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△●歩く速度で暮らす―あしたのための生活ガイド (シリーズしごとの発見 2)●2015年05月26日 10:07

土と水に親しんで生きる知恵、生きる力を取り戻す




槌田 劭 (著)
単行本: 191ページ
出版社: 太郎次郎社 (1985/07)

■内容紹介
「新幹線には原則として乗らない」著者が、徹底的に語りおろした、どう食べ、どう買い、どう育て、どう変える、暮らしのヒント集。ある日、玄関にドサッと置かれた小松菜が、「考える素材」だったとは?バランスというキイワードをもとに、衣食住から親子の断絶、有機農業、人類史の哲学までを縦横無尽にえがきだす。

著者
槌田劭(つちだ たかし) 一九三五年、教徒に生まれる。
京都大学理学部化学科卒業。一九七六年、京都大学工学部助教授―金属物理学―辞職。
一九七九年~現在、京都精華大学教員。
一九七三年、「使い捨て時代を考える会」設立。
(本の奥付けより)

■目次
第1章 どう食べる 7
1 食卓の上に、よろこびを盛る 8
・野菜ジュースと五点セットの食卓 8
・ストレスがたまれば食べかたもくずれる 9
・空腹のときこそエネルギーがみなぎる 11
・子どもも「ぼく、朝ごはんいらない」 12
・わが家のニンジン、タマゴ。素材のぜいたく 13
・食卓が変わると味覚も回復する 16
・季節のよろこびを食べる 19
・人間のおなかはゴミ箱じゃない。自然に返す 20
・玄関に積まれた小松菜が「考える素材」 23
・ジャガイモ料理の授業料は八千円 24
・混乱があったことを忘れない解決法とは 25
・「料理」と「奴隷的労働」のちがい 27
・最高の調味料は、空腹・楽しさ・思いやり 28
2 なぜ、どうやって肉から豆へ? 31
・肉と豆の「近代栄養学的考察」 31
・なぜぼくが肉を食わないのかの、ふたつの理由 32
・子どもに肉をやめさせるための「無意識メニュー」 35
・ブレーキになる亭主は、まずいばらせる 37
・なぜぼくらの会でトリ肉は食べるのか 38
・有機農業を安定させるニワトリ・タマゴ戦略 40
・未来の使役牛のために、牛肉も食べる 42
3 食費がどんどん減っていく 44
・六年間、わが家の食費は変わらなかった 44
・狂乱物価も、子どもの成長期も、関係なし 45
・無農薬の野菜は、金持ちじゃないと食えないか 46
・ほんとうのぜいたくは、お金がかからない 47
・デパートで自然食を買う、ということについて 49
・オヤジが教えてくれた生きのびる知恵 51
・ヘビのつかまえかた、食べかた 52
4 カゼひき人間が薄着になるまで 54
・朝の寝床でやるネコ体操 54
・ある日、かぜをひかない決心をした 55
・たくさん着こめば肩もこる 57
・ネクタイの先は権力の手に握られている 58

第2章 どう買う 61
1 わかっていても「買いたい」病 62
・スーパーに群がる人びとの一方向の流れ 62
・お金にふりまわされて 64
・欲求不満がショーウィンドウに出会うとき 65
・買いたいときは、買うしかない 68
・「ムダな買い物をやめる」まえにすべきこと 70
・みみっちく買うより、五千円高いものを 72
・一円二円に三〇分ついやすオロカさ 74
2 値切る世界と無心する世界 77
・どうしてモノには値段がついているのか 77
・ダイコンの高い安いなんて、計算できない 78
・値ぶみがないから、よろこべる関係 80
・「破れタマゴもらいます。ありがとう」 81
・お金に支配されぬ自立を 83
・金のピリオドが、人間を分断する 84
・どんぶりかんじょうのできる関係が誕生した 86
3 お金に負けない農的な暮らし 88
・都会にいたって、農的暮らしはできるのだ 88
・それぞれの生きかたで、ともに生きる 90
・貪欲な農業がムリを生む 91
・不必要なものを生んできた人類史 93
・奪う思想がつくった社会を、進歩と呼べるか 95
・エデンの園には帰れない、ということから出発 96
4 新しい人間関係を創造する 98
・つきあいかたが変われば、つくりかたも変わる 98
・農薬のかかっているものでも、感謝していただく 99
・損得計算からのスタートでも…… 100

