独自の視点で本を選んで紹介しています。

aroha.asablo.jp/内をGoogle.comで検索します


「Amazon.co.jpアソシエイト」

○■はだかの起原―不適者は生きのびる■2015年05月09日 15:11

人間が裸になったことと言語能力を得たことは、不都合であったかもしれないという視点をくれる本


内容(「MARC」データベースより)
寒暖、風雪、晴雨にかかわらず、常に体を守る完璧な衣類となる毛皮。なぜこんなに大切なものを、人間は失ったのだろうか? 人類の裸の起源を学術的視点から考察。『ソトコト』連載をもとに新しいデータを取り入れまとめる。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
島/泰三
1946年、山口県下関市生まれ。下関西高、東京大学理学部人類学教室卒業。房総自然博物館館長、雑誌『にほんざる』編集長、日本野生生物研究センター主任研究員、天然記念物ニホンザルの生息地保護管理調査団(高宕山、臥牛山)主任調査員、国際協力事業団マダガスカル国派遣専門家などを経て、現在、日本アイアイ・ファンド代表。理学博士。アイアイの保護活動への貢献によりマダガスカル国第5等勲位「シュバリエ」を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次
はじめに ナリンダ湾、一九九九年夏 001

第一章 人の裸の皮膚は自然淘汰で生じたはずはない 015
□最適者とは何か?
□絶滅した動物は不適者か?
□リマ=デ=ファイアの『選択なしの進化』とウォレス
□ダーウィンは「自然淘汰」説を放棄した
□水中動物について
□熱帯の動物について
□人間の毛の位置について
□髪の問題は通りすぎる

第二章 ダーウィンは変だ 037
□ダーウィンはなぜ例外を説明しないのか?
□時代的背景
□増加の幾何比の幻想
□「増加の幾何比」は食物で崩壊する
□ダーウィンは数の増加を抑える要因を知っていて

第三章 ダーウィンは裸の起原を改名できない 055
□性淘汰とは何か?
□人間の裸の皮膚は性淘汰で説明されるか?
□人間の裸はなぜ起こったのか?―ダーウィンの説明!
□ダーウィン病からの脱却

第四章 裸の獣 075
□裸のけものたち
□裸の哺乳類の共通点
□大型哺乳類の物理学
□熱時定数
□大型哺乳類の例外と例外的哺乳類
□裸の子供たちはどうなる?
□ゾウの赤ちゃんの防衛態勢

第五章 特別な裸の獣たち 099 □コビトカバ―謎のトンネル―
□バビルーサ―古い謎と新しい謎―
□ハダカオヒキコウモリ―空飛ぶ謎―
□ハダカデバネズミ―謎の中の謎―

第六章 裸体化仮説 117
□胎児化仮説
□胎児の裸は成人の裸と関係ない
□自己家畜化仮説
□デズモンド・モリス―裸のサルの苦闘―
□耐久走仮説

第七章 人類海中起源説 133 □ライアル・ワトソンによる海中起源説の説明
□海中で直立二足歩行が始まるか?
□海中起源説への反論
□海中起原の痕跡?
□人間の発汗システムは海中で始まったか?
□汗腺の問題
□皮下脂肪と食物供給の問題
□海の惨劇

第八章 突然変異による裸の出現と不適者の生存 167
□ヌードマウス
□「不適者の生存」を実現する「重複する偶然」
□人類のただ一種だけに起こった偶然
□不適者の生存

第九章 火と家お着物と 183
□ヒト属と現代人の起原
□着物の起原
□家と火の起原
□北京原人は火を使ったか?
□灰の層は火を使った跡か?
□家の起原
□一八〇万年前の最古の家?

第十章 ネアンデルタールの家 211
□ネアンデルタールの家といわれる遺跡
□焚き火の跡とネアンデルタールの分布
□ネアンデルタールが絶滅したわけ

第十一章 裸の人類はどこで、いつ出現したのか? 227
□現代人と文化の起原―マクブリーティとブルックスの仮説から―
□遺伝学からみた現代人の起原

第十二章 重複する不適形質を逆転する鍵は? 239
□声を出す機構
□重複する不適形質
□ネアンデルタールは言葉を持たなかった
□アフリカの高原から氷河期とともに
□オーリニャック文化
□しかし、巨大前頭葉は……

おわりに アンタナナリブ、二〇〇三夏 261
あとがき 268
引用文献
資料

■「はじめに ナリンダ湾、一九九九年夏」の終わりの部分から(台風の日にニホンザルの群れを追跡して)
  よく見ようと思って木に登ると、船の上のように木が揺れる。 これほどの風と雨だから、いくらかはサルの活動も鈍っていいものだがと、隣の木を見ると、二、三歳のコザルたちが跳ね回って遊んでいる。
  愕然とした。これだけの風雨も、彼らには何の影響も及ぼしていなかった。 こちらは夕方になって冷え込んできて、濡れた体はもうこれ以上無理と言っている。 しかし、このサルの子供たちは、雨具もなく服もなく、ただ濡れるだけ濡れているはずなのに、普段と同じか、あるいはそれ以上に風に揺れる枝の動きを楽しんでいる。 たしかに毛皮も濡れてあいる。だが、ブルッとひとつ身震いすると、水滴は飛んでしまって、また快適な毛皮である。
  夕暮れの山道を、私は黙りこくって歩いた。この経験は壮烈だった。 毛皮はそれほどに完全で、強力なのだ。 私は雨の中でサルの群れを追いかけるたびに、あらゆる雨具の不完全さに憤っていた。 だが、そこに完璧な雨具があった。 寒暖、風雪、晴雨にかかわらず、常に体を守る衣類がそこにあった。 それがサルたちの毛皮だった。なぜ、こんなに大切なものを、人間は失ったのだろうか?
  この台風の日以来、この疑問は私の心の中にしっかり錨を下ろした。
■一言:
人類の本来の姿を知るために参考になりそう。

■書評:
るびりん書林 別館

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://aroha.asablo.jp/blog/2015/05/09/7630311/tb