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○●日本人の性と習俗―民俗学上の考察(桃源選書)●2015年05月31日 09:46

西洋を頂点とする進化論の立場に立つユダヤ系民俗学者クラウスの著。


F・S・クラウス (著)
安田一郎(訳)
発行所: 株式会社 桃源社
昭和40年10月30日発行
256ページ

内容
   ドイツの偉大なる民俗学者であるクラウスは、つとに、日本民族の習俗、習慣、特に性生活のフォークロアに興味をいだき、日本の隠れた研究者の協力を得てきわめて詳細、かつ正確に、日本人の性生活を明らかにした。本書はその忠実なる翻訳書である。
  クラウスは、われわれ日本人が、如何に性に対して崇高であったかを、信仰、物神崇拝、結婚、絵画等々の面から分析、解明し、理論づけている。
  日本人の性意識を、正しく記録してくれた書物とし て、本著は古典的位置を占めるものである。(カバーから)

著者 Friedrich. S. Krauss
1859年、オーストリア(現、ユーゴスラビア)のボセガに生まれる。
ウィーン大学で民族学を修め、東欧農民の民間伝承を研究し、世界的になる。
1904年、フロイトらとともに雑誌「アントロポフィティア」を創刊。
1917年、ウィーン大学員外教授。
著書多し。
主なる著書:南スラブ族の慣習、風習、信仰からみた生殖、南スラブ族の民間伝承、民族の美と鏡としての女性、プラントーム、ウクライナ農民の性生活等。
1940年、没。(カバーから)

安田一郎
1926年12月 京都に生まれる。
1949年3月 前橋医専卒。
1953年3月 東大文学部心理学科卒。現在横浜市友愛病院神経科医長。
訳著書「フロイト、性と愛情の心理」(1955年、角川文庫)「クラウス日本人の性生活」(1959年、河出書房)「精神分析入門」(1959年、光文社) 「sex探求」(1965年、講談社)(カバーから)

■目次
序文
第一章 序論 3
・わいせつとエロチック 3
・教育者としての日本 6
・日本民族の起原と先史 7
・日本人のわいせつ性 15
・わいせつな見世物 17
・裸体と入浴の慣習 18
・あんまと女あんまの生活 24
・日本最初の裸体画 26
・民族学的展望 28
第二章 植物崇拝と性器崇拝 31
・宗教の発端 31
・エロチックな日本の天地創造の神話 32
・神道 39
・植物崇拝 44
・木の霊としての神 52
・性器崇拝 59
・神殿 63
・露出 65
第三章 性器崇拝 69
・バックレイの性器崇拝の研究 69
・シェーデルの性器崇拝の研究 95
・石棒 104
・エチオピアの対応物 109
・芸術史と民族学 110
第四章 結婚 116
・性行為と宗教 116
・独身と結婚 118
・結婚と木の霊 121
・結婚の慣習 122
・エロチックな歌 128
・夫婦のおきて 130
・琉球の結婚式 133
・嫁盗みと夜ばい 135
・輿入 137
・結婚におけるハマグリの意義 139
・しきいの意義 142
・排泄物によるまじない 143
・結婚式 145
・結婚式についての貞丈の報告 148
・ヒノエウマ 151
・吉日と凶日 154
・死者の結婚 156
・処女性の尊重 158
・期間婚と多妻 161
・近親結婚 163
・離婚と姦通 164
・貞操帯 167
第五章 妊娠と分娩 171
・妊娠 171
・お産の神 172
・分娩 174
・後産と臍帯 177
・まじないの信仰 180
・不妊 183
第六章 子供 185
・赤ん坊の性の決定 185
・人工流産 186
・子供の神さま 188
・幼児期 189
・命名と成人式 190
・養子縁組と相続権 196
第七章 美術工芸 198
・愛の教科書 198
・月の命名 204
・彫刻 205
・カリカチュアとしての春画 206
・巨大な男性性器 209
・科学と芸術 211
・日本美術の特徴 213
・日本の絵画の歴史 220
・男色の絵画 223
・芸術と頽廃 224
・民俗学的な対応物 227
・浮世絵師 232
・芸術専門家の見解 238
・女護の島 244
・医者の刀 247
・ヨーロッパの芸術との相違 248
第八章 結論 249
訳者のあとがき

図版目次
一 下田の公衆浴場風景 19
二 張形の飛出るびっくり箱 29
三 キクの葉に描かれた春画 37
四 金精峠の祭壇 71
五 山田の祭壇 73
六 ロビン・グッドフェロー 77
七 リンガとヨニ(1) 90
八 リンガとヨニ(2) 90
九 生命の門「アシェラ」 92
一〇 クルックス・アンサタ 95
一一 鎌倉の女石 97
一二 横須賀の男根の社 99
一三 奉納額 100
一四 陰陽神石図 101
一五 本宮の男石と女石 102
一六 尊崇の対象たる男根 103
一七 男性性器の象徴 103
一八 仏壇 105
一九 花瓶 105
二〇 男根の玩具 105
二一 石棒 107
二二 カファ王の王冠 109
二三 カラチオをつけた人 111
二四 江戸時代の初潮の習慣 119
二五 新婚旅行 147
二六 密通者に対する罰 165
二七 お産の女神 173
二八 お産に準備する品 178
二九 お産のさいの姿勢 179
三〇 お産のときに使う坐椅子 180
三一 胞衣桶 181
三二 『オージー』 202
三三 屏風 203
三四 てんぐ 206
三五「ことばなき絵」 233
三六 愛する二人 233
三七 無粋な訪問客 234
三八 おいらん道中 235
三九 吉原の女 236
四〇 夜ばい 236
四一 鳥 237
四二~四六 女護の島1~5 238~242
四七 妖怪物語 243
四八 スピントリア 245
四九 医者の刀 247
五〇 ウィーンのカール教会 250

■一言:
『豚と精霊』や『逝きし世の面影』と合わせて読めば、性に対する羞恥 心よりも、生殖に参加できる喜びのほうが本来的であり、西洋的な極度 に人工化した価値観にこそ問題があるのだということが見えてきそう。
日本の習俗をスラブの農民などと比較している点も本書の特徴。
ただし、著者と訳者の経歴を見る限り、単純に受け入れることは非常に危険。
『日本人の性生活』(2000年、青土社)あり。