中に虹色の光のプラーナが降りそそいだ 52
不食のメカニズム③「空気」 55
食べない人ほど眠らなくてすむ 58
不食で飢餓をなくせるか 60
呼吸さえしないで一定期間過ごせる人もいる 64
少食・不食の道は誰にでも歩める 68
近未来の食事のスタイル――食べても食べなくてもよい 71

第2章 死なない(死はふるさとに帰るうれしいイベント)
私が死を恐れなくなったわけ 76
このうえなく安らかなインドの死に方 78
日本など先進国の終末期医療は魂を苦しませる 82
「姥捨て山」は悲劇ではない 86
輪廻転生――人は何度でも生まれ変わる 90
生まれ変わりを信じてたくましく生きるインドの人たち 92
今生の学びは必ず生かされる 96
すべての人は旅の途中 99
チベット仏教の「死者の書」で学んだ転生 102
「ヘミシンク」でさらに深く理解 105
死は光のふるさとに帰ること 109
「無性にしたいこと」の原因は前世にある 112
犯罪の経験によっても本質は成長する 115
光の世界にうまく帰れない人もいる 118
逝くときを自分で選ぶという生き方 121

第3章 争わない(武器を満たないことこそ強い)
自分を、子供を、国を守るとは…… 126
暴虐で成り立った国は長続きしない 129
お手本はガンディーによる非暴力主義 133
花は花以外のものでできている 137
「すべては空」とはどういうことか 141
誰かが正しいことをいい続けるしかない 146
戦争の本当の原因は武器商人 148
全体が幸せに生き続けられるしくみを 152
自由に生き、かつ争わない 156

付章 いまを生きる16の知恵
生きることは楽しいこと、大きな意味のあることです。 162
いまを生きる16の知恵 163
瞑想の手引き 176

おわりに~食べること、死ぬこと、争うこと――やめました~ 179
参考文献 186

■「はじめに」の終わりの部分

川の水が、出っぱった岩に荒々しくぶつかるのではなく、スルリと迂回(うかい)して流れていくように、自分が好きなように生きながらも、他者とぶつからずに生きるのが理想です。 長く裁判官という職を務めてきましたが、人としては誰をもジャッジしないという姿勢を貫こうとしてきたつもりです。

本書のタイトル『食べない、死なない、争わない』は、字面だけを見ると、なんとなくものものしい雰囲気に感じられるかもしれませんが、「こうしてください」とか「こうあらねば」とかいう主張ではありません。 右にあげたようなさまざまな体験をするなかで、自分が自然に心地よく生きる知恵として学んだことを、三つの柱にまとめてみたものです。

「これは誰かの参考になるかもしれないからお伝えしたいな」と思うことをまとめただけなのですが、奇しくもいまの時代に、注目される三つのテーマに集約されました。 それぞれのことに興味がある人に、何かの形で参考にしていただけたら幸いです。


■書評
本が好き!

-○エデンの彼方―狩猟採集民・農耕民・人類の歴史○【進歩史観を排して人類の歴史を根本から捉え直した瞠目の書】2016年05月17日 15:05

進歩史観を排して人類の歴史を根本から捉え直した瞠目の書


ヒュー ブロディ (著), 池 央耿 (翻訳)
単行本: 310ページ
出版社: 草思社 (2003/12/10)

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
狩猟採集民の社会・文化の特質を農耕民のそれと対比しながら、進歩史観を排して人類の歴史を根本から捉え直した瞠目の書。