第3章 どう育てる 105
1 子どもが教えた父親のつとめ 106
・親子関係も「投資」になってきた 106
・親はあとから親になる。父は社会がつくる 107
・ぼくがダメな父親であったことを自覚したとき 109
・子どもの問題は親自身の問題だ 111
・かんたんに、イエス、ノーは言わない 113
・ラジコンは茶碗洗い一回五〇円から 114
2 オヤジと息子の修行旅行 116
・父と子の修学旅行のテーマ 116
・なぜ高校に行きたいのかを三年間でみつけろ 117
・解答の期限がやってきて…… 119
・最初から正解をおしつけるな。しくじりがだいじ 121
・もう大丈夫だから、危険に近づきたがる 122
・親の抑圧は、自信がないから生じる 124
・ある基準さえ守れれば、流されない 125
3 めざしを子どもに食べさせるゲーム 128
・めざしは、大きな皿に盛っておく 128
・「それ、とうさんがもろていい?おいしいわ」 130
・反発させないだけで、最初はじゅうぶんだ 131
・親は、子どもの玄米弁当にも工夫を 132
・自分の大好きなおとなが身をもって教えること 134
・よろこんで食べる条件をどうつくるか 136
・とびとびに、めんどうがらずに 138
4 大きく育てる思想のまちがい 140
・「あんなもん食わせて、子どもは育つのか」 140
・目上の人に対して従順になるクスリ? 141
・バランスのいい食事で、育たぬはずがない 143
・親よりも一割大きかったら、病弱と考える 144
・世の中が変わってしまっているという認識を! 146
・うしろ姿で子どもに教えた父親 149

第4章 どう変える 151
1 自分が変われば、みんなも変わる 152
・自分だけ変わったてしかたがない? 152
・エスカレーターの前の小さな選択 154
・ぼくにでも、ほかのことならできるかもしれん 157
・自分にできることを楽しみ、他人におしつけない 158
・タバコを吸ってても反公害を語る資格はある 160
・肉をやめれば、自給率も上がる 161
2 お互いがお互いのなかに入りあう 164
・相互批判よりも茶飲み話の論理 164
・「まず信頼できないところから始めよう」 167
・人間が裏切ることはない 168
3 テレビのある社会で自分をつらぬく法 170
・仙人になってもしかたがない 170
・ソフト・エナジーと科学技術信仰のワナ 171
・冷蔵庫のいらなくなる暮らしは、空想じゃない 173
・自分を変えるしんどさと楽しさ 175
4 ふたとおりの未来に向かって 177
・未来予測はしない。どうつくるかだ 177
・原子力を語らねばならない文明の犯罪 178
・まず、みんなが額に汗して働くこと 181
・三反の土地で、一家族食べられる 183
・あずかった土地の、未来へのつながり 185

あとがき 188

■「あとがき」
  田植えの終わった水田には、カエルの合唱がにぎやかに流れています。 よろこびの声であり、生命の叫びなのでしょう。 深まりゆく緑とともに、日本の自然のすばらしさにため息がでるほどです。 この自然の恵みのあるかぎり、私たちはしあわせな未来が約束されているような、豊かな思いが広がります。
  しかし、現実の社会と暮らしをかえりみるとき、不安な思いに心は曇ります。 先日の連休にも、町の繁華街には若者たちがごったがえし、飲食店街には華美なショーケースが並び、 皿には食べ残しがめだちました。 山や田園風景を楽しむ若者はわずかで、まして土に親しむ者の姿などほとんどありません。 それどころか、疾駆するマイカーの窓からあきカンをほうり投げて、沿道の畑の老いた農夫を悲しませるしまつです。
  金とものの「豊かさ」に、酔いしれている現代です。 しかし、いつまでも続くのでしょうか。 商工業の繁栄が幻であり、没落が避けられないことは、この本でもくり返して述べました。 すでに現代の若者たちの心も体も、ともに病んでいるのです。 いや、若者だけでなく、国民総半病人時代、ガン死の時代に突入しているのです。 そしていまや、農業をひきつごうとする若者さえ少なくなって、日本の緑が約束してくれるはずの食料生産力は、 惨憺たるものとなりました。
  しかし、なさけながっていても、しかたがありません。 私たちは、生きねばなりません。 生きる以上、楽しく、よろこびに満ちて、生きたい。 深刻ぶるのはやめにして、日常の暮らしのなかから、希望をつかみとりたいものです。
  小さく思えることでも、できることを発見し、楽しくやってみましょう。 食べること、歩くこと、なんでもよいのです。 そのことで知恵がつきます。 生きる自信ともなります。 土に親しみ、水に親しみ、そのなかから生きる知恵をとりもどせば、すばらしい自然は、生きる力を与えてくれます。 楽しく、ゆったりと、隣人とはげましあい、助けあうことのなかに、しあわせをみつけたいと思うのです。
  そのような願いをもって話しあった記録が、本書です。 わたしは、将来の夢である晴耕雨読・直耕を実現すべく、荒地に鍬を楽しんでいますが、 その場、滋賀県栗東町に、小野伸尚氏とこまざきひろし氏を迎えて、ゆかいな時をすごしました。 その楽しさが読者に伝わり、生きる自信として根づくことに役立ちえたとすれば、 それはすべて、両氏のご尽力の結果と感謝いたします。 もし、まとまりが悪ければ、散漫な話を展開した私の責めでありますが、やさしく、 賢明なみなさんによって、不足する行間をうめていただけるものと願っております。

1985年5月 槌田劭

■一言:
Youtubeに動画がありました。20120328 槌田劭(つちだたかし)さんのお話(前)
「使い捨て時代を考える会」は設立40年を迎え、活動を継続

定住生活が環境破壊を招き、人びとの精神を病ませているという視点を持つと、
本書とはまた違った結論が出てきそうです。