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△●谷間の生霊たち●2015年07月13日 08:17

重度障害児の安楽死を扱い太宰治賞を受賞


朝海 さち子 (著)
231ページ
出版社: 筑摩書房 (1975)

■商品の説明
内容
障害児施設を描き安楽死問題と取り組む話題の力作小説集。

目も見えず
口もきけず
耳もきこえず
白痴で
肢体が不自由な
健ちゃんは
死んだほうが
幸せなのか…

著者について
朝海さち子(あさみ さちこ)
1938年、北海道に生まれる。慶応義塾大学医学部付属厚生女子学院を卒業。1974年、「谷間の生霊たち」で太宰治賞受賞。創作・評論・脚本・レコード錯視など、多方面で活躍している。
主な作品
創作:「コタンの春」「胎動期」「真杉静江の生涯」
評論:「偶像、白衣の天使」(現代評論社)「女湯の旅」
脚本:「草原の若人たち」(新人脚本賞)「わたしたちは天使じゃない」(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
谷間の生霊たち 3
マリア 55
喪の季節 131

■概略
表題作「谷間の生霊たち」は山間部の重度心身障害児施設で起きた、軽度の知的障害(「知恵遅れ」と表記)を持つ補助看護士による安楽死事件を暑かった作品。
「マリア」は続編であり、事件後、都会に引っ越した主人公とマリアと名付けられたセキセイインコの心の交流と、都会に住む人々のさむざむとした暮らしぶりが描かれている。
「喪の季節」は当時の医療現場において看護婦がおかれている状況や医療施設における人間関係などを描いている。

■埴谷雄高氏評
この種の新しい安楽死の問題の提出は、実人生においてさらにさまざまな反対論議を呼ぶであろうけれども、問題提出者としての文学はその文学的リアリティ自体において完結していればそれでよしと私はする。この作者の出発を祝福し、社会と存在の両端にわたる今後の視野の深化に私は期待している。

■水上勉氏評
提示された問題のふかさは、おいそれと解決のつくものではなくて、人間が生きる限り背負う材料である。朝海さんは渾身の力をふるって、この問いをまとめあげようとした。

■一言:
本書の筆名は「朝海さち子」ですが、現在は「十津川光子」として活動されているようです。