内容(「MARC」データベースより)
人類学者・記録映画作家としての30余年のフィールドワークを踏まえて、狩猟採集民の社会・文化の特質を農耕民のそれと対比しながら、進歩史観を排して人類の歴史を根本から捉え直す。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ブロディ,ヒュー
人類学者にして記録映画作家。1943年、英国のシェフィールドで生まれる。オクスフォード大学トリニティ・カレッジで学んだのち、アイルランドのクイーンズ大学で社会人類学を教える。現在、ケンブリッジ大学スコット南極研究所の名誉研究員とトロント大学比較文学部の準教授を勤める。1997年以来、南アフリカのサン研究所でブッシュマンの歴史と土地に対する権利の研究を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
はじめに 7
第1章 イヌイット語を学ぶ 13
第2章 天地創造 69
第3章 時空を翔ける 103
第4章 言葉を奪われて 163
第5章 農耕民の神、狩猟採集民の神 215
第6章 狩猟採集民と人類の歴史 259
補遺 297
訳者あとがき 308

■「はじめに」の冒頭部分
極地の夜は紺青に澄みきっている。 満天に星をちりばめ、オーロラが頭上に孤を描く。 刻々に姿を変えながら、永遠不動の宇宙を感じさせる壮麗な光の乱舞である。 氷原は月明に照り映えて、遠く視野の彼方(かなた)薄霞(うすがす)む。 雲一つない無窮の空は、凍てついた静寂に音立ててひびが走るかと思うほど燈明に張りつめている。 事実、その音を耳にしたと語る極地旅行者は少なくない。 吹きさらしの氷上は雪風巻(しま)くばかりである。
■「訳者あとがき」

本書はイギリスの人類学者で記録映画作家のヒュー・ブロディが三十余年のフィールドワークを踏まえて著した辺境の文化誌、THE OTHER SIDE OF EDEN:Hunter-gatherers, Farmers and the Shaping of the Worldの翻訳である。 副題が示す通り、狩猟採集文化と農耕文化の接点に立つ著者が、人類史の地平を越えた遠い彼方へ視線を馳せる企てで、詩情に満ちた極北の風景もさることながら、大方の通念を覆すブロディ持ち前の斬新な切り口は一種衝撃的とさえ言える。 二〇〇〇年の刊行以来、各国で高い評価を得ている一書である。

ヒュー・ブロディは本書で、今や滅びゆく少数民族と目されている狩猟採集民の実情を紹介し、圧倒的多数、いや、事実上は狩猟採集民以外のすべてである農耕民が彼らを辺境に追いやった歴史を検証している。 二つの文化は決定的に異質である。 だが、それは文化に優劣の差があることを意味しない。 ましては、それぞれの文化を営み人間の能力の問題では断じてない。 農耕民は文明の先端を歩み、狩猟採集民は進歩に取り残された未開人であるという固定観念は無理解ゆえの偏見でしかない、と著者は言う。 辺境に暮す少数民族とはいえ、明らかに農耕民よりも長い歴史を負っている狩猟採集民の知的な蓄積は端倪(たんげい)すえからざるものがある。 彼らは今を生きる(れっき)とした現代人であって、すなわち、農耕民とは同時代人であると考えなくてはならない。 これが本書の出発点である。

獲物を追って絶えず遊動する狩猟採集民は放浪者であり、地を耕して家を守る農耕民は定住者であるとよく言われる。 著者ヒュー・ブロディはこの考えを大胆に否定する。 歴史的観点から二つおn文化を眺めれば、遊動が常態であるかに見えながら、その実、獲物の棲息範囲を一歩も出ない狩猟採集民こそが定住者であって、代を重ねるうちに余剰人口が新しい土地を求めて移住せざるをえない農耕民は、古来、放浪の運命を課されている。

ヒュー・ブロディの説く逆転の発想に意表を衝かれる読書は少なくなかろうが、なお興味深いことに、著者は流浪の農耕民族の原点を旧約聖書、『創世記』に見だしている。 弟アベルを殺した罰に、農夫カインは浪々の身となり、額に汗して痩せ土を耕しながら遊動生活を続けなくてはならない。 が、やがてカインの末裔が行く先々で町を興し、都市文明を築く。 これが農耕民族による植民地開拓のはじまりである。 植民地の伸展によって、狩猟採集民は農業の成り立たない土地で昔ながらに生きることを余儀なくされた。

著者ヒュー・ブロティはイギリスに生まれ育ったが、両親はディアスポラの境遇にあるユダヤ人で、ブロディ自身、幼少の折りにユダヤ教の律法であるモーゼ五書、いわゆるトーラーを叩き込まれたことは本文にも述べられている。 世間一般の普通人とは比較にならないほどユダヤ教の世界を深く知る著者の、旧約に依拠した歴史解釈が根底を貫いているところに本書の際立った特色があると言えよう。 ブロディは狩猟採集民に対して判官(ほうがん)贔屓(びいき)の傾きがあるという指摘も一部に見られるが、狩猟民の文化を無条件に称揚することが著者の本意ではない。 異質な文化を単純に比較する意図もない。 歴史を考えるとは、未来に目を向けることにほかならず、そのためには、文明と未開、進歩と後進といった対立概念をひとまず脇へ置いて、歴史を輪切りにすれば同じ断面に位置している異文化を等距離に捉えることからはじめるべきだ、とブロディは説いているのである。

本書を通じて、読者は随所でさまざまな発見をするに違いない。 ヒュー・ブロディは広い視野と深い洞察から、現代社会で打ち捨てにはできない問題を提起してもいる。 例えば、植民地政策によって言葉を奪われた狩猟採集民の心情など、文章語と古典を失いかけている今の日本を考えると、とうてい他人事では済まされまい。 一方、イヌイットの暮しの情景を間近に見る写生文は本文の味わいを豊かにする貴重な記録である。 入口がいくつもあって、奥行きの知れない佳編と言うに値しよう。

原著には膨大な量の後註が付されている。 その半ばは参考文献を紹介しながら持説を傍証する内容だが、本文と重複するところも多々あって、いささか煩雑の感を免れない。 編集とも相談の上、補遺として抄訳の形で概略を伝えるに留めることをお断りしておく。

邦訳に際しては、草思社編集部の平山濶二氏にひとかたならずお世話になった。 また、日本ユニ・エージェンシーの武富義夫氏からは何かと助言をいただいた。 この場を借りて、深甚の感謝を表す次第である。

二〇〇三年十一月


■統計情報
ページ数310
目次数9
目次の細かさ34.4
索引の数0
参考文献一覧補遺に含めてあり一覧性なし
印象旧約聖書を引くなど『イシュマエル』との共通点が多い。これまでに私が得た知識と符合する内容が多いようである。

目次数はページ番号の付いた目次項目の数
目次の細かさは(ページ数/目次数)
目次の細かさが小さいほど、丁寧に目次が振られていることになります。

-○語る身体の民族誌―ブッシュマンの生活世界〈1〉 (ブッシュマンの生活世界 (1)) 【原野に生きる人々の猥雑な会話の中にヒトの文化と社会の成り立ちを見る】○2016年05月17日 16:39

原野に生きる人々の猥雑な会話の中にヒトの文化と社会の成り立ちを見る


菅原 和孝 (著)
単行本: 360ページ
出版社: 京都大学学術出版会 (1998/05)

■商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
原野に生きる人々の猥雑な会話の中にヒトの文化と社会の成り立ちを見る。奔放な「恋人関係」の噂、「糞」や「肛門」の話が飛び交うののしり、動物や食べものについての不思議な語り―ブッシュマンの、愉快で生き生きとした会話には、原野に生きる人々の精神世界と社会構造とが鮮やかに織り込まれている。精緻な会話記録という新しい民族誌の方法を示し、人類学の可能性を探る会心作。

内容(「MARC」データベースより)
奔放な「恋人関係」の噂、「糞」や「肛門」の語が飛び交うののしり、動物や食べものについての不思議な語り-ブッシュマンの、愉快で生き生きとした会話に、原野に生きる人々の精神世界と社会構造とを探る。

著者に付いて
菅原 和孝(すがわら・かずよし)
1949年 東京生まれ
1973年 京都大学理学部卒
1980年 京都大学大学院理学部研究科博士課程単位取得退学。北海道大学文学部助手、京都大学教養部助教授、京都大学総合人間学部助教授を経て、現在 京都大学総合人間学部教授。

■目次
草の家より iii
読者のために xix
     原語の発音と表記/会話資料の表記法/おもな登場人物

序章 会話の民族誌へむけて 1
  「民族誌を書くこと」への懐疑 2
  民族誌と会話分析 5
  会話分析を始めよう 11
  ブッシュマンの生態人類学 15
  変容 18
  会話分析に至るまで 21
  グイ語の概略 25

第一章 ことばのなかの身体 37
  民族解剖学――さまざまな筋肉 40
  内蔵間隔――心臓、肝臓など 48
  ライフサイクルのなかの身体 51
  語る身体 65
  罵りの修辞学 70
  想像力の基底としての身体 82

第二章 老いた恋人たち――婚外性関係の個人史 87
  たくさんの女をめとった男 88
  たくさんの恋人をもった女 91
  噂の二人 92
  対決 102
  批判の包囲 113
  冷静な夫 132
  結末 138

第三章 感情の回路――婚外性関係の論理 143
  年上の女――キヨーホとカウピリ 144
  贈り物を抱えてくる男――ギナシ 149
  若い娘をめとった青年――カローハ 160
  第三夫人になった女――ギューカ 171
  回顧されるザーク 181
  夫婦交換 185
  感情の回路 191

第四章 人間のカテゴリー化――「民族」間の境界 207
  カテゴリー化装置 208
  グイにとっての人間のカテゴリー 211
  <テベ>への不信と依存 212
  ガナへの否定的特質づけ 223
  クアとしてのわれわれ 234

第五章 物語の愉悦――民話はいかに語られるか 239
  フォークロアと生態 240
  姉と妹のかけあい 244
  老人に語り聞かせる娘 260
  民話と昔話 274

第六章 日常会話の背後へ――背景知と信念の活性化 281
  狂う人 282
  若者たちの食物忌避 299

終章 <語る身体>、自然、そして権力――途上での総括 317

注 334
引用文献 341
木の家にて 347
索引 352
事例一覧 【1】~【38】

■「読者のために」より

この本は、南部アフリカにひろがるカラハリ砂漠に住む狩猟採集民ブッシュマン(自称名グイ)が生きている世界を、かれらの日常会話を分析することを通じて明らかにしようとする試みである。

一九八〇年代以降にさかんになった「民族誌批判」に応えて多くの実験的民族誌が書かれた。 しかし、会話こそは人間の社会生活の根幹をなすもっとも中心的な現象であるにもかかわらず、会話を一次資料として民族誌を書くという試みは今までほとんどなされていない。 そのような未踏の領域に挑戦するという意味で、本書もまたひとつの実験である。 ただ、かぎられたページ数のなかに、かれらの会話世界の全体像を盛りこむことは不可能であった。 そこで、本書では、グイの人々が自らの<身体性>をどのように経験しているのかを、日常会話のなかから浮かびあがらせることを中心的なテーマに据えた。 会話という相互行為の構造、言語行為やコミュニケーションの理論といった、より抽象的な問題に関心のあるかたは、姉妹編である『会話の人類学(ブッシュマンの生活世界第2巻)』をあわせてお読みいただきたい。 ただし、本書はあくまでも第2巻とは独立に読めるようになっており、日本から遠く離れた異文化の人々がいったいどんなことをどんなふうにしゃべっているのかに好奇心をもち、その世界の深みまで旅をしようとする一般の読者をめざして書かれている。

日本語の「おしゃべり」でさえ、それを文字に転写するとなんの話かさっぱりわからないことがしばしばある。 グイの人々のおしゃべりを読者にとって理解可能なものとするために、本書では会話資料の逐語訳とそれをさらにかみくだいた説明とを並列させた。 この手法は、同じ話を二度聞かされる煩わしさを読者に押しつけるかもしれないが、民族誌家の構成したリアリティを絶対視することを避け、読者の想像力が解釈に参加する道を確保するためにも、ぜひとも必要であった。

異文化の人々の語りにみなぎる力と輝きは、ときには「冗漫」、「支離滅裂」といった否定的な印象の背後から徐々に立ち現われてくるかもしれない。 それゆえ、余計は理屈や概念を介在させずに、人々の「語りくち」の風味それ自体と出会うことをめざす読者は、会話資料の部分だけをまず通読するのがよいかもしれない。 しかし、もっとも重要なことは、会話資料と、それに並列された説明や分析の部分とを読み比べることによって、読者は、分析者の解釈の不十分さや過剰さを批評することができるということである。

すべての会話資料には【1】、【2】などと通し番号をつけたうえに、あとで言及するときにその内容が想起しやすいように簡単なタイトルを付した。

なお前著(『身体の人類学』河出書房新社、一九九三年)と同様、共同調査を続けている師や同僚の皆さんをはじめとして、本文中に登場するすべての人名からは敬称を省かせていただいた。 しるしてお詫びもうしあげたい。


■「人称代名詞と接尾辞」の冒頭部分(p26)

グイ語は非常に精密な人称代名詞の体系をもっている。 まず、一人称、二人称、三人称のすべてについて、単数、双数、複数の区別がある。 双数とは、二人(二個体)だけを表す代名詞である。 だからここで複数と言っているのは、三人(三個体)以上を表す代名詞のことである。 一人称単数には性別はないが、双数と複数は、一人称、二人称、三人称のすべてについて、性が区別される。 たとえば、日本人が単に「私たち」とか「われわれ」と言ってすませるところで、グイは、その「私たち」が男二人だけか、男と女のペアか、女二人だけか、あるいは男のみ三人以上か、男女三人以上か、女のみ三人以上かを、たちどころに表現するのである。 しかも、一人称の双数と複数には包含と排除の区別がある。 すなわち話者と聞き手をともに含む「われわれ」と、聞き手を排除する「われわれ」とを区別するのである。


■「罵りの修辞学」の「糞」から(p77)

一九八四年一二月一九日、私はキヨーホたちと車で水汲みに行き、そこで彼が<甥>にあたるカローと喧嘩をおっぱじめるのを目撃した。 キヨーホはカローを殴りつけ、カローは鼻血を出し、嗚咽しながらちょうどもっていたパチンコで石をとばしたが、これはあやういところでキヨーホからはずれた。 キヨーホはさらにカローを殴り、ちょうどここへ来あわせたキヨーホの母に制止された。 カローも同年配のガナの青年に取り押さえられた。 私たちが水場をひきあげるときまで、カローは涙声で罵り声をあげ続けていた。 キヨーホは車の屋根の上に乗ったので、私は助手席にいたグオグー(田中に詰め寄ったガナの男)に「なぜ彼らはアーク(喧嘩)したのか?」と訊いてみた。 「カローは若く、キヨーホは年長なのに、彼がキヨーホを<侮辱>(アオ)したからだ」との答えであった。 あとでキヨーホと二人だけになったとき同じ質問をすると同様の答えが返ってきた。 「カローはなんて言っておまえを侮辱したんだ?」と尋ねると「ツァ・チューと言ったんだ」と答えた。

この侮辱のことば「ツァ・チュー」はさきに述べた「おまえに糞をさせる」(ツァ・チューカホ)の省略形か、あるいは単に「おまえの糞」という意味かもしれない。 いずれにしても、和訳するならば「クソッたれ」がぴったりであろう。 これだけ激しい喧嘩の起爆剤になるにしてはあまりにあっけないことばである。 このエピソードからは重要な教訓が得られる。 つまり隣接世代の年長者に対して「言ってはならないこと」が明確に規定されており、そのタブーを破る者にはそれなりの制裁がくわえられるのである。 (日ごろはキヨーホに対してけっこう批判的なダオグーがこの事件ではカローに一片の同情も示さなかったことも注目に値する。) そして<糞>こそはその「言ってはならないこと」の中心を占めているのである。

-○わたし、解体はじめました ─狩猟女子の暮らしづくり─○【そこにある「命」と向き合い、悩み苦しみながら成長を続ける解体・狩猟女子の奮闘記】2016年05月17日 19:33

そこにある「命」と向き合い、悩み苦しみながら成長を続ける解体・狩猟女子の奮闘記


畠山千春 (著)
単行本(ソフトカバー): 192ページ
出版社: 木楽舎 (2014/3/31)

■商品の説明
内容紹介
そこにある「命」と向き合い、
悩み苦しみながらも成長を続ける
解体・狩猟女子の奮闘記

都会に住む、平凡な20代女子の著者は「自分の暮らしを自分で作る」べく、解体そして狩猟に挑戦し、現在では解体ワークショップを通して、大人から子どもまで命と向き合う場を提供しています。
本書では、平凡な女の子が新米猟師になるまでの過程や自給自足の狩猟ライフ、シェアハウスでの暮らしなどを綴りながら、動物別の解体方法や狩猟・解体をはじめたい人のためのガイドなど、イラストや写真を交えてわかりやすく紹介しています。
いのちが食べものになり、私たちの食卓に並ぶとはどういうことか、その問いに対する著者の真摯なメッセージが込められた一冊です。 「解体や狩猟をはじめたい人の入門ガイド」も収録。

内容(「BOOK」データベースより)
都会の女の子が田舎暮らしの猟師に!?そこにある「命」と向き合い、悩み苦しみながらも成長を続ける解体・狩猟女子の奮闘記。「解体・狩猟を始める入門ガイド」収録!

著者について
畠山千春(はたけやま・ちはる)
新米猟師/ライター
1986年生まれ。3.11をきっかけに、大量生産大量消費の暮らしに危機感を感じ、自分の暮らしを自分で作るべく活動中。
2011年から動物の解体を学び、今は鳥を絞めて食べるワークショップを開催している。
2013年狩猟免許取得、皮なめし修行中。
現在は食べもの、エネルギー、仕事を自分たちで作る糸島シェアハウスを運営。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■もくじ
はじめに 4

第1章 平凡な女子が新米猟師へ 7
  私が解体と狩猟を始めたわけ 8
  生まれて初めて、鶏を締めた日 14
  体験をシェアしていこう 23

第2章 解体 命を締めていただく 29
  解体ワークショップ、実施しています 30
  うさぎ編 初めてのうさぎ狩り見学! 46
  テン(!?)編 知り合いの農家からテンがやってきた 54
  アナグマ編 シェアメイトがアナグマを拾ってくる 59
  烏骨鶏編 「育てて食べる」を実践する! 64

PHOTO 初めの一頭 81

第3章 狩猟 生きものとのやりとり 97
  狩猟を始める! 98
  タヌキ編 初めての「止めさし」 101
  イノシシ編 ついに、狩猟をしに山へ 107
  シティガール、山へ入る 117
  初めての獲物 129

第4章 山と街 お肉の事情 149
  山のお肉のおはなし 150
  街のお肉のおはなし 154
  認めて、感謝して、食べていく 165

第5章 解体・狩猟を始める入門ガイド 169
狩猟免許の取得方法/鶏の解体/
イノシシの解体と皮なめし/
皮なめし 詳細バージョン/イノシシを使い切る/
野生肉の料理/解体&狩猟の現場を味わう!

おわりに 188

■はじめに

この約3年間、仕事を辞めてシェアハウスを始めたり、農作業をしたり、太陽光パネル発電機などを作ってエネルギーの自給を試みたり、「自分の暮らしを自分でつくる」べく、さまざまなことにチャレンジしてきました。

食べものの自給について考えた結果、始めたのが解体と狩猟です。

本書は、解体について何も知らなかった私がその活動を始め、少しずつ狩猟へと進んでいく道のりを書き留めたものです。

現在、私は動物の解体が3年目、狩猟は1年目の新人です。 勉強中の身であり、未熟な点も多いと思いますが、経験値ゼロからスタートし、失敗したり、ビビったりしながらも、多くの方と出会い、歩んできた過程の記録になっています。

活動を通じて、強く感じたことがありました。

たとえば、スーパーで売られているパック詰めのお肉、衣料品店にずらりと並ぶダウンジャケット、長年愛用している革財布。

暮らしの中で見かけるそれらの先にはすべて、動物の命があるという当たり前のことです。

本書では、私が動物の解体や狩猟をした体験を中心に、食肉や卵などがどのように生産されているかなど、さまざまな「ものの過程」を紹介しています。

また、「狩猟に興味はあるけれど、どこから始めたら良いのか分からない」 「食肉センターを見学してみたい」という方のために、狩猟免許取得方法、見学可能な食肉センター、解体免許取得方法、見学可能な食肉センター、解体ワークショップや狩猟体験ツアーを実施している団体の紹介など、次の一歩を踏み出すための実用的な情報も、第五章「解体・狩猟を始める入門ガイド」として掲載しています。

命は、その現場に立ち会わなければ感じ取れないことがたくさんあります。

その場にいなかった方に、自分が感じたことを文章で伝える行為は、私にはとても難しいことでした。 このテーマが、これまであまり明るみに出ていなかった類のものだったことも深く関係しています。

私なりにテーマと向き合い、なんとか紡ぎ出した言葉が一冊の本となりました。 つたない部分が多いのですが、何かを感じとっていただければ幸いです。

本書との出会いが、新しい体験の始まりになりますように。

畠山千春


■おわりに

解体や狩猟を通じて学んだことは、数えきれないほどあります。 一方で、それと同じくらい悩むことも増えました。 動物たちの命のこと、それに支えられて私たちが生きていくこと……。 でも、こうしてずっと考え続けることが、命と向き合うことなのだと感じるようになりました。

本書の発行が決まってから、執筆しながら何が正しいことなのか分からなくなったり、誰かを傷つけていないかと考え込んでしまったりすることが多々ありました。 それでもなんとかこの本を完成させることができたのは、ここまで支えてくださった方々のおかげです。

特に、狩猟について多くのことを教えてくださった津留健児さん、江口政継さん、ありがとうございました。

答えのないテーマだからこそ、私やこの本に関わること自体に覚悟だったと思います。 そんななか、一緒になって命の現場に立ち会い、考え、共に学んでくださった関係者の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。 深い愛情で私を応援してくれた一番の理解者、編集の小久保よしのさん。 自分のことのように親身になってアドバイスをくださったデザイナーの中村未里さん、全身全霊でこのテーマと向き合ってくれた写真家の亀山ののこさん。 そして鮮やかなイラストで表紙を飾ってくださったMurgraphこと下平晃道さん、動物の口絵や解体などのイラストを美しく描いてくださった岸本敬子さん、ていねいな構成をしてくださった由木高士さん。

優しく見守ってくださった『ソトコト』編集長の指出一正さんをはじめ、木楽舎の野口修嗣さん、早野隼さんにも何度も背中を押していただきました。 素晴らしいメンバーと一緒にこの本が作れたことを、心からうれしく思います。 みなさま、ありがとうございました。

また、初めての解体からずっと一緒に命のことを考えてくれた浩一さん、付き進む私を温かく支えてくれたシェアメイトのあいちゃん、まいちゃん、あかねちゃん、まっちゃん、さだくん、ありがとう。 みんななしでは、この本は書けませんでした。

そして、私に生きること、食べることをこれまで以上に考えさせてくれたスヤとモグ、山のイノシシたちも、本当にありがとう。

私はまだ、スタート地点に立ったばかり。 これからも実践を重ね、考え続けたいと思っています。

本書を通じて、暮らしを自分たちでつくっていく仲間が増えれば、何よりうれしいです。

2014年3月

畠山千